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心化粧19 — あるべき姿に
私は社会から迫害されている。
職場の人が怖い。
僕は間違っていることばかりする。
怖い。
ああ、何ということだ。
ああ、まるで自分が自分でないかのよう。
このままでは、
僕は社会の荒波に飲み込まれ、
溺死してしまう。
ああ、常人であることの難しさ。
ああ、普通であることの難易度の高さ。
普通ってなんだ?
正しいってなんだ?
何が正解で、何が間違いなのか、
そんなこと、僕には分からない。
ただ一つ分かるのは、
僕の体は、まともじゃない。
これを、神からの才能と見抜くべきか?
あるいは、欠陥だらけの人間だと悲しむべきか?
僕は、まだ何も結論を見出せていない。
ああ、怖い。
誰も、僕に近寄ってきてほしくない。
怖いよ。
もしかしたら、
僕のいないどこかで、
僕の悪口を叩いているのかもしれない。
怖い。
世界が、僕を飲み込もうとしている。
息ができない。
このまま、闇の底に沈んでしまいそうだ。
この恐ろしさ。
言葉にしがたい。
形容しがたい。
僕は間違った人間だ。
僕は不完全な存在だ。
僕は、この世界に溶け込むことができない。
何とかしてくれ、誰か。
このままでは、僕は間違った道へ進んでしまう。
このままでは、僕の人生が危ない。
何とか僕を、まともにしてくれやしないだろうか。
立ち上がる気力もない人間は、
立ち上がるための足ではないのだろうか。
ああ、きっと僕の体が、
そうはできていないのだろう。
人は、自分の体を認識していない。
僕は、今どのような表情をしているのか、
まったく分からない。
ゆえに、僕に訪れる体の異常を、
僕は感じ取ることができない。
僕の胃の中は、どうなっているのか?
内臓は?
目は?
頬は?
唇は?
そう、何一つとして、僕は分かり得ない。
僕は、自分のことを何も知らないんだろう。
言葉にしてみて、初めて気づく、僕の異常さ。
僕を正常にしてくれる存在は、
この世に存在しないのであろうか。
いつからだろう。
僕がこんなにも、だらしなくなってしまったのは。
きっと、遥か昔からそうだったのだろう。
でも、その時は気づかなかった。
その時はまだ、世界に違和感を覚えなかった。
気づいた時には、
もう、手遅れになっていた。
だんだん、思考がまとまらなくなってくる。
この感情は、一体何なんだろう。
なぜ僕は存在しているのか?
欲しいものは、一体何なのか?
その先にあるものが何なのか?
まったく分からない。
僕が目指した先の道には、
不確かなレインボーロードが散っているに違いない。
まるで、蜃気楼のように。
まるで、砂の城のように。
まるで、僕の人生のように。
間違っているのは、いつでも僕。
正しいのは、いつも世界。
この在り方が変わらない限り、
僕は、生きてはいけない。
この世界にとって、僕は何なのか?
何か意味があるのか?
それとも、僕はただの歪みなのか?
誰か、僕をまともにしてほしい。
そう、あるべき姿に。