キャンプナイフの使い方
この日の予報は雨100%
それでも晴れ女である妻の神通力は天に届き
設営完了までは曇り空だった。
この雨キャンのチェックイン先はというと林間の美しい『フォレストパークあだたら』曇り空で景色がスポイルされる事もなく
雨に濡れる緑の美しさを楽しむならば雨キャンは林間というのが我が家のセオリー。
設営撤収時、ずぶ濡れたとしても温泉で身体を温められるからという妻の強い要望だった。
夏風邪は確かに長引くものだし風邪などに罹患していられないのが今の私達
週一キャンパーだからこそ体調管理は最上位のプライオリティという事になる。
勝手知ったるあだたらの湯、目下癒しの塊の様な場所なのだ。
そんな雨キャンプ
楽しもうと思えば色んな策が泉のように湧き出でる。このキャンプは先日購入したてのナイフを『とことん使ってやろうじゃない』
そんなステータスで挑む。
普段意識せずにやっているキャンプ中の刃物を使うシチュエーションをじっくりとウォッチしながら進めて行こう。
【乾杯の後】
いつものランブルスコのコルク栓コイツはその場で縦にナイフを入れ真っ二つにする
箸置きの完成だ。
スパークリングワインのコルクはくびれがあるので多少斜めったキャンプテーブルでも転がらず箸置きとして使いやすい。
栓を抜いた直後じゃないとコルクが固くなりかなり苦戦する事になるので開栓したら直ちにナイフを入れるのが我が家のキャンプの掟である。
若いスパークリングワインのコルクは段々とくびれがなくなっていくので箸置きとして使うのは一回のキャンプ限り毎度乾杯の度に箸置き作りをキャンプアクトとして楽しむ。
ちなみに、ビンテージ物のコルクはくびれがなくなることがない。
その後はもちろんの【バトニング】
ひとたびシースナイフを手にしたなら薪相手に格闘をするのは初歩の初歩
梅雨時期ならば焚火は早めに着火しておく事で退屈も紛れ雨の憂鬱な景色を変えてくれるので例えばパートナーを雨キャンプ好きにさせる効果は絶大だ。
雨キャンプでは少なくなるとはいえ虫の脅威も大幅に減る。
無論タープ下で全てを完結させるノウハウは身に付けておきたい。
さぁここからは我が家オリジナル、キャンプでこんな事をわざわざするのは私ぐらい。
ウィスキーをとにかく美味く飲みたいただそれだけのためのナイフの使用方
【氷割り】である。
しかも丸氷作りのための氷割り。
板氷に垂直にナイフを立てナイフをペグハンマーで叩き氷を真っ直ぐに割る。
垂直の角度を守るのが最大のコツ
4〜5回も力を込めれば「ピキッ!」っといい音がして真っ直ぐ割れるこの瞬間には大きな快感要素がある。
板氷のメーカーによっては垂直に刃を入れても斜めにヒビが入ったりと変な割れ方をするものもあるがセブンイレブンの氷は経験上、素直に割れてくれる。
理想は正四角形の氷を切り出すことこれができたらあとは楽勝で角をひたすら削るだけ。
50歳目前に手に職をと、バーテンダーとなった私。
キャンプ道具の中にアイスピックを忍ばせているわけだが頑丈なナイフならばその剣先を使って同じことができるだろう。
ちょっと楕円形になったが2分かからず丸氷の完成だ。
アイスピックには思い出がある。
昭和40年代 東京オリンピックが終わり高度成長期の真っ只中に私たちは産まれた。
当時、昭和の大発明と言われた冷蔵庫は1ドアがほとんど、普及率もやっと50%を超えたくらいで50年代にやっと100%の普及率になったと言われている。
そんな昭和の夏はエアコンもなく扇風機だけで夏を乗り切るのが当たり前だった。
たまに母が氷屋から大きな氷を買ってきてそれをシャカシャカ砕きかき氷を食べ体温を下げる。
当時の家庭では氷は買う物で冷蔵庫で作れる様になったのはオイルショックのほんの手前だった記憶、年齢で言えば学童になる手前あたり。
製氷皿はアルミ製で少し流水で溶かしてから
「エイヤー!」とレバーを反転させると仕切りが浮いて氷が一個一個バラバラになるというものだった。
そんな時代だったからかも知れない、飲み屋でもない我が家(昭和の家庭)にはアイスピックなる道具が必ずキッチンにあったのを覚えている。
察するに氷屋さんで購入した大きなやつをこれで削って母はかき氷を作ってくれていたのだろう。
子供の頃は鋭利なこれが怖くて怖くて触ろうとすると怒られるしサスペンス系ドラマでは凶器の代表格、つまりは人殺しの道具としてのイメージがあり大人になっても一人暮らしの私の小さなキッチンにアイスピックなる道具は存在しなかった。
考えてみれば、その頃にはもう必要のない道具だったのである。
そんなアイスピックを40過ぎて初めて自分用に購入したのはキャンプでウィスキーを長く美味しく楽しむためである。
キャンプに付随して増えた趣味がいくつかある一つは手網を使った珈琲焙煎、それともう一つがこのアイスピックでの氷割り面倒を楽しめるようになるとそれは趣味と呼べるものになる。
全てはキャンプが私に与えてくれたもの。
丸氷作りで出たクラッシュアイスは丸氷と共にグラスに取っておく。
少し度数の高めなカスクストレングスなどを急冷し飲みやすく楽しめる飲み方『ミストスタイル』が同時に楽しめて無駄にならない。
今回持参したのはシェリー樽で有名なグレンファークラス105とブルックラディ ザ クラシックラディ
両方とも度数が高めでアルコールに決して強くない私には強烈な部類のウィスキーだが楽しめる飲み方の一つ。
そうこうしているうちにあっという間の夕暮れ
今夜はこれより久々のステーキ
大将で焼き上げ
【肉を切る】
分厚いT boneなどの肉はキャンプ用の包丁では歯が立たず使いづらい
ここはバトニングナイフがパーフェクトに役立つ数少ない瞬間の一つなのだ。
筋のある肉塊に刃先がスッと入る瞬間がたまらない。
ためらう事なくスライスしたステーキ肉は、流行りの食パン専門店の生食パンで挟み食べる。
感動で写真はブレブレだった 笑
自ら砥いだ道具を使い贅沢骨つき肉を食パンで食らう
令和最高の贅沢キャンプとなった。
道具は使うためにあるがそれだけではただの実用品に違いない。
使った先に大きな大きな満足が得られる実用以上の道具がナイフだと定義する素敵な雨キャンプになった
それがキャンプ
2019年の記事に加筆して投稿しております