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まだ完結していない創作大賞2024エントリー作品の紹介②リライト版『魔女の遺伝子』

創作大賞2024エントリー作品三作のうち、これまで二作を紹介しました。

そして最後のひとつは、漫画原作部門にエントリーした異能力バトル小説『魔女の遺伝子』です。

リライト版『魔女の遺伝子』の紹介

本作はクローンの少女リサが自分を利用しようとする組織から身を守る、いわゆる異能力バトルものです。と言うと単純ですが、敵も含めた登場人物たちの思惑に焦点を当てた群像劇の側面も持たせる予定です。

だいたいの内容や執筆しはじめた経緯は下の記事に書いてあります。


本作内での「差別」の扱い

上の記事にも書いてありますが、本作における「クローン」や「差別」は完結作品『あなたの知らない永遠』における「不老不死」と同じく、物語を描くための道具でありそれ自体がテーマではありません。

「差別」がリサと、そのクローン元であるナターシャにとって大きな問題なのは、読んでいただければわかると思います。ただそれは安易な差別反対や逆差別反対といった政治的な意図とは別次元の話ですし、私個人としてはそういった問題の立て方はどちらも偽善に変わりはないと思っているので、それを物語の中心に据える気はまったくありません。そもそもそのての「差別」の話は描きつくされてますしね。

本作における「差別」の扱いがどういったものかは、第一話の次の箇所を読んでいただければだいたいわかるかと思います。

「ねぇ聞いた? ギルバートさんとこの子、クローンらしいわよ」
「あのシュッとした顔の女の子? へぇ、どうりで親に似てないのね」
「こう言ったら失礼だけど、ご両親はすごく平凡な顔してるじゃない? あれであんな子が生まれるわけないものね」
 少子化対策として政府主導で大々的に造られたとはいえ、クローン人間の数はそうでない人に比べればずっと少ない。政策は施行から五年ほどで打ち切られたが、その後もあからさまに差別されることは稀だったものの、このような偏見に晒されることが少なくなかった。

「最初に造られた子たちは十七歳くらいよね? これから進学や就職で差別されたりしないかしら」
「でも変な病気にかかって辞められたらたまったもんじゃないわよ。かわいそうだけど、そんな子を無理して雇いたくなんかないわよね」
 クローン人間はそうでない者より病気にかかりやすい等の噂の多くは科学的根拠のないデマだったが、そういった情報を発信する者は後を絶たず、それを真実だと思い込む者も一定数いた。
 また弱者救済を大義名分に若者を尖兵として取り込もうとする活動家や、社会問題に逐一哲学的な考察を加えなければ気が済まない共感能力に欠ける知識人なども、当然のごとくこの問題に食いついた。
 かと思えば自らクローン人間であることを公表してインフルエンサーになろうとする者や、その熱烈な信者まで現れ、SNSを中心にクローン問題は何かと世間を騒がせる話題となっていた。
 リサはそういうものになんとなく違和感を覚えていた。というのも彼女にはそのての人々が皆、一見クローン問題に関心があるように見えて、その実他人事としてそれを扱っているように見えたからだ。きっと彼らにとって、クローン人間は様々な意味で都合がよいだけの存在。リサは彼らとの間に空虚な隔たりを感じずにはいられなかった。

『魔女の遺伝子』第一話「クローンの少女」

本作での「差別」は、クローンであるリサやその親友であるアリーの善性を強調するための外郭の一部でしかありません。それを私利私欲のために使おうとする人たちは本作では大して重要な位置にいませんし、作者である私も彼らに対して物語に描くほどの面白みを感じていません。


では何がテーマなのか

では何が本作のテーマなのかというと、オブラートに包んで言うならみなさん大好きな「異なる正義同士の戦い」になります。ただ他二作と同じく、本作も物語の根幹にあるのは「善良な人を称え、邪悪な人を蔑む」というコントラストです(「善悪自体が相対的な概念」という話は置いておいて)。では本作に登場する「邪悪な人」って誰?という話ですが、それが本作の真のテーマに関わってきます。

本作の敵はリサの中にあるナターシャの人格と能力を蘇らせ、社会に復讐をしようと企てる組織です。しかし彼らの多くは厳密には「邪悪な人」ではなく「悪にならざるを得なかった元々善良だった人」に当たります。ここまで書けばおおよその察しはつくと思いますが、何をどう描くかはまだ口外できません。


異能力バトルの部分がメイン

とはいえやたらテーマ性ばかりを強調した作品というのはたいてい、作者の妄想が独り歩きして読者が置き去りになるだけなので、ちゃんと異能力バトルをメインに描く予定です。なお、戦いの内容については少しずつグロ描写を増やしていくつもりです。


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