経営に活かしたい先人の知恵…その19
◆管理過剰は組織を衰退させる◆
組織は、どういう状態に陥ったときに衰退に向かうのか。孔子の編纂と伝えられる「春秋左氏伝」に、「国の亡びんとするは、必ず制多し」とある。国が亡びるきっかけは、制度や法令が増えてくるところにあるとの指摘だ。
これは会社組織にも同じことが言える。スポーツ選手のマネジメントとマーケティングを行う会社IMGを設立し、アメリカビジネス界の異端児として知られたマーク・マコーマック氏は、会社が成長する上での最大の問題は、「経営を少しでも容易に、円滑にするために築いた組織構造やシステムが、本来の思惑とは逆に、会社の勢いをそぐ足かせとして機能してしまうようになることだ」と、自著「ハーバードでは教えない実践経営学」に記している。
組織が大きくなるにつれて、様々な問題が起こるようになってくる。そこで、同じ問題が起きないようにルールが作られる。結果としてルールの数が増えていく。どのルールも制定したときには必要だったものが、いつの間にかルールが一人歩きをし、組織の活力を奪っていくのだ。
組織は、よほど注意を払わないと、管理過剰に陥る習性を持っている。企業規模が拡大すると、必然的に管理部門が生まれる。管理部門は、目に見える実績を残そうと、問題が起きる前にルール作りに取り組みがちになる。また、管理は知識とスキルがあれば遂行できるだけに、優秀な管理部門ほど、「必ず制多し」となってしまうのだ。
では、管理過剰にならないためにはどうすればいいのか。四書五経のひとつ『書経』の次の言葉が参考になる。「政策には廃止しなければならないことが起こり、新しく始めなければならないことが起こる」。
どんなにいい政策、制度でも、必ずメリットとデメリットがある。同じことを続けていくと、時間とともにデメリットが出てくるようになる。それだけに、適宜、見直しが必要になってくると考えればいいだろう。
もうひとつ、組織の存亡について『孟子』の指摘も紹介しておく。「組織の中に、ルールを守る家臣や君主を補佐する賢者がいなくて、外には対抗する国や外国からの脅威がない場合には、自然安逸にながれて、ついには必ず滅亡するものである」。
組織内に、会社方針を理解して行動する従業員と優良な補佐役がいなくて、外部にライバルが存在しないと緊張感がなくなり、組織が弱体化するとの教えだ。難しいことではあるが、ライバル企業の存在は、有り難いと考えたい。