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南へ。サレルノと中世文化🇮🇹

中世のかなしみが、すすり泣くような美しさが私を捉えたのは、サレルノの街の夕暮れだった。

フレッチャロッサに乗ってヴェスビオの麓から遠ざかり、南へ。最古の医学部があったという世界史資料集の記述と、アマルフィ海岸の絶景を浴びる前に集う「玄関」としてしかこの街を意識していなかったが、どんな街にも歴史が詰まっているのがイタリアだ。きっと何かあるだろうと深く調べずに飛び乗った次第である。

天気は曇りだが時折晴れたりするので、サングラスを着けたり取ったりしていると、アジア人であることに少し驚かれる。ベンチにて談笑しているおばあさんや、陽気に散歩しているおじいさんたちの目線からわかるが、この街は「観光地」ではないぞ、という細やかな警告のように思えた。

旧市街の道は狭い

異邦人らしくうろついてから、小高い丘の方を目指す。11世紀にノルマン人の騎士グイスカルドが建立した大聖堂があるとのことでそちらに向かうが、沿岸部の旧市街は海賊対策のために迷宮のような街並みになっている。

道は狭く入り組んでいて、角にある標識に沿って歩いても景色がなかなか変わらないので、不安が疲労に逐一変換されるのだった。

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