疋田文明

「経営ジャーナリスト」と検索してください。トップに表示されるのが私です。  1986年…

疋田文明

「経営ジャーナリスト」と検索してください。トップに表示されるのが私です。  1986年の独立以来、ひたすら経営の世界を取材してきました。経営の現場は知恵の宝庫です。そうした活動の成果を活かすべく、いまは元気印企業が増えることを願って『元気塾』を中心に活動しています。

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  • 経営に生かしたい先人の知恵

最近の記事

経営に活かしたい先人の知恵…その42

◆ものごとに必ず見られる利害両面◆ 『孫子』に「知恵の働く者は、必ず利害の両面を合わせ考える。利益になることを考える時には、害の面も合わせ考えるから、その仕事は順調に進む。害になることを考える場合にも、利益の面を合わせ考えるから、その心配ごとも解消するのである」とある。  ものごとには、メリットがあれば必ずデメリットもある。決断する際に、利益の面ばかりに目を奪われていると、落とし穴に嵌りかねない。常に利害両面を考えることで、成功の確率は高くなり、リスクは低くなるとの指摘だ。

    • 経営に活かしたい先人の知恵…その41

      ◆なぜ子孫の代で衰退するのか◆  経営の世界をフィールドワークにして40年超になるが、改めて痛感しているのが、組織を持続することの難しさだ。一代で企業を立ち上げ、名を成した経営者は数多くいるが、終わりを全うできなかった経営者もまた多い。首尾よく事業承継できたとしても、その後衰退する企業も目立つ。  持続的に成長できず、終わりを全うできない組織が多いのは、昨今の日本に限った話ではない。二代目、三代目と続くにつれて弱体化していくことは、古の中国も同じだった。唐の二代目皇帝・太宗

      • 経営に活かしたい先人の知恵…その40

        ◆過去の業績を現在の地位で報いてはならない◆  後継社長を対象にした勉強会『元気塾』を20年近く主宰しているが、メンバー共通の悩みの一つに、先代社長時代に幹部として会社を支えてくれた人材の処遇がある。過去の功労者にどう対処すればいいのか。私はその答えを『貞観政要』の中に見出し、アドバイスしている。  中国・唐の二代目皇帝太宗は、名君として知られているが、統治後10年余り経つと、幹部クラスの規律が緩んできたことを憂慮していた。そこで、その理由を臣下に聞いたところ、次のような

        • 経営に活かしたい先人の知恵…その39

          ◆「継続学習」のススメ◆  中国の古典・『礼記』に、「玉も磨いて光沢を出さなければ、宝玉として通用しないように、人は、学んで物事の道理を心得ぬことには、才能を発揮することができない」との言葉があり、『論語』には「学ぶに勝るものはない」と記されている。  学習で得られる成果とは、一体どのようなものなのか?  まず挙げたいのは、何が正しくて、何が間違いなのかを、判断する力が身につくということだ。人は年を重ねるとともに、自ら判断しなければならないことが増えてくるが、知識が増えれ

        経営に活かしたい先人の知恵…その42

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        • 経営に生かしたい先人の知恵
          42本

        記事

          経営に活かしたい先人の知恵…その38

          ◆小事を捨て置けば大事に至る◆  『貞観政要』に、太宗(唐二代目皇帝)が「すべて大事というものは小事から起こるものである。小事を問題にしないで捨て置けば、大事の方はどうにも救うことができないようになる」と語ったと記されている。問題が大きくならないうちに手を打つべきとの指摘だが、これは企業経営にも相通じるものがあるだろう。  労働災害の分野に、ひとつの重大事故の背後には29の軽傷事故があり、その背後には300のヒヤリ・ハット(災害に至らなかったが、ヒヤッとしたことハッとしたこ

          経営に活かしたい先人の知恵…その38

          経営に活かしたい先人の知恵…その37

          ◆良薬は口に苦し◆  『孔子家語』に、「良薬は口には苦いけれど、それだけ病気に効き目があり、忠言は耳障りにはなるけれど、それだけ行動の是正に効き目がある。その証拠に、殷の湯王、周の武王には喧々諤々の忠臣があればこそ国が栄え、夏の桀王、殷の紂王の臣下は皆、唯々諾々のご機嫌とりばかりだったので国が滅びた」とある。湯王、武王は優良なリーダーの、桀、紂は無能なリーダーの代表格で、これが日本でもよく知られる「良薬は口に苦し」の教えだ。  本稿22で、優良なリーダーは、兼聴する(より多

          経営に活かしたい先人の知恵…その37

          経営に活かしたい先人の知恵…その36

          ◆事業構造の見直しが収益力向上への第一歩◆  30年も停滞していた日本経済に、いくつか明るい兆しが見えてきた。その最たるものとして、私は新規開業率が高くなってきたことを挙げたい。2000年代に入ってから5%前後で推移してきた開業率が、2023年には前年比で8,9%増加(2024年6月30日日経新聞)したという。かねてより、開業が活発な国は、経済成長率も高い傾向があるとされている。日本経済も、成長が期待できると考えていいだろう。  一方で、企業にとっては、人件費の上昇と仕入れ

          経営に活かしたい先人の知恵…その36

          経営に活かしたい先人の知恵…その35

          ◆窮地の時、トコトン考えれば道は開ける◆  中国古典『春秋左氏伝』に、「安きにありて危うきを思え。思えばすなわち備えあり。備えあれば患いなし」とある。本稿その9で、私は、この教えを引用して、いい時に危機意識を持つことが大事だと書いたが、これは本当に難しいようだ。順調な時ほど仕事量が多いだけに、当座の仕事をこなすことを優先せざるを得ない。また、現状の仕事を片付ければ収益が確保できるだけに、来たるべき危機に備えるという意識が薄くなってしまう。  しかし、いい状況が長く続かない

          経営に活かしたい先人の知恵…その35

          経営に活かしたい先人の知恵…その34

          ◆変化に対応した者が生き残る◆   中国の古典『易経』に、「そもそも幾(きざし)とは、事のはじめの微かな動きであり、結果の吉兆をまずもって示唆する前兆である。君子はその幾を見て措置を講じ、日を終えるのを待たずしてこれを実践に移す」と記されている。  紀元前221年、秦を建国した始皇帝は、自らを朕と称しているが、この朕という言葉には〝兆し〟という意味も含まれており、まさに兆しを見つけて手を打つことが、トップの成すべきことと言えよう。この中国古典の教えは、経営で最も重要とされて

          経営に活かしたい先人の知恵…その34

          経営に活かしたい先人の知恵…その33

          ◆近き者喜べば、遠き者来る◆  優秀な人材は、どのようにすれば応募してくれるのか…。まずは、『論語』の教えを紹介しよう。  葉公が政治のやり方を尋ねた際、孔子は「近い者が喜ぶような政治をすれば、遠方の者まで懐いて来るものです」と答えた。  政治についての問答だが、経営にも通じる教えだと、私は思っている。ここ数年、日本では初任給を上げる企業が増えてきた。働く人たちの所得が増えることは、日本経済のためにも歓迎すべきことだが、既存社員の給与も合わせて引き上げなければ、上手くいく

          経営に活かしたい先人の知恵…その33

          経営に活かしたい先人の知恵…その32

          ◆「一張一弛」のススメ◆  20世紀最高の経営者と言われたウェルチ氏は、経営で一番難しいのは「人のマネジメント」だと指摘している。どういうマネジメントをすれば、従業員は持てる能力を発揮できるのか。厳しくすることがいいのか、優しく接することがいいのか。  ここで参考にしたいのが、孔子の「水、いたって清ければ、すなわち魚なく、人、いたって察すれば、すなわち徒(なかま)なし=一点の誤りもないように厳しくチェックしていては、仲間は増えない」という教えだ。人のマネジメントにおいても、

          経営に活かしたい先人の知恵…その32

          経営に活かしたい先人の知恵…その31

          ◆過ぎることの弊害◆  『論語』に「過ぎたるは、なお及ばざるが如し=何事も、過ぎることが間違いなら、及ばないことも間違いである」とある。  儒教が理想とする「中庸=過ぎることもなく、及ばぬこともなく、終始偏らない」の教えが、先の言葉に集約されているが、これほど難しいこともないと、孔子は指摘している。私はこの教訓が、人生を歩むに際しても、また経営の実践面においても、実に示唆に富んだものであると考えている。  日本企業の生産性が低い要因のひとつに、過剰品質、過剰サービスが挙げ

          経営に活かしたい先人の知恵…その31

          経営に活かしたい先人の知恵…その30

          ◆志が人と組織を成長させる◆  中国の歴史書『後漢書』に、「志ある者は事遂に成る=固い志のある人は、どんな困難があっても必ず成し遂げる」とある。なぜ志があれば、事を成し遂げることができるのか? その答えとして、『孟子』の次の一節を紹介する。「心の働きである志というものは、気力を左右するものであり、気力は人間の肉体を支配するものである。だから志がしっかりと確立すれば、気力はそれに従ってくるものだ」。  気力が出てくれば、我慢強く取り組むことが可能になり、結果として事が成就す

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          経営に活かしたい先人の知恵…その29

          ◆リーダーに求められる人間洞察力◆  リーダーには「人物を見抜く洞察力」が必要だと、多くの識者が指摘している。では、どうすれば人間の本質を見抜くことができるのか。これについては、古来中国でも大きなテーマになっていたようで、様々な考察がなされてきた。  「官吏の人物を知るのは、明知です。そのためには、大いに勉強しなければなりません」(『書経』)。  知識を蓄積し、判断力を身につけなければ、人間の本質を知ることはできないと考えればいいだろう。  孔子の教えも参考になる。「人

          経営に活かしたい先人の知恵…その29

          経営に活かしたい先人の知恵…その28

          ◆失敗を恐れてチャレンジしないことが最大のリスク◆  「虎穴に入らずんば、虎子を得ず=危険を犯さなければ、大きな利は得られない」(『後漢書』)。  中国・後漢時代の名将・班超の言葉だが、リスクテイクする覚悟がなければ、大きな成果が得られないのは企業経営も同じだ。  1986年4月、私は「アメリカニュービジネス視察団」に参加する機会を得た。当時、日本ではニュービジネスブームで、新規事業先進国・アメリカに学ぼうとの主旨で企画されたツアーだった。ロサンゼルスで、ニュービジネスを

          経営に活かしたい先人の知恵…その28

          経営に活かしたい先人の知恵…その27

          ◆チームプレーについて考える◆  『易経』に、「甲乙の二人が、本当に同心一体になれば、その鋭利さは、固い金属をも断つことができる」とある。これは「断金の交わり=固い友情」の語源であり、どんな優秀な人間でも個人の能力には限界があって、それを打破するのがチーム(組織)の力なのだと、解釈すればいいだろう。  私が信奉する経営思想家、ミュラータイム氏も同様の指摘をしている。「それぞれが50キロの力を持っているとすると、一人では50キロの石しか動かせないが、二人が同時に力を合わせれば

          経営に活かしたい先人の知恵…その27