僕が普段使っている箸は〈仕出し弁当〉に付いてくる、チョッとだけ高級な竹箸である。
一応〈割り箸〉ではあるが、全体的に角が削ってあるし、先にいくほどテーパー状に細くなっている。最初にくっ付いている部分だけが四角くなっているアレだ。
材質が竹なので軽いし滑らなくて実に使い勝手がいいのだ。
だから普通の〈塗箸〉なんか、ここ10年来は使った試しがない。
いつぞや弟夫婦が遊びに来た時、僕が使っている箸を見て気の毒に思ったのだろうか、弟の嫁さんが、後日、高級な〈塗箸〉をプレゼントしてくれたのである。
ところがこの高級な箸は、なんせ使い勝手が悪くって仕方がない。
持っていても滑る。物を摘まんでも滑って落ちそうになる。持ち手側の方が重くて、茶碗にチョッと乗せたりするとバランスがとれずに落ちてしまう、とまぁ、見映えだけは素晴らしいのだが機能面ではいいところ無しなのだ。
だから善意でプレゼントしてくれたその〈高級箸〉も専ら茶箪笥の引き出しの中で眠り続けることになる。
タマに弟夫婦が来た時だ。食事時に無意識で例の竹箸を使おうとする僕に対して、家内が慌てて目配せをする。
〈わっ❗️ヤバイ❗️〉
辛うじて気が付いた僕は、弟の嫁さんに感づかれないように平気を装い、使い辛い〈高級箸〉を引っ張り出してきては使うのであった。