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幽閉returns ⑯パパだけの問題じゃない!
パパが何かごそごそやってる
こんな夜中に何をする気なの…?
やっぱり、さっきのカニの様な怪物のせいなのね
きっとそうだわ
あれは見間違えなんかじゃない
パパもあの怪物を見たのか
何か証拠でも見つけたんじゃ…
パパは鬼刑事って言われてた
優秀だった捜査一課の元刑事なんだもん
何かに気付いたのよ、きっと…
そして一人で戦う気なんだわ
ママにも私にまで内緒で…
もし…カニの怪物が私の考え通りの相手だったら
私だって放っておけないわ
パパだけの問題じゃない
私の悪夢の全ての源なのよ
私が病院に通い続けなきゃならないのも
トラウマも全部アイツのせい…
もしも、もしも…
私の想像している通りだったら…
あり得ないけど、アイツが生きていたんだったら…
これはパパだけの問題じゃないわ
私自身の問題でもあるのよ
あっ! 車のエンジンがかかる音!
パパがどこかへ行く気なんだわ!
待ってパパ! 私も行く!
私は二階から駆け下りて駐車場まで必死に走った
「ブロロロオーッ!」
待って、パパーッ!
ダメよ、パパ…
一人でなんて危険すぎる…
……
よしっ!
くよくよ考えてたって仕方ないわ
パパの行き先は分かってる
私とパパが脱出したあの島…
あのサイコパス野郎の妄想の王国…
あそこが私の悪夢の始まりの場所
パパもあの怪物もあそこにきっといるんだわ
今から準備をして朝になったら出かけよう
ママを危険に巻き込めないから
本当の事は言えないけど…
このままジッとしていられないもの
それじゃ準備をして明日に備えて早く寝よう
待ってて、パパ…
お願いだから、一人で無理をしないで…
********
さあ、準備は出来たし出かけよう
今日はお店の定休日だからママもまだ寝てる
ママには内緒だけど置手紙も書いた
もう待ってなんていられないから
パパを追いかけよう
あっ、お店の前に車が停まった…
とても大きな車だわ
うちに何か用なのかしら?
えっ? お客さん…?
すみません、今日はお店の定休日なんです…
私はこれから出かける所で…
そう…なんですか
遠くから父のコーヒーを飲みにわざわざ…
本当にごめんなさい…
また今度、是非いらして下さい
えっ? 父のお知り合いの方なんですか?
昔、お仕事の関係で父と…
そうだったんですか…
父を訪ねて来られたんですか
それに父の淹れたブレンドコーヒーを飲むために…
じゃあ、父もきっとお会いしたいはずです
伝えておきますので、これに懲りずに本当に是非…
ああ、ご丁寧に名刺を頂けるんですね
えっと…
「千寿探偵事務所
所長 千寿 理…」
探偵所長の千寿さん… 変わったお名前ですね…
あっ、ごめんなさい… 私ったら失礼な事を…
とにかく、必ず父に伝えておきますので
今度また父の淹れたブレンドコーヒーを
是非飲みにいらして下さい
きっと父も喜びますわ
それでは私は出かけますので、これで失礼します
今日は残念でしたけど、遠くからいらして下さって
本当にありがとうございました
それでは、失礼します
えっ…? 何ですか?
うちの駐車場の方から血の匂いが…?
かなりの量の血ですって…?
そんな…
何もありませんわ…
本当ですから、もうお帰り下さい…
私、急いでるんです!
早くしないと父が…
本当にもうこれで…
えっ? 私を車で送って下さるって…
初めてお会いした方にそんな…
確かに…助かりますけど…
本当によろしいんですか…?
ありがとうございます
本当を言うと
急いでるので、すごく助かります
じゃあ、お言葉に甘えて…
よろしくお願いします
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