鬱病よ、こんにちは
ストレス社会の現代ではありふれた病。
そして恐ろしい病でもある鬱病。
そんな鬱病になってしまいました…
実際に自分がなってみるまでは、現実感がまるでなかった鬱病。
「話にはよく聞くけど、自分はタフだから大丈夫!!」
と、これまでは何の根拠もなく楽観的に考えていました。
楽観的に考えてしまうのは、鬱病のことを「気持ちが落ち込む病気」「体がだるくなる病気」というふんわりしたイメージでとらえていて、本当の鬱病の怖さを理解できていなかったからだと思います。
鬱病の当事者となった今、鬱病の実態とその恐ろしさについて以下に綴ります。鬱病になってしまった方、これから鬱病になるかもしれない方への助けになると信じて。
1.私が鬱病になるまで
私は2024年4月に転勤により、これまで未経験の業務の部署の中間管理職として配属されました。激務で有名な部署。しかも高難易度の新規プロジェクトが複数立ち上がっています。
最初から難しい仕事であることはわかっているので、意気込んで業務に励みます。毎日0時近くまで残業、土日も出勤は当たり前。それでもなかなか業務は進みません。上司のオーダーも厳しくなかなかOKがもらえません。毎日考え、悩み、もがき続け、自転車操業で業務を回します。
張り詰める緊張と疲労で全く気の休まらない生活が3カ月続き、気がつくと私はおかしくなってしまっていたのです。
2.鬱病の症状
ほとんど休みなしで働き続けた結果、次のような症状が現れてきました。
・めまいがする。
・足元がふわふわする。
・動悸が激しい。
・しゃべる時にろれつが回らない。
・注意力が著しく散漫になる。
・手が震えて、文字が書きづらい
これらの症状は、過去にも繁忙期には度々現れていた症状です。
ただ、今回はこれらに加え、次の症状が新たに加わりました。
①文章が頭に入ってこない
文章を何度読んでも、全容が頭に入ってきません。
具体的には、①→②→③→④という構成の文章について、①→②まで読み進めると、①の内容を忘れてしまうのです。結果として①を読み返し、また②まで読むと再び①の内容を忘れてしまう…①→②→①…の無限ループに陥ってしまうのです。
どれだけ時間をかけても①②を理解することができないので、その後の③④についても何を言っているのかさっぱりわからなくなってしまいます。
②ものが考えられない
上の①と似ているのですが、文章が読めないだけでなく、物を考えることも困難になってしまいました。
これも具体的に言うと、段階を踏んで整理していく物事を考えるのが難しくなってしまうのです。典型例がスケジュールの策定。A→B→C→Dと順序立てて作業工程を設定する仕事について、一番最初のAの作業について考えることはできても、Aを踏まえた後続作業B・C・Dを考えることがどうしてもできないのです。
①②の症状に気づいたのは、業務の切れ目で比較的手元に余裕がある日の事でした。溜まった仕事を片付けようとデスクに向かうのですが、紙やディスプレイの文字が泳ぐばかりで、何を意味しているのか分からない。これから業務の指示を出したり手順をまとめたりしなければならないのに全く頭が働かない、手も動かないという状態で完全にフリーズしてしまい、何も仕事が手につかないまま、午前が過ぎ去ってしまっていました。
「明らかに自分はおかしくなっている」
そう思い、青ざめた顔で上司に相談しました。
震える声で現在の状況を伝えます。話している間に目からは涙が噴き出し止まりません。嗚咽しながら自分の身体がコントロールできなくなっていることを感じました。
3.はじめての精神科
上司に相談した結果、私の業務を他のメンバーに振り分けることで負担を軽減してもらうことになったほか、精神科等の医療機関を受診することを薦められました。
正直「精神科」という言葉に抵抗があり、最初は受診なんて大げさじゃないかと思っていたのですが、知人に相談したところ、自分の症状はかなり危険な状態であり、すぐにでも受診すべきであると強く言われたため、受診を決意します。
こうして私は精神科を受診しました。
ちなみに精神科の診察はとても時間がかかります。精神科のある医療機関は数が限られているにも関わらず、昨今のストレス社会で患者数は増加し続けているためです。私の場合は電話した日の一週間後にようやく予約を取ることができ、朝9時からの予約だったにもかかわらず、初診の検査等も含め、診察が終了したのは12時過ぎでした。疲れた…
診察の流れは以下のとおりです。
・問診票等の記入
・採血
・ソーシャルワーカーによる面談
・医師による診察
ソーシャルワーカーはとても感じのよい方で、私の状況を親身になって聴きとって医師に伝えてくれたことが印象的です。
また、精神科の医師は患者を下に見ているのではないかという勝手な先入観を持っていたのですが、決してそんなことはありませんでした。医師の先生は、私の症状の原因や鬱病の薬の副作用についての説明を丁寧にしてくれたうえ、職場復帰のための助言もしてくれたので、とても安心し、心を落ち着かせることができました。
4.鬱病の薬
医師と相談し、二週間程度は投薬をしながら様子を見ることになりました。出勤してもよいが、残業はしないことと、できる限り有給等を使い、休むようにアドバイスを受けました。
鬱病は薬で症状を抑えることはできるが、結局は身体や心が休まらなければ治らないとのことです。そして次の受診(2週後)までに状況が改善していない場合は、1ヶ月程度の病気休暇の診断書を出すと告げられました。
頼みの綱はトリンテリックスという薬です。副作用として吐き気や胃もたれ、不眠等の症状があるため、副作用があまりにひどいようなら別の薬に変える旨、薬剤師から説明がありました。
現在一週間程度服用を続けていますが、幸いにして強い副作用は出ていません。心配していた吐き気はありませんし、胃もたれも多少といったところ。ちょっと困ったのは不眠で、床についてから4時間位すると目が覚めてしまいます。すぐに二度寝できれば問題ないのですが、眠れないと日中眠くなってしまうのが困りものです。
そして薬を飲み始めると、それまで心を支配していた不安や焦りが日に日に和らいできたように感じます。服用をはじめて一週間が経つと、段々と前の自分を取り戻せてきたような実感があり、少しずつ仕事も進めることができるようになってきました。
5.これからのこと
この記事を書いている現在は、薬を飲み始めて約一週間後、休日の日曜日です。
薬の効果なのかプラシーボなのかは不明ですが、物事を冷静に考えることができるようになり、状況は改善してきました。しかし、冷めた頭でこれからのことを考えると再び不安が込み上げてきます。
完全に復調するまでどれくらいかかるのだろう?
溜まっている仕事をどうやって片付けよう?
これからの自分のキャリアはどうなってしまうのだろう?
課題は山積みですが、今考えて解決する問題でもないし、不安を抱えているとますます回復が遅れるかもしれないので、無責任にも先送りします。
思い返すと、今までの人生、いつも自分を犠牲にして生きてきました。たいして能力もキャパもないくせに、できる人間として見られたい、ただそれだけのために他人より時間もコストも注ぎ込んで、プライベートも顧みず仕事に打ち込んできました。そのツケが鬱病です。不安や恐怖はまた来たるべき時にやってくるのだから、休日の今くらいは何もかも忘れてしまおう。
6.鬱病にならないために
最後に、鬱病にならないためのアドバイスで締めくくりたいと思います。
疲れたら休め!!!
…何を今さら当たり前のことを…と思われるかもしれませんが、今回の経験を振り返ると適切な休養を取れなかったことが鬱病を招いた要因だったと改めて感じます。
寝る時以外は仕事のことを考え続け、心身ともに緊張が解けない状態が長時間継続したことが不調の原因です。そのような状態にしてしまった背景には自分のタフさへの過信があります。
20代の頃は、今以上にがむしゃらに仕事をしていました。朝も夜も休日もなく仕事に打ち込み、ボロボロになりながらも乗り越えてきたという経験。これが私にとっての成功体験であり、もはや人格の一部を形成しています。
この経験があるから、どんなに高い壁であっても努力すれば突破することができる。自分は物語の主人公のように困難を乗り越えられるタフな存在であるとずっと信じて来ました。しかしそれは幻想だったのです。
時が経ち、私の体は衰えてきています。20代の頃のような体力はありません。そして、今課せられている困難のレベルは20代の頃とは比較にならない程に高くなっています。
自分は弱体化する一方で、敵は強くなっている。そのような現状も把握できないまま、かつてのように休息なしで戦い抜けると錯覚してしまった。自分が見えていなかったんですね。
「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格はない」(レイモンド・チャンドラー「プレイバック」(村上春樹訳)より)
今までこの言葉を座右の銘として頑張ってきましたが、今後は私なりのアレンジを加えたいと思います。
「自分をタフだと思っていると生きていけない。他人だけでなく自分にも優しくなければ生きる資格はない」
これからはもう少し自分のことを大事にしたいと思います。ここまで読んでくれた皆さんもぜひ自らを大切にしてください。
続き
https://note.com/gayagayagayama/n/n2170641becff