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【映画】「PERFECT DAYS」の感想
映画「PERFECT DAYS」の感想を思いのままに書こうと思う。この映画を見てから2週間が経った。今更感はあるが、映画を見てから自分自身の生活にもかなり影響を与えたことは間違いない。
毎日同じ繰り返しの美学
僕らはきっと毎日の同じことの繰り返しにどこか飽き飽きしている。
アラームが鳴って朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、支度をして、家をでで、いつもの電車のいつもの車両、いつもと同じ顔ぶれ、そして会社に行き…
そんなルーティンを退屈なものと捉え、面白みもなく、味気ないものと感じてしまいそうだ。
できれば刺激のある毎日を送りたい。誕生日とか、旅行だとか、何かイベントのある毎日にしていきたい。華やかに彩りたい。そうしたら日々がもっとより素敵になり、より幸せを感じられるのではないか。そう考えがちだ。
でも、この主人公(平山)は徹底して毎日の同じ繰り返し、ルーティンにこだわるのだ。
朝起きて、布団を畳み、植物に水をやり、着替えをし、玄関前で鍵や時計を身につけ、小銭をとり、ドアを開け、空を見上げる…
その毎日の繰り返していることを決して惰性にこなすのではなく、一つ一つ丁寧に、端正に心を込めてこなしていく。
その姿がなぜだかかっこよく映るのだ。
いや俳優さんだからか。役所広司だからか。いや、決してそういう訳ではない。
何気ない動作、無意識にできてしまうことも、意識して、そこに一点集中してこなしていく。そうなると自分の当たり前にやっていることも輝いてくる。これが不思議なもので。
そして、主人公である平山はトイレの清掃員という設定だ。
ひたすらトイレを掃除するシーンが出てくるのだが、徹底的にトイレ掃除に没入しているのだ。トイレ掃除といったら、あまり進んでやりたいとは思えないものだし、普段日の目を浴びることもない。でも平山のそこへの没入感は凄まじい。
そこには過去も未来もなく、今だけが存在していて、目の前の自分の世界に集中しているのだ。まるで陶芸家でも見ているかのような錯覚を覚える。
今この瞬間を生きる〜幸せとは?〜
平山は時折り、微笑みを見せるシーンがある。
空を見上げる時、木々の間から溢れる太陽の光を見た時…
なんとも微笑ましい優しさに満ち溢れた表情をするのだ。まさに幸せを感じているように見えるのだ。
「幸せとは何か?」それを僕らに問うているのではと思う。
僕らは幸せというものは何か自分の外側にあるものだと考えてしまう。
どこか非日常の世界にあるのではないか?
SNSに登場するキラキラした写真の世界にあるのではないか?
今というこの瞬間、目の前に映る光景、自分の内側にある心を見ることなく、外の派手なきらびやかな世界に求めてしまいがちだ。
でも、幸せというのは自分の目の前に、そして自分の内側の心に存在しているということに気付かされる。平山のあの優しい微笑みで。
ありふれた日常の中に美しさや喜びは溢れている。そんな「一瞬一瞬を見逃すなよ、大事にしろよ」という平山からのメッセージのように思える。
SNSばかり見るのではなく、目の前の美しい光景に目を向けよう。
空は青く雲は白い、太陽の光は心地良いし、風も優しく気持ちがいい。そして、木の葉が風で揺れている。
こんな美しさで溢れている世界なのに僕らは見ようともしていない。
目の前のことよりも、今とは別の世界に意識を向けてしまっている。
これは現代人ならではの悪い癖だと思う。
電車に乗るとスマホを触るというのは当たり前の光景になった。ある日、雨上がりに電車から虹が見えていたことがある。しかし、誰もがスマホに夢中でその美しい七色の虹に気づいていなかったのだ。
電車に乗っていても、あくまでも見ている世界や頭の中の世界は、今この瞬間とは別の世界。なんだか見失っているものが多すぎるのではないか。
今この瞬間を生きよう。そして、ささやかな日常のささやかな幸せを感じよう。
PERFECT DAYSとは?
最後は映画のタイトルとなった「PERFECT DAYS」とはどういうことか?
これは自分なりの解釈だ。直訳すれば完璧な日々だ。何をもって完璧なのか?何を基準に誰がそれを完璧と決めるのか?
それは自分自身だと思う。自分自身が完璧だと思えば完璧なんだ。
トイレ掃除をしていようが、コンビニでアルバイトをしていようが、大手企業で働いていようが、ホームレスをしていようが、どんな状況でも自分が完璧な日々であると思えば完璧な日々なんだ。
他人や世間が決めるのではない。自分自身が決めるものなんだ。自分が幸せと感じればそれは幸せなんだ。
時には思うようにいかないこともある。人生に絶望することもある。
でも、そんな状況も受け入れるしかない。受け入れることでしか前に進めない。
(きっと平山も過去に何かあったに違いない。)
そして、思い通りにいかないことは思い通りにしようとしない。今自分ができることをやっていこう。平山のように淡々と。
そうやって自分のPERFECT DAYSは作られていくのだと思う。