【02.幻肢と幻肢痛】
vol.022櫻井さんの未公開分インタビュー、今回からは幻肢と幻肢痛についてお届けします。
失ったはずの四肢が存在するように感じ、しかもそれが痛むという現象を当事者以外がイメージするのは、そう簡単ではありません。理解が難しいが故にその対応や治療もなかなか進まないのですが、その痛みに苦しんでいる人がいるのは事実です。
g:切断した当初から幻肢や幻肢痛を感じていた、とのお話でしたが、義足を履いて歩けるようになって、痛みは緩和していったんですか?
櫻井:そうですね、歩けるようになると、痛みは治まっていきましたね。
g:痛みが治まっていっても、幻肢は感じていたんですか?
櫻井:そうですね、それは常に。
g:それはどういう感じなんですか?義足で歩いていると、幻肢の足も一緒に動いてるんですか?
櫻井:一緒に動いている感じはあります。意識していないけど一緒に動いてる、義足の中に入っているような感覚ですね。
g:義足の動きとシンクロしているような感覚なんでしょうか。
櫻井:能動的に幻肢を動かしてるというよりは、義足で歩いてるから一緒に連れていかれている、みたいな感じです。それがこちらでリハをするようになって、逆になったんです。 幻肢で義足を動かしている感覚。
g:切断した当初から、義足を履いている時は義足と幻肢が一緒に動いている感覚があったけど、義足を外してしまうと動かせなかった。それが今は逆になって、義足を外しても幻肢を動かせるし、 幻肢に義足がついてきている感覚、ということですか?
櫻井:そうですそうです。
g:義足を外している時は、幻肢はどうなっていたんですか?ただ動かない足がそこにある感覚なんですか?
櫻井:いえ、私の場合、例えば座っていればその姿勢に合わせて幻肢も曲がっている感じです。
g:能動的に動かしている感覚はなくても、その時の自分の姿勢にあった状態にはなっているんですね?
櫻井:不思議ですよね。今も義足を外せば、そういう風に感じると思いますけど。
g:椅子に座っていれば座っているような感じで、幻肢も下に向いている?
櫻井:動かないで固まっている感じではないんです。
g:そういう風に幻肢が動いている感覚はあっても、自由にはならなかったわけですよね、以前は。
櫻井:そうですね、はい。
g:痛みについては義足を履いて歩くようになってから軽減した、というお話ですが、それでもやはり日常生活に支障が出るような痛みはあったんですか?
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櫻井:そうですね。歩く練習を本格的に始めてからですね。歩けるようになって飛躍的に緩和したのかな。
g:義足を履いて歩く練習ですよね。ただ、今見せてもらったような幻肢を意識したリハビリや、幻肢痛に対する処置などはその頃は全くなかったわけですよね?
櫻井:全くなかったですね。「原因もわからないし、どうしようもないです」って言われて。処置のしようがない、という話だったんです。その頃からミラーセラピーというものがあるのは知っていたので「そういうのはどうなんですか?」と聞いても「あれは効かないんだよね」と言われてしまって、試してももらえませんでしたね。効果がないからここではやっていないよ、みたいなことを言われてしまって。義足の患者さんがものすごく多い病院だったんですけど、 そういう病院ですらやっていなかったので、たぶん当時どこの病院でもやっていなかったんだと思います。教科書には書いてあるけど実際にやったことはない、ていう病院がほとんどだったんじゃないかなと思うんですよね。
g:だとすると、義足を履いて歩けるようになって仕事復帰されても、仕事中に痛むこともあったわけですよね?
櫻井:そうですね。ずっと痛いなとは感じていました。頻繁に痛みが来て休むとか、そういう感じではなかったですけど。ただその時はわかっていませんでしたけど、今思えば集中力がなくて、会社員としてはどうだったかなとは思いますね。
g:痛みがあっても処置のしようもなく、理解を得るのも難しい状況が長く続いていたわけですよね。
櫻井:今までそういう相談をできる人もいなかったので。義足の人でここまで幻肢痛が酷い人って、あんまりいないんですよね。幻肢痛がある方はいますけど、日常生活を送れないくらいの幻肢痛で困っている方は少ないんですよ。なので私はまずこの痛みを共有できる人がいなかったので、ここで相談できる安心感というのは大きいですね。猪俣さんとお話して「この激しい痛みを話せる人がやっと見つかった」ていう安心感はすごくあります。しかも猪俣さんはそれを克服されているんですから。ずっと原因もわからず、対策もわからず、このまま一生この痛みと付き合うのか、と思っていたので。
今回はここまで。
次回も引き続き幻肢痛についてのお話をインタビューを開していきます。
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