【epi-02】vol.020を通して考える、「障害者採用って特別ですか?」

  編集後記の2回目です。
 いよいよ中川さんとはじめてお会いするんですが、そこで感じたこと、採用や働き方をメインに取材しようと考えた理由について書いてみます。


【確認と確信と】

 まず確かめたかったのは、中川さんの構音障害がどのくらいのものか、という点。これが気になっていた理由は単に作業効率の問題で、インタビューにかかる時間とか録音素材の音声変換がどの程度いつも通りに出来るか、それによっては通常より作業時間を多めにとる必要があるので。真っ先に確認する必要があったのはそれだったのですが、まぁこれは心配には及びませんでした。
 確かに話の途中で不随意運動が強めに出ると、発話がつっかえるような場面はありました。が、聞き取れないほど不明瞭という事は全くなく、録音素材の音声変換も通常通りに行えました。ただこのあたりは紙面で伝えきれない部分なので、できれば動画でご紹介したかったのですが、それについては中川さんの同意が得られずちょっと残念でしたけどね。

 中川さんを取材すると決め、まずは会ってみない事にはと早速面談の機会を設けていただき、お会いした第一印象は「緊張してんな~…」でした。
 そりゃそうですよね。中川さんにしてみたら会社の指示で取材を受ける事になったわけで、「gente」についてほぼ何も知らないでしょうし、いったい何を聞かれるの?何を答えたらいいの?という状態でしょうから。なのでまずは「gente」について知ってもらい、安心してもらう所から始めました。
 で、「gente」がどんな媒体で、何を目的に発行しているのか、どんなことを聞きたいのかを説明しつつ中川さんに話を伺っていくと、まぁ緊張感は薄れていったかなとは思いつつ、「やっぱりこの号は、職場での働き方や採用にフォーカスするのがいいな」と感じていました。


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 実を言うと、中川さんに会った瞬間感じたのは依田代表同様「思っていたよりも症状が強いんだな」でした。特に不随意運動については事前に聞かされておらず、それがあると知ってちょっと驚いたんです。にも関わらず会社からは高い評価を受けているのはわかっていたので、一体どういう働き方なんだろうかと、興味が膨らんだ瞬間でもあったんですよね。そんなことを思いながら話を伺っていくと、学校生活の中では周りの理解もあり、それほど不自由を感じずに過ごしてこられた様子がわかってきました。それはとてもいいなと思いながら聞いていたんですが、同時にそれは中川さんの主観によるところでもあるな、とも感じていたんです。
 中川さんの麻痺や不随意運動といった症状は生まれ持ったものなので、ご自身はもちろんその状態しか知らないわけです。ですが実際には、中川さんが感じているより多くの「できないこと」が存在するのは否めない。本紙の中に取り上げるには情報量が少なく記事には出来なかったのですが、話の中には自立した生活や一人で暮らしたいと思っても、やはりそれは難しいという話にもなりました(中川さんはご両親と暮らしています)。
 ただ、そこで「できない探し」をしていったって、「gente」としては意味がないんですよね。

 一人暮らしをしたくても「片手でゴミ袋を結べない」とか何に不便を感じているとか、そういうことを聞いていけばキリがないけど、それを並べたって仕方ないんです、「gente」としては。残念ながらそれは「社会の側にある」という類のものではないのがほとんどなので。例えば生活介助のヘルパーさんをもっと本人負担が少なく利用できるようにとか、ヘルパーさんを利用できる適用範囲がまだまだ限られているとか、そういうのは社会にある障害と言えなくはないですが。

 そこよりはやはり障害者の就労環境の方に、より多くの「社会にある障害」を感じるし、中川さんもかつては就活でその障害に直面し、のち今の環境でそれを感じなくなった。そう言えるのではと思ったんです。で、当初の想定通り職場での働き方や人との関わりについてフォーカスし、取材を進めようと決めたのでした。


今回はここまで。
次回は7月中旬の更新予定です。

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