初の全社表彰をオンライン配信。その目的やプロセス、盛り上げる仕掛けから配信の仕組みまでを公開します!
みなさんこんにちは。とにかく面倒くさいECをシンプルにしたくて仕方のない大谷です。いまはSUPER STUDIOで人事部門の管掌役員をしています。この記事は、ずっとやりたいと考えて狂うほど悩んできた表彰制度について、実施内容と検討プロセスを公開したいと思い、筆を執りました。未実施のスタートアップ企業の皆様にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
表彰で解決したい課題って?
「表彰する」ということ自体、された人は嬉しいに決まっているので、一見あまり目的を整理する必要性は無く、やれるならやったほうが良いよねという話に感じるかもしれません。しかし、一度やってしまったら後戻りできず、良くも悪くも爪痕を残すコンテンツになると考えていたため、安易に実行できずに従業員が100名を超えるまで実施していませんでした。
会社によって組織課題は様々ですが、弊社ではそれらを定量的に分析するため、モチベーションサーベイというサービスを導入しています。それを運用し、メンバーからマネージャまで様々な生の意見を聞いていく中で、課題、つまり「あるべき姿とのギャップ」を洗い出していくわけですが、その課題の中で表彰が解決できそうな課題が以下のものでした。
1. 高評価に繋がる「スタンス」や「プロセス」の明文化が不足し、ロールモデルを見つけることが出来ていない(VALUEの体現度合いを評価される割に、成功法則のようなものが可視化されていない)
2. 高評価が出ると給与の上昇幅が大きい評価制度となっており、(評価制度実装序盤から連続して高評価を受けてきた人にとっては)段々と高評価に対する感動が薄れていく
3. 成功に繋がるアクションがなかなか共有されないため、会社全体でのナレッジの共有化が不完全
4. 会社へのロイヤリティを高めるアプローチが存在しない
上記の課題を踏まえ、表彰においてアプローチできそうなことを書き出してみます。
・会社として理想としているスタンスやプロセスを明示する
・賞の基準を掲出してロールモデルを特定できるようにする
・感情が動くような演出をする
・質の高いナレッジを全社に展開する
・フィードバックを通じて帰属意識を高める
表彰式の概要
打ち手が明確になり、概要を以下のように策定しました。
目的 ・・・ 上記の通り
選出観点 ・・・ チームワーク、成果、越境した行動、VALUEの体現
賞の種類 ・・・ 6つ
実施日 ・・・ 全員が一同に集まる年イチの社員総会
実施形式 ・・・ オンライン配信(中継&動画)
ここで新たに出てきた課題がまたたくさんありまして、
「賞品は何が良いのか?」
「そもそもちゃんと配信できるのか?」
「初回からオンラインで盛り上がるのか?滑らないか?」
「選ばれなかった人はむしろテンション下がるのでは?」
「何でこの人なの?という意見は少なからず出てしまうのでは?」
・・・こんな感じで、数え切れないほどの不安要素が出てきます。それらを解決するため、考え抜いて実行したわけですが、ポイントをまとめてみます。
受賞者選出の流れと賞品えらび
弊社では、以下の賞を用意しました。
MVT - Most Valuable Team
MVR - Most Valuable Rookie
MVI - Most Valuable Innovator
MVM - Most Valuable Manager
VP - Valuable Player
MVP - Most Valuable Player
名前のままなので説明不要だと思いますが、合計6名が受賞し、それぞれの賞で3~7人ほどノミネートされるといった具合です。人事側で選出者を決めてしまうと現場との乖離が起きる可能性があったため、各部門の責任者にスプレッドシートを渡し、「必要に応じていくらでも現場にヒアリングをしてノミネートされるべき人を出してください」とノミネート者は任せる形にしました。
また、全社に記入フォームを配布し、一人あたり何人宛でも書けるサンクスレターの仕組みを作りました。対象となる従業員数がこの時点では140名程度でしたが、なんと合計1,100件ほどのレターが集まりました!さすがに驚きました。このレターは、すべて印刷してノベルティと一緒に全社員の自宅へ郵送し、当日箱を開けてもらうように呼びかけていました。僕も人間ですので、もらったレターは全て読んだ上で、送ってくれた人のためにもっと頑張ろうと襟を正すことにも繋がりました。
この内容も加味して、最終的に人事と取締役で受賞者を決めるという流れです。お察しの通り、ここでめちゃくちゃ揉めました。笑 当たり前ですが、僕らも人間なので、ロールモデルとして誰かを選ぶときにちょっとした価値観のズレがあるからです。
弊社の評価制度ではOKRを採用しており、最終評価まで何段階も客観的なレビューを入れることで公平性を担保しようと努力しているのですが、表彰と評価で意思決定者が異なるのもまた難儀な点でした。すこし生々しい話ですが、弊社取締役で評価に関わるのは主にCOOで、最終評価のみ人事委員会がCEOとすり合わせるという形式を取っており、実評価においては執行役員・マネージャ・人事にほとんど権限が割り当てられています。役割・目標・評価のプロセスが基本的に移譲されているのです。しかし今回の表彰は常勤取締役全員と人事が意思決定するということで、普段から評価を通した目線あわせをしてこなかったため、「自分の知っている範囲は選びやすい」や「専門分野だからこそ厳しく見る」のような、評価では絶対にやってはいけないような観点もふと出てしまいます。
さらに言うと、空気を読めば読むほどに決められなくなっていきます。セールスのような成果の分かりやすい職種を選べば "やっぱりね" となるし、逆は "わざとらしさ" を生むといった具合です。だからこそ今回は、「ロールモデルって何だっけ」というところに観点を絞り込むことにしました。
ただ逆に、現フェーズで求める人物像や育成プロセスなどを改めてすり合わせる良い機会にもなりました。思わぬ副産物です。結果として今回は、現場責任者が上げた全員をノミネート選出するという形になりました。まさに現場ならではの高い解像度でノミネート理由が書かれていたためです。ここは人数目安を予め設定してあったことと、半期評価の直後だったことも良かったポイントです。
このサンクスレターと現場責任者による選出という手段で、「選ばれなくてテンション下がる問題」と「選出者滑る問題」を少しでも緩和しようという狙いでした。完全には難しいですが、少しは寄与したかなと思っています。
一方で賞品についてはサクッと決まりました。トロフィーや社長との食事などはよくあると思いますが、僕らはスタートアップなので「実のあるモノにしよう」「本当に嬉しいモノにしよう」ということで、予算を決めて「その人が一番喜びそうなもの」にしようとなりました。もちろん予算内でw バレないようにあの手この手で調査をして、キャンプ用品や高級ワイン、スマートデバイスなど多種多様な賞品を用意しました。ただここで一応、課税対象になるかどうかみたいな点も人事は考えないといけませんね。ちなみに、「社長との食事」は良い機会だとは思いつつも、それは逆に「普段は社長と話せませんよ」と明言しているようなものなので、弊社のフェーズには合わないという感じです。そのように、会社の方向性やフェーズによっても選ぶものは変わってくると思います。
初めての表彰をオンラインで開催して、盛り上がるのか?
小は大を兼ねないということで、世界がどのような状況であってもオンラインで出来るようにしておこうと準備を進め、結果としてオンライン配信に振り切りました。しかし、掲題の懸念は当日まで払拭できませんでした。いきなりサプライズで表彰しているわけなので、どう盛り上がったら良いのか分からない状態に陥るだろうと考えていました。しかし結果としてはかなり盛り上がりました。不覚にも僕は泣いてしまいました。笑
盛り上げるための仕掛けとして用意したのが以下です。
・事前に表彰が行われることを説明しておく(弊社の場合:全社月例会議)
・社内事情に詳しい「盛り上げ役」が司会を行う(弊社の場合:創業者CROの真野)
・当日に拍手の練習をする
・感情が動くような動画をつくる
- とにかく音楽。BGM大事。
・サプライズで本人へのヒーローインタビューを行う
・インタビューやコメント中、BGMは薄く流し続けておく
書き出してみると結構普通ですね。笑 最も再現性に欠けるのが動画制作と音源選定だと思いますが、これは幸いにも僕が動画制作を経験していたことでクリアできました。制作サイドでお悩みの方はぜひTwitterで気軽に絡んでください。
なぜかは分かりませんが、サプライズにも関わらず受賞者全員が素晴らしいコメントを残していて驚きました。絶対に漏れていないはずなので、意外と事前告知なしでも大丈夫ということが分かりました。
偶然にも、全ての賞でバラバラの職種・部署の人が選ばれた点も良かったです。ノミネート者を見てみても、いわゆる直接・間接部門が半々ほどで入る結果となりました。
MVT - ecforce 獲得プロジェクトチーム
MVR - カスタマーサポート
MVI - プロダクトマネージャ
MVM - Webエンジニア
VP - 採用広報
MVP - セールス
Zoomチャットでも称賛の声が飛び交いましたが、開催後アンケートでも「◯◯さんが表彰されたのを見て自分のことのように嬉しかった」や「自分が次の表彰に選ばれるようにがんばりたい」などといった意見が多く、本当に素晴らしいメンバーに支えられているな・・・と感極まってしまいました。SUPER STUDIOのプロダクトは日本一を目指せると思っていますが、一番の自慢は働く人です。
ノミネート・受賞理由については、社内報で公開できるように社内広報・組織開発チームが鋭意制作中です。さらに、受賞者がどういう考え方で普段仕事をしているか、思考プロセスの公開をしていきたいと考えています。弊社のようにロールモデルの可視化が目的化するケースでは、こういった受け皿も考えておいたほうが良さそうです。
反省点
実際に第1回を終えてみて、もうすこしこう出来たら良いなあというのが幾つかあったので、それも恥を忍んで書いてみようと思います。
表彰は会の最後で良かった
弊社の場合、年イチの総会のコンテンツとして表彰を実施したのですが、会の真ん中に表彰コンテンツを差し込んでいました。全体構成として、1年の振り返り→年度表彰→中長期戦略→今期の戦術という流れが、最も理解しやすく一人ひとりのアクションに繋がりやすいと考えたからです。
しかし、想定以上に表彰が盛り上がったことで、視聴者も出演者もテンションの切り替えが難しかったように思います。表彰後に休憩を設けたことで視聴者としては「終わった感」が出ますし、出演者としても「めちゃくちゃやりづらい」という事態が起きました。表彰後一気に真面目な話をすることになるのですが、やや笑いを取りに行かないといけない雰囲気にさえなっていました。笑
ノミネート基準のブラッシュアップが必要
部署により、ノミネート者を選出する上で人事のかけるコストに大きなバラつきがありました。初回ということもあり一定は仕方ありませんが、ノミネート基準と選出アウトプットのすり合わせをかなりがっちりやっておかないと、(弊社の場合はテキストで提出してもらったので)文章力や情報収集力の差が結果に影響してしまうことにも繋がりかねません。まだ社員が200名を超えていないため、人事が全社員の評価に関わっているので何とか対処できましたが、今後の運用を考えるとそれも難しくなっていく気がしています。
Zoom以外の配信プラットフォームにもチャレンジしたい
いかにセキュアに実施するかは大前提ですが、Zoomでの配信に限界は感じました。後ろでBGMを流しているときは、やはりマイクの音声を優先して拾うためBGM音質が落ちがちだったり、動画のカクつきと高画質を両取りすることが出来なかったり、YouTubeの拡張やニコ動のようにコメントを映像上で確認できなかったり。もっと盛り上げる仕掛けを試行錯誤していきたいですね。
Appendix: 配信の仕組み
今回はZoomを使い、以下の構成で配信をしました。
社内にカメラやマイクはありましたが、スイッチャーやミキサーが無かったため、割と王道な製品を揃えました。
ライブ配信の経験者がいなかったため、出来る限りシンプルな構成で配信しようということで上記の形になりましたが、Zoomの画面共有で画質を保ちながら、配信する映像の品質も担保しなければならない点が一番難儀でした。
具体的に言うと、画質を上げてスライドを見やすくするには、Zoomの画面共有設定で「第2カメラのコンテンツ」というものを選択する必要があります。異様に画質が良いです。
しかし一方、その設定だと映像がカクつきます。なので、映像を流すときは画面共有を解除し、スライドを投影するときは「第2カメラのコンテンツ」で画面共有を行う。つまりミキサーとスイッチャー、さらには配信端末でZoomの設定も変更しなければならない点が大変でした。
ちなみに弊社は、前述の通りライブ配信技術に明るくありません。ライブ配信も出来る方、ぜひカジュアル面談でお声がけください。笑
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