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スタートアップは資産管理会社を設立すべきか?

【資産管理会社を設立すべきか?】

資産管理会社を設立すべきかという質問を受けますが、設立しておいた方がいいと思います。

【資産管理会社のメリット】

EXITがM&AでなくIPOを前提としている社長なら、資産管理会社を設立すべきだと思います。

会社からもらう配当金部分の節税ができるからです。

受取配当金の節税になるのは、受取配当金の益金不算入を使えるからです。

【受取配当金の所得税の取り扱い】

通常、配当金に対する所得税率は、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。配当金は支払い時に源泉徴収されるため、原則、確定申告は不要となります。累進税率の給与所得とは異なり、配当所得は一定の税率であることが特徴です。

しかし、創業者のような大口株主の場合、こうはいきません。大口株主(発行済株式総数の3%以上を保有している個人)が受取る配当金については所得税だけで20%源泉徴収された上に、確定申告で累進税率で総合課税されてしまうのです。なお、これらについては、少額配当の場合に、所得税の確定申告をしないことを選択できます。

【資産管理会社を作ると受取配当金の益金不算入が使える】

上場前のスタートアップ企業で配当金を支払う会社は、ほとんどいないと思いますが、上場後は配当金を支払うようになります。
配当金を個人ではなく資産管理会社で受け取ることによって節税が可能になります。
この会社から受け取る配当金については、支払法人の段階で既に法人税が課税されているので、「配当に対する支払段階の法人税」と「受取段階の法人税」との税負担を受取法人の段階で調整する仕組みとして、配当を受け取る法人の段階において、その全部又は一部が益金不算入とされるのです。

1. 完全子法人株式等に係る配当等

その全額

2. 関連法人株式等に係る配当等

1/3超の保有の場合
関連法人株式等について受ける配当等の額 - 負債利子の額のうちその株式等に係る部分の金額

全額益金不算入です。

3. その他の株式等に係る配当等

5%超の保有の場合

その他の株式等について受ける配当等の額 × 50%

50%が益金不算入です。

4. 非支配目的株式等に係る配当等

5%以下の保有比率の場合

非支配目的株式等について受ける配当等の額 × 20%

20%が益金不算入です。

【個人保有と資産管理会社での保有の割合をどうするか?】

EXITをIPO1本に決めていれば、資産管理会社での保有割合が高い方が良いと思います。株式売却時の税率差よりも、受取配当金にかかる税率差に着目すればよいからです。

一方、EXITがM&Aになる可能性が高い場合は、個人保有の場合が良いと思います。受取配当金の税率差を気にするよりも、株式売却時の税率差を気にしたほうがよいと思います。

なお、EXITがIPOかM&Aか、どちらになるか判断がつきかねる場合は、個人と資産管理会社の保有割合を半々にしておくというのも、一つの判断だと思います。

【資産管理会社の株主をどうするか?】

経営者単独で株主になるか、奥様や子供達に多くの株式を持たせるかの判断があります。

IPO後に、受取配当金が資産管理会社に入金される場合、奥様や子供達の株式保有割合が高ければ、経営者個人財産の増加を抑えて、奥様や子供達に相続財産を残すことが可能になります。

将来の遺産分割をしやすいように、子供の数だけ資産会社を設立される方もいます。

【子供達の出資金をどうするか?】

経営者は普通株式1株を出資し、奥様や子供達には無議決権株式を発行されることが多いです。このような権利内容の異なる複数の種類の株式を発行するには、株主総会の特別決議で、各種類株式の内容と発行可能種類株式総数を定款で定める必要があります。

子供達に出資資金を贈与する際には、以下の点に注意します。

贈与契約書を作成する(未成年者は親の同意と署名押印が必要)
金銭贈与は現金でなく預貯金口座に振り込む
贈与契約書を確定日付をもらった公正証書にする


スタートアップ支援税理士
株式上場支援 石割公認会計士事務所



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