妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「未知なる者再び… (肆)" 『神隠し』… 理解不能な救出作戦 "」
水竜巻が拙者の頭上を舞っておる
もう赤い光の線を恐れる事は無かった
しかし村の衆の救出だが…
あの銀色の円盤…
あそこからどうやって…?
『火車』の業火を持って焼き尽くす…
駄目だ…村の衆まで焼けてしまう
金属で出来ている様だから
雷雲を呼び出し特大の稲妻をぶつけてみるか…?
それも中の人間まで殺してしまうやも知れぬ…
人質に取ろうとした仲間まで
あっさりと殺してしまう奴等だ…
ああ…
どうすればよいのじゃ…
ここまで来て
救出は無理なのか…?
いや、待てよ…?
以前に同じような事があった…
人智を超えし妖との戦い…
拙者がやはり諦めかけた事が…
あれは妖怪『神隠し』との戦い…
苦闘の末に拙者と『斬妖丸』で
何とか|成敗『せいばい』致した
そうだ…
『神隠し』を使えまいか…?
ヤツは斬り捨てた故
『斬妖丸』に血を吸わせ封印した
『神隠し』は如何なる場所からでも
人をさらいおった…
どんなに警戒厳重な城からも
入り口が一箇所しかない侵入不可能な土蔵からも…
ヤツの力なら、あの円盤から村の衆を…
あの様にいやらしい妖の力など使いたくは無いが
背に腹は代えられぬ…
よし、『斬妖丸』よ!
『神隠し』を使うぞ!
拙者は『斬妖丸』の切っ先で宙に円を描く
「『神隠し』よ、出ませい!」
妖怪『神隠し』が拙者の前に現れ出た
この妖は見た目は見すぼらしい翁の姿をしておる
しかし、姿を消す事も自由自在で
どんな場所へも神出鬼没で人を連れ去りおる
さしもの拙者も『神隠し』の侵入を防ぐ事
能わずじまいじゃった
別な空間を移動するとしか考えられぬ
今でもこの妖だけは理解出来ぬ…
拙者と『斬妖丸』がこの妖を仕留めるのに
どれだけの苦労を致した事か…
この妖とは二度と敵として相まみえたく無い
だが今は、こいつに任せるしか無い…
頼んだぞ『神隠し』…
『神隠し』はふわふわと
銀色の円盤まで宙を漂って行った
まるで煙のような奴である
敵からの攻撃などの反応も無い
例の赤い光の線で撃たれる事も無かった…
『神隠し』の様な霊体には反応しないのか…?
拙者にはまるで理解不能であったが…
だが、助かった…
拙者はホッとして様子を見守る
見ていると『神隠し』は銀色の円盤の地面に面した側…
皿で言うと『高台』に当たる部分で
拙者をおいでおいでと手招きしておる
村の衆を救うためだ、行かずばなるまい…
拙者は『神隠し』の手招きに応じ
頭上に水竜巻を載せる格好で
敵からの攻撃に備えつつ…
そろそろと進んで行った
何度か赤い光が拙者を射殺そうと発射された
しかし、その度に頭上の水竜が
光の線を偏光させて拙者を護った
何とか『神隠し』のいる場所へと拙者は到達した…
この場所へは攻撃出来ないのか
敵は撃って来なかった
だが、用心のために水竜はそのままにしておく…
『神隠し』は拙者の見ている前で
銀色の円盤の表面に手をかけたかと思うと
まるで水に潜るがごとく
すうっと簡単に中に入って行きおる…
拙者は我が目を疑った…
拙者は円盤の表面を拳で叩いて見たが
見たままの銀色の金属の硬い感触だった
表面はヒンヤリとしてツルツルで
継ぎ目一つ見当たらない…
どうやって『神隠し』は
これを通り抜ける事が出来るのだ…?
『神隠し』よ
拙者も中へ入れぬか?
頼む…連れて行ってくれい
拙者は藁にも縋る気持ちで『神隠し』に頼んだ
すると『神隠し』は拙者の身体を
自分の霊体で包み込んだ…
半透明な『神隠し』の中は嫌な匂いがした
気味が悪いが仕方あるまい…
これはどういう事だ…?
拙者は銀色に輝く固い金属の中を
『神隠し』と一緒に潜り抜けてゆく
拙者には悪夢としか思えなかった
もしこのまま『神隠し』に金属壁の中に
置いてけぼりを食らったら…
考えたくもない…
頭が壁を通り抜けた
やがて拙者の全身は足の裏まで
『神隠し』と一緒に壁を潜り抜けることが出来た
こいつはこうやって人を連れ去っていたのか…
しかし…
外から見た円盤と中に入って見るのとでは
大きさが異なって感じられた…
拙者には中が途轍もなく広く思われるのだ…
外から見る限りでは
せいぜいが峠の茶店程度だったはずだ
それが中は城のように広い…
錯覚なのだろうか…?
いや、不思議がっている暇などは無い…
村の衆を捜さなくては…
拙者は『斬妖丸』を抜き放った
「『斬妖丸』よ、お前は人間の匂いも分かるであろう
村人達を捜すのじゃ
頼んだぞ…」
拙者は『斬妖丸』を油断なく構えながら
『神隠し』を引き連れ
円盤の内部を歩き始めた…
※【(伍)に続く…】
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