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弟犬ジョンとの山登り2

弟犬ジョンと僕の大冒険

いよいよ、大きな山へ入ったのか、木がおおい繁っていて、空が見えなくなり、なんだか夢の中に居る気分で、どこかの土地へ、まよい込んだみたいに、さびしく感じた。

「ハァー、ハァー、」

と、舌を出し、息をしながら、再び僕の前にあらわれたのが、弟犬のジョンであった。

 ジョンは、僕の気持ちを解っているのか、側についていてくれ、どうしたの?疲れた?山登りの時は歌いながら行くと楽しいって、五月ちゃんが言ってたよ。なんか歌うかい?

よせよ〜、僕は五月ちゃんのお兄ちゃんなんだから、一緒にするなよ。大丈夫。まだまだ疲れてないよ。ジョンこそ息があがってるよ。無理してんじゃないのぉ〜、僕はまだまだへっちゃらだよ。

とジョンとやりとりをしながら、歩いてると、次第に話す余裕がなくなり、二人共、黙って父の後に、ついて行くのであった。

「おおーー、ここよう。」

と、目的地を見つけた父は、やっと歩くのをやめて、タバコを出し火をつけると、うまそうに、バットを吸い始めた。

 僕が、父の側へ行ってみると、時代劇に出てきそうな、枝ぶりのいい、松の木があったのである。

「そうか、この松の木を探していたのか。」

 と、僕は、父の目的が解った。

 いつ、どうやって、この松の木を見つけていたのか、密かに狙っていた父が、とてもいじうしく感じて来た。

 タバコを吸い終えた父は、周囲の小さな木を切り倒し、松の木の根元を掘りやすくすると、

「お前、ここ掘れるかのう。」

「なにを言っとんぞな。こんなもん、オラは、とうちゃんより、早く掘れるぜ。」

と、父が言った言葉に、むきになった僕は、父の持っている動具を取り上げて、根元を丸く、掘り出し始めた。

 僕から一歩離れた父は、再びタバコに火をつけ、側に来たジョンの頭を撫でながら、

「やっぱ、お前は百姓よのう。」

「なんでなー。」

「ピッタリやもん。オラの後は、お前がやれや、オラのもん全部やるけんのう。」

「オラは、長男じゃないで。」

と、言いながら、僕が根元を掘り続けていると、父は、タバコの火を、足で揉み消して、カズラを適当な長さに切り、それをさいていた。
ジョンはジョンで父ちゃんに撫でられ、至極満足な様子で、耳が真っ平らになり、飛行機のような形になっていた。

 カズラを、ナワみたいにすると、次は、杉の葉、カエデの葉、竹の葉等を集めて、僕の横に来ると、

「おお、ここ迄掘ったのか、りっぱなもんにょのう。よっしゃ。」

と、言った父は、腰からノコギリを抜き出して、何本かの根元を切り、とうとう、松の木を倒してしまった。

 泥のついた部分の根元に、さっき集めて来た葉っぱをあてがい、根元の泥が落ちないように、カズラでうまく縛りつけた。

 松の木を掘った大きな穴から、山芋が見えたので、僕が夢中になって取っていたら、

「芋を傷っけんよう。長く取れよ。」

と、ニコニコしながら、父が言った。

「これだけも取れたけんなー」

と、僕が父に山芋を見せると

「やっぱ、百姓よなー」

と、言って、取れた山芋を、葉っぱにつつんでくれた。

「この、おおきな穴は、どうすんどな。」

と、改めて僕が聞くと、

「おおそうじゃ、お前、ウンコとションベンは出んか。出るんなら今ぞ。」

と、父が僕に聞くので、出ないと言ったら、さっさと、腰の泥とか葉っぱを入れ込んで、うまく穴をかくしてしまったのだ。

 いつでも帰れる用意をととのへた父は

「さあー、弁当を食べようぜ。」

と、言って、木の枝をおって、エガマで、おさえばしのような長い箸をこしらえ、

「これが箸じゃけんのう。」

と、二人分を作って、母の作ってくれた弁当で、ようやく昼めしにありついた。

 父と僕の弁当から、ジョンの分をとり、食べ始めたら、この弁当がうまい事、家では感じないが、山で食べる味は、かくべつ違うのを感じるのであった。

ジョンも母の弁当に舌鼓を打ちながら、むしゃむしゃと夢中になって食べていた。父ちゃんとジョンと僕の三人は仲良く、弁当を食べた。

お腹がいっぱいになって、空を見上げた。みわたす限り、木の景色であったが、遠く離れた所に、角のない山鹿が見え、その上の方に、山猿が居た。

 野ウサギが、ピヨンピヨンと、僕等の前をはねていたら、ジョンが野うさぎに話しかけるであった。ねぇ、うさぎさん、どこにいくの?遊ぼうよ。オイラかけっこ得意だよ〜。野うさぎもごめんよ〜、今日はウサ吉と約束してんだ。また今度ねぇって言ってるようだった。

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