妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「未知なる者との遭遇…」
何だあれは…?
星か?
流れ星…
ここから近いな…
向こうの海岸へ落ちた様だ…
砂浜の方か…?
行って見よう
おっ…あれか?
砂浜に途轍もない窪みが…
直径が十丈(約30m)はあるぞ…
真ん中に何か突き刺さってる
この焦げたような匂いは…?
あれの周りの砂が焼けた匂いか…
いったい…
あれは、何なのだ…?
東屋ほどの大きさの銀色に輝く物体…?
鶏卵の様な形をしておる…
あれは妖では無いのか…?
だが、『斬妖丸』に反応は無い…
あれはいったい…?
むっ?
表面に丸い穴が開いた…?
穴が広がっていく…
むうぅ… やはり妖か…?
はっ!
中から…何か出てくる…
拙者は迷わず『斬妖丸』を抜き放った
だが、やはり反応は無い…
拙者は『斬妖丸』を構えたまま
砂浜に身を伏せた
銀色の卵から出て来たのは…
やはり全身銀色に輝く人の様な形をした
生き物(?)だった…
あれは銀色をした生物なのか…?
それとも、銀色の服を着ているのか…?
分からぬ…
むっ!
何だあれは…?
手に何かを持っておる…
やはり銀色をして先端が緑色に光る…
あれは形からして短筒か…
銃…武器?
だが、火縄がどこにも見当たらぬ…
はっ!
こちらを向いた様だ…
気配を断った拙者に気付いたのか…?
事を構えるというのならば
致し方あるまい…
斬るか…
その時だ…
『斬妖丸』が震え出した
む…
やはり、ヤツは妖であったか…
それならば躊躇無し!
成敗致す!
立ち上がった拙者が跳ぶよりも速く
ヤツの持つ短筒の先端が光った!
「ドサッ!」
背後の音に振り返った拙者が
満月に照らされた砂の上に見たものは…
人間ほどの大きさで
トカゲの様な姿をした妖であった…
妖は転がっている…
たった今、死んだようだ…
驚いた事に…
そいつの身体の半分は透き通っていた
だが、徐々に全ての形が現れてくる…
死んだ事によって身体を透過させる術が
解けたのであろう
この妖なら
以前に同種のモノを倒した事がある
忍者のように姿を消したり
形状を変化させる厄介なヤツだ…
確か名を『かめれおん』と言ったか…?
『斬妖丸』が反応したのは
この『かめれおん』に対してであったか…
しかし…
拙者は急いで振り返った
銀色をしたそいつは
まだ同じ場所に立っていた…
だが…
拙者に向けていた銀色をした短筒(?)は
もう構えてはいなかった…
拙者を攻撃するつもりは
無いというのか…?
では、ヤツは『かめれおん』を狙って撃ち…
拙者を救ったと云うのか…?
分からぬ…
だが何とは無しに
拙者もヤツに対する殺気が失せた…
拙者は抜き身の『斬妖丸』を鞘に納めた
銀色のヤツを見ると
向こうも拙者を見ている様だった
しばらく見つめ合う格好だったが
先にヤツが動き出した…
そして…
銀色をした卵の開いていた丸い穴に
足から入り込んだ
すると、すぐに扉は閉じ
銀色の卵の表面はツルンとした状態に戻った
巨大な銀色の卵が振動するかの様に
震え出したかと思うやいなや
夜空に輝く満月の光を反射したまま
空中に浮かび上がった…
拙者は口をポカンと開けたまま
見つめているだけだった…
少しの間、空中に浮かんだまま
停止していた卵は
瞬く間に
空へと舞い上がった!
そして…
見上げる拙者の頭上で
方角を変えるや
海の彼方へと飛び去って行った…
流れ星…
拙者は茫然と見送りながら呟いた
なあ…
『斬妖丸』よ…
妖では無いのならば…
いったい…
何だったんだ… あれは?