日本語が話せなかった中国人スタッフが、売上予算の3倍を達成するエリアマネージャーになるまで
「玄品」では、中国・ベトナム・インドネシアなど、出身地も母国語も異なるメンバー同士が協力し合い、一つのお店を作り上げています。なかには、アルバイトを経て入社し、現在は店長兼エリアマネージャーを務めている社員もいます。池袋店で働く中国籍の社員、劉(リュウ)さんです。
来日当初、日本語をほとんど話せなかった劉さんは、アルバイトを通じて語学力を磨き、後に正社員として入社しました。現在は池袋店の管理・運営を担当するかたわら、中華圏顧客の対応フォローなどで頼りにされています。
「『玄品』では国籍はまったく関係なく、努力したらした分だけ、きちんと評価してもらえる。『日本で成功したい』『キャリアを積み上げたい』という外国籍の人にとっては、目標を実現しやすい職場だと思う」と劉さんは力説します。
そこで今回は、日本語が話せなかった彼がどのような経験を経て、これまでのキャリアを歩んできたのか。その軌跡を辿ります。
「玄品」池袋店 店長兼関東エリアマネージャー 劉 岩松(リュウ ガンショウ)さん
入社6年目。高校卒業後、語学留学のために中国から来日。日本語がまったく話せない状態から、10年にわたり「玄品」でアルバイトを経験。一度は他社に就職したものの、35歳で「玄品」に入社。現在は池袋店の店長を務めながら、関東エリアマネージャーとしてインバウンド客の対応なども担当している。
日本語スキルゼロから始まった、「玄品」での10年
「もう一つ上のステージで、自分の人生を歩んでいきたい」。そんな想いを胸に、高校卒業後に日本の語学学校へと留学した劉さん。遠い親戚が「玄品」でアルバイトをしていたことがきっかけで、来日と同時に同じ店舗で働き始めました。しかし、当時日本語の学習歴はわずか4ヶ月しかなく、リスニングも会話もままならない状態だったと言います。
「仕事はお客様と接しない、パントリー業務から始めました。指示を受けるときは、親戚に通訳してもらったり、身振り手振りでコミュニケーションを取ったり。同僚のみなさんは親切で、何度も丁寧に教えてくれましたし、合間を見て日本語もたくさん教えてもらいました」
練習を兼ねて職場で積極的にコミュニケーションを取っていたところ、3〜4年も経つ頃には、ホール業務や調理場を任されるまでに成長していました。「僕の日本語は全部、『玄品』で勉強したものです」と彼はニコッと笑顔を覗かせます。
学生時代、劉さんは計10店舗の飲食店のアルバイトを掛け持ちしていましたが、ずっと働き続けていたのは「玄品」だけでした。
「お店の雰囲気がすごく良くて、まるで日本の実家のように感じていました。学校よりも、家よりも、お店で過ごす時間が一番長かったですね。加えて、ふぐ料理は特別な食事ということもあり、しっかり学びたいという気持ちも強かったです」
10年間のアルバイトを経て就職を決意しましたが、当時「玄品」では外国籍の社員採用を行っていませんでした。そこで、一旦別の会社へ入社したものの、かつてのアットホームな職場が忘れられず、4年後に再び門を叩くことになります。「もう一度アルバイトとして雇ってもらえませんか」とお世話になった社員に連絡したところ、「外国人の採用を始めたから、まずは契約社員として働かないか?」と打診を受け、晴れて入社が決まりました。
在日中国人の心を掴み、売上アップを達成
劉さんはこれまでのキャリアが認められ、入社3年目には正社員となり、店長に就任しました。しかし、現場仕事には精通していたものの、初めての管理業務に戸惑うことも多かったそうです。
「わからないことはエリアマネージャーに電話をして、『どうしたらいいのか』と相談しながら、一つずつ教えてもらいました」
特に頭を悩ませたのは、売上予算の達成施策について。このとき彼が思いついたのは、周辺に住む在日中国人のお客様を増やすことでした。池袋を中心に、豊島区には多くの中国人が住んでいます。その大半は留学生として来日し、その後日本でビジネスを成功させた人たちでした。劉さんは自分と同じ在日中国人のお客様と熱心にコミュニケーションを取り、常連客や口コミでの紹介を増やしていきました。
「お店の客層は3〜4割が在日中国人です。常連のお客様は経営者の方ばかりで、客単価は恐らく全社でもトップに入ると思います」
さらに、周辺に蟹料理を提供する飲食店がないことに気づき、昨年は初めて蟹のコース料理をメニューに追加。その結果、想定していた予算の約3倍の売上を達成しました。
「在日中国人やインバウンド客の需要を調べ、どの程度の利益が見込めるのかを想定して上司に提案したところ、実現することができました。想定外だったのは、日本人のお客様が大勢来店してくださったことです。思わぬ反響に、上司も店舗スタッフのみんなも喜んでくれました」
自分のアイディアを店舗スタッフの協力で具現化できることは、劉さんにとって大きなやりがいに繋がっているそうです。
国籍を超えて活躍できるチャンスが、ここにある
努力次第ではありますが、「玄品」では外国人スタッフのキャリアアップを制限することは、決してありません。劉さん以外にも、アルバイトから入社し、現在は執行役員マネージャーを務める中国人の女性社員もいます。
近年は、セントラルキッチンで働く外国人スタッフが増え、社員による日本語教室が開催されるようになりました。「関西弁を理解するのが難しい」など、スタッフのリアルな悩みに合わせた内容で、言語の壁を解消できるよう取り組んでいます。
最後に、劉さんに将来の目標について聞きました。
「正直、すごく高い理想があるわけではありません。ただ、はっきりしているのは、定年を過ぎてもここで働き続けて、会社をもっともっと成長させたいという気持ちがあることです。会社が大きくなれば、スタッフみんなの暮らしも良くなりますからね」
国籍も性別も年齢も問わず、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が働く「玄品」。劉さんのように、キャリアアップを目指す外国籍の方が、自分自身の可能性を無限大に広げるチャンスが、ここにはあります。
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