あの悲しみの国に光明を…
「戦争…?
何処の国の話だよ?」
そう言って彼女の顔を見た
俺は驚いた…
彼女は泣いていた
涙が頬を伝っていた
「ど、どうしたの…?」
俺が聞くと彼女は首を振った
そして顔を両手で覆った
「俺…何か悪い事言った?」
俺は慌てて彼女の肩を抱く
でも、彼女は顔を上げない…
顔を覆ったまま彼女が言った
「こんなのってひどい…」
「…? どうしたのさ…?」
俺は何が何だか分からない
彼女は覆っていた手を顔から離した
「分からないの?
あの輝きの一つ一つが、街を…人を…
破壊して…殺してるのよ!」
彼女は涙を流しながら叫んでいた
「そ、そうなのかい…?」
俺は、ただ慌てるだけだった
彼女の言ってる事が分からなかったんだ
「もういい… 帰るわ!」
彼女はそう言って上着を取り
俺の部屋から出て行った
俺は茫然として
見送るしかなかった
テレビがニュースを流していた
侵攻が始まったと…
俺はテレビに見入った
ライブ映像を…解説を…
貪るように見た
知らなかった…
俺はバカだ…
俺はネットで今起こっている
ある国への侵攻について
調べまくった
現地からのSNSの発信も見た
気が付くと
俺は涙を流していた…
彼女の気持ちが理解出来た
人々の悲しみと苦しみを
少し分かった気がしたんだ
俺は事実を知るほどに
自分の無知と無力を恥じた
俺は何も知らなかった…
そして俺には何も出来ない…
俺は考えた…
そして立ち上がり
上着を取った
行こう
彼女の家に…
今俺に出来る事…
それは一人で悩む事じゃない
彼女と二人で考えるんだ
俺達に何か出来ないかと…
そして答えは出なくても
彼女と二人で
発信していこう
SNSで世界中へ…
彼らと彼らの祖国に
何が出来るかを
世界に問いかけよう
同じ考えの人達が
世界中に大勢いるに違いない
みんなで考えよう
そして手をつなごう
力を大きくしよう
一人では出来なくても
大勢が声を合わせて叫べば
力を生み出せるはずだ
そうすればきっと…
世界を変えられる…
俺は…
彼女の家に向けて
ひたすら走った…
君に涙を流させた
悲しみの国の曇天に
一すじの光明を見出したい
そのために…
俺達二人から始めるんだ!