名作映画「ブエノスアイレス」の結末は…?
一番好きな映画と言っても過言ではないウォン・カーウァイ監督の「ブエノスアイレス」は映像だけでなく雰囲気、音楽、空気感どれをとっても僕の人生で見てよかったと言い切れるほど好きな映画です。
そんな「ブエノスアイレス」について僕なりに思ったことや結末の意味を考えてみました。
今回はネタバレを含む記事です。
結末の考察
最終的に離れ離れになるファイと、ウィン。
ウィンはアルゼンチンに残り、ファイはアルゼンチンから離れ香港に戻る前に台北で過ごすシーンで最後を終えます。
ラストシーンではそんな台北の町でチャンの実家が営む屋台を訪れる。
そこでファイはチャンの写真を一枚盗む。「もし会おうと思えば、どこでだって会うことができる」とファイは確信し、電車に乗るファイが柔らかい笑顔を浮かべてエンドロールを迎える。
一見すると全然意味がわかりません。
アルゼンチンを出る前にウィンのパスポートを盗んで返さなかったファイはウィンにパスポートを返したのか?
僕はファイがパスポートをウィンに返さず香港に帰国してしまったと思います。
なぜなら映画には無駄なシーンというのはないです。
それは劇中に出てくる1シーンから読み取れます。精肉工場で働くファイが水で精肉の血を掃除しているとき、ホースで何度も水で血を2つに割っても、何度も血が同じところでまざりあってる描写があります。
これは二人の関係を表しています。また、ファイが一人で船に乗ってるシーンでも船は水の上でぐるぐると回っているような描写があります。
水の流れに身を任せるとファイはぐるぐると自分の意志とは違ってコントロールできなくなってしまうという表現でしょう。
つまり、この「ブエノスアイレス」では二人の関係性が切れない。英語のタイトルでもあるHappy Togetherなのです。
「もし会おうと思えば、どこでだって会うことができる」とファイが言ったように、ファイは香港に帰ったがまたウィンに会いに行くんでしょう。
たとえそれがファイが元同僚のチェンに会いに行ったあとだとしても、ファイはまたウィンを思い出し、ウィンの元に戻るのです。
ウィンもまた、ファイから離れることはできません。恋は盲目なんです。
ウィンとファイは幸せになれるのか
幸せになるのではなく、二人はずっと幸せでした。僕はそう思います。
なぜなら、幸せって途切れながらも続いていくようなものじゃないですか?
ずっと平坦に続いているとそれは人が幸せだと思わず、平凡だと思ってしまいませんか?
日本に生きていて、戦争もない!毎日飢餓で苦しまない!幸せだ!!と思う人はほとんどいないですよね。
実際には幸せなのに、それは平凡になります。
一方で恋愛では、喧嘩したり、悩んだり、苦しんだりすることで、たまにある愛を感じる瞬間に幸せと感じます。
それは平凡ではなく途切れている中にあるからこそ、幸せと思うのでしょう。
だから、この映画のファイとウィンは幸せがずっと続いているのでしょう。
一見するとウィンが浮気性でだめ!と思いがちですが…
浮気をするウィン。すぐにカッとなってしまうファイ。
浮気をするのに嫉妬深いウィン。独占欲の強いファイ。
どっちもどっちなんです。二人でいれば幸せなのに二人が愛し合うには身を削りあうことが必要。
たとえどれだけ離れようが、なにがあろうが二人はまたアルゼンチンではなくても香港でなくても世界中どこでも会えるのです。
それにファイが漸く気付いたのが映画のラストシーンでしょう。
共感する部分が多い映画
実は僕も何度も付き合っては別れ、付き合っては別れ、という人がいました。
人生でその人と一番恋愛したと思っていますし、今でもなんとなく途切れたような気はしていません。
お互いに浮気もして、何度も離れ離れになったし、喧嘩もしたし、それでいてまたいつか会えるような気がしているような感じ。
実際に別れた後、会う約束なんて一度もしたことないのにたまたま街で会ったり、海外に住んでいるはずなのにたまたま旅行先で会ったり。
切っても切れないような存在です。それが恋愛なのかもしれないです。
僕にとってはこの映画のように奔放なわりに相手に嫉妬したり、束縛したくなったり、喧嘩したり、激しく愛しあったり、そういう相手じゃないと恋愛じゃないなって思うんです。
もう友達みたいだから…、同棲してるから一応付き合ってる。そんなゲイがたくさんいますが、僕からするとそれはもう恋愛じゃなくてただの友達。
時間の無駄、もっと人生で熱くなれる相手がいるのに諦めてるんだな。とそう感じちゃうんですよね。
僕が今恋愛していないのも、心のどこかで「まあ会おうと思えばまたあいつとどこかで会えるだろうし」そう思っているのかもしれないです。
お互いが会いたいって思えば偶然会えたり、連絡が取れたりするもんです。それが不思議だけどHappy Togetherなんだろうなって思います。