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K-131 ギリシャ婦人胸像(傷つけるアマゾン)

石膏像サイズ: H.69×W.40×D.26cm(原作サイズ)
制作年代  : ローマンコピー(原作は紀元前430年頃のブロンズ像)
収蔵美術館 : ヴァティカン美術館
原作者   : ポリュクレイトス(Polyclitus)
出土地・年 : ローマ 1733年

古代ギリシャ神話に登場する女性を中心とした種族アマゾン族を題材とした彫像で、戦闘で傷ついた様子を描いていることから「傷つけるアマゾン(Wounded Amazon)」と呼ばれています。全身像であるオリジナル彫像は、戦闘で傷つき、よろめきながら歩くアマゾンの姿を表現していたと考えられています。布ひだをつかんでいる左手はその下にある傷口を押さえ、高く掲げた右手には杖のようなものを握り身体を支える姿であったと想像されています。

この作品は、エフェソスのアルテミス(純潔・狩猟・出産の神、ダイアナと同一視)神殿に奉納されるために作られました。エフェソスはアマゾン族が開いたとされる都市で、この神殿は、けっして男性を寄せ付けなかった純潔のアルテミス神への共感を抱くアマゾン族が作ったものとされます。

奉納されるアマゾン像はコンペティション形式で選ばれることとなり、4~5タイプの異なるアマゾン像が制作されたようです。大プリニウス(古代ローマの博物学者)の記述によれば、古代ローマ時代、エフェソスの神殿には同一のテーマに基づくブロンズ像が5点存在していたとされています。その中でも、この石膏像と同一形状のポリュクレイトスの作品はコンペで第一位となったと伝えられています。

ポリュクレイトスの作品は、たいへん有名になったためたくさんのコピーが制作されましたが、このコンペに参加した他の作品に関しても複製物が多数作られたため、様々なスタイルの「傷つけるアマゾン像」が断片として発掘され、この彫像の本来あるべき姿を想像しようとした考古学者達は混乱することとなりました。実際に発掘された「傷つけるアマゾン像」の断片を整理すると、ほぼ3タイプに分類されます。

肩から下がるペプロスが
①左胸を覆う(ポリュクレイトス作 石膏像と同一のタイプ)
②右胸を覆う(フェイディアス作 カピトリーノ美術館収蔵のMatteiタイプ)
③ほぼ両乳房の中央に垂れ下がる(クレシラス作 Sciarraタイプ プーシキン美術館、メトロポリタン美術館)
といった点や、遊脚の相違などがおもな違いです。

頭部の表情についてはどれも共通していますが、これは発掘物の多くが頭部を欠いており、状態の良かったもの(おそらくポリュクレイトス作のタイプが出発点)をお手本にして補修・補足がなされたためと思われます。

ヴァティカン美術館収蔵 ポリュクレイトス作タイプ 石膏像の原形 ローマンコピー 1733年発掘 (写真はWikimedia commonsより)


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