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スペシャルティーコーヒーのバイブルから、今と未来を考える。BRUTUSのコーヒー特集!
昨日、とうとう出ました!
BRUTUSのコーヒー特集です!!
ぶっちゃけ、業界人にとって、この雑誌に自分が載るか載らないかは
知名度の指標であり
次の若者をコーヒー業界へと誘う、アビスの大穴のような
そんな魅力を持つBRUTUSのコーヒー特集です。
前回のコーヒー特集は12年前。
僕はその改訂版を持っていて、その雑誌を片手に
東京のカフェを巡った記憶があります。
当時のサードウェーブコーヒー好きや
野心あふれる若者にとって
BRUTUSはバイブルだったのです。
ドイツでも読めないものか・・・と思っていたのですが
Amazon Kindle Unlimitedに入っていれば
まさかの無料購読可能!!
さいこ〜!!
ということで、読んでみました。
いや〜、、、本当にすごい。
離職したのが4ヶ月前とすでに古いとはいえ、
コーヒー業界に身を置いていたものから言わせて貰えば
こんなにも最新で、業界内のことを見える化している雑誌は
やっぱりBRUTUSしかないような気がします。
そして、だからこそ、昔読んだBRUTUSの思い出と比べて
10年を超える時は、日本のコーヒーカルチャーを
大きく変えていったんだなと、そう思うんです。
ネタバレは無しに、個人的に読んで思ったことを、本当に個人的な知見から語ります。
”初めて飲んだコーヒーが、スペシャルティーコーヒー”という人も当たり前。
まず思うこと。HPの雑誌紹介に載っている通り。
この一言で、時代が変わったなと、そう思うことができる。
![](https://assets.st-note.com/img/1725307605-ckYL2mvSQ4sPZiwD9zU0pJXg.png?width=1200)
僕はギリギリ当たり前ではない人間の一人だ。
だが大人になってからのほとんどの時間をスペシャルティーコーヒーと過ごしている。
今ならありきたりなチェーン店に行くのが嫌で
「ちょっと小洒落れたカフェでインスタとって友達と時間を過ごそう」
そう思う若者が、ふらっと寄るカフェは、もはやスペシャルティーコーヒーであることが当たり前の環境。
というか、チェーン店ですらスペシャルティー。
ブルーボトルとか。
それは、都市圏だけでなく、地方でも見つけることは容易な世の中となった。
そして、何よりもスペシャルティーグレードとほぼ相違ないほどの
ハイクオリティーな豆が、コンビニで飲めたりする時代。
実際、ローソンなどはゲイシャ種の豆でコーヒーを販売していた時があるくらい。
日本では、「スペシャルティー」はもはやスタンダードで
だからこそ、このBRUTUSは今回の特集で
「もっとお好みの一杯を見つける」ことをテーマにしているのだと思う。
海外から日本へ、日本から海外へ。
前回の特集では、海外からやってきた
「スペシャルティーコーヒー・サードウェーブ」
という文化を特集していて
その波に乗っている人たちが紹介されていた。
どちらかというと、彼らはアンバサダーのようだった。
「僕たちが経験した海外の感動を、日本に!」
こんな感じのイメージだった。
今回は、180度変わった。
今回のBRUTUSは、日本で醸成されたスペシャルティーコーヒーのカルチャーを
これでもかと正面に出している。
ちょっとだけ
「これ海外で翻訳して出版する気があるの?」
と思ったほどだ。
いや、多分そのまま英語で世界中に発刊しても面白いと思う。
この表現を嫌がる人はいるだろう。でもラーメンに似てる。
元々は中国の料理なのに極まった結果、観光資源になったあの感じ。
世界でも日本食レストランにRAMENが出てくるあの感じだ。
多分BRUTUSは、日本のカフェスタイルが海外に進出して
広がっていく、いわゆる今までのオーストラリアやノルウェーのようになっていくのだろうと予言しているのだと思う。
個人的には、OMAKASEとかで特集されているフルコース型のコーヒー体験カフェが広がるんだろうなとは思うが。
それ以外はビジネスとして模倣するのにかなり難易度が高いのが日本のカフェの特徴だと思う。
注目はコーヒーから人へ。バリスタへ。
コーヒー自体の価値やポテンシャルには、価値がなくなりつつあるのだと思う。
なぜなら高品質が当たり前だから。
だからこそ、人やバリスタに注目が集まる。
スペシャルティーコーヒーを扱うバリスタは、
コーヒーの産地がいかに素晴らしいかを話すべきではなく、
いかにそのコーヒーを扱う人たちが素晴らしいのかを
プレゼンする時代が来ていると思う。
それは、農園の人であったり、焙煎を行うロースターであったり、そもそもそれを抽出する「自分」であったり。
ただグルメなコーヒーには意味がない。
僕は営業時代、嗜好品として日本の中では
究極のコーヒーを販売するお客様を持っていたが
すごいのは、コーヒーではなく、
農園主と本当の意味でダイレクトにつながっており、
冗談抜きで信じられないロットを買える当人のコネクションにある。
そして、その農園と農園主とコーヒーの情報に関してストレスなく魅力を伝え、
お客様を酔わせるバリスタとしての圧倒的な実力を兼ね備えている。
彼は信じられないくらい接客のプロだし、
ぶっちゃけあんなにコーヒーにドブ漬けになっていなければ、
ホストのような究極の接客仕事で億は平気で稼げるくらい人を魅了すると思う。
話が逸れたが、
確かに、「美味い」コーヒーは存在している。
でも、それはコーヒー豆が単純に「美味い」から、
どこで飲んだって「美味いか。」
実際はそうではない。
そのコーヒーを理解した上で、あらゆる条件に合わせて
焙煎と抽出を行う加工者たちによって、美味しさは担保されているからだ。
僕は、世の中のバリスタ・ロースターには二種類の考え方に分けられると思っている。
1つは、コーヒーという農産物のクオリティを最大限引き出すという信念のもとコーヒーを提供している人
もう1つは、自分が持っている美味しいコーヒー像に照らし合わせて、コーヒーを自分好みに提供するという人だ。
10年前は、この前者の方のロジックが多かった。
スペシャルティーという概念ではこちらの方が正しいと思われていたからだ。
コーヒーというプロダクトのポテンシャルを全て引き出すという売り文句が、人々に響いたから。
後者はもっと古い考え方だったが、僕は今後10年はこちらの考え方の人が生き残りやすくなると思う。前者の道は、本当に茨の道になった。
本当にコーヒーのポテンシャルを引き出すという言い方は、バリスタチャンピオンなどの相当な権威性がないと今では通用しないし、
権威性がないなら本当に10人中9人は美味いと言わせるほどの実力が必要だと思う。
ただそれを実現させるなら、産地レベルではない、農園主レベルのコネクションや理解を必要とすると考えている。
多種多様な農園を扱って10人中9人を上手いなんて言わせることは
一個人事業主レベルでは実現できないと思う。
それくらい、コーヒーは「プロにとって難しく」なった。
もちろん、後者も茨の道であることは間違いない。ただ自分のストーリーや軸さえしっかりしておけばファンはできる。
それこそ、「もっと美味しい一杯を見つけ出す」判断材料として適していると思う。
だからこそ、バリスタは「自分対顧客」の接客業であることを
絶対に忘れてはいけないし、
バリスタは農園の代表ではないことを理解しないといけない。
「今の私を見て、あなただからできる、あなたのコーヒー表現を見せてください。」
これを言われた時に即座に具体化できるかできないか、考えているかいないか。
これによって生き残るバリスタと技術の進歩によって淘汰されるバリスタと分かれていくと思う。
「どうやったら美味しいコーヒーを飲めるか?」ではなく、「どう美味しいコーヒーを楽しむか?」
スペシャルティーコーヒーが美味しいことは、前提だ。
だってスペシャルティーコーヒーは美味いんだから。
現代では不味いコーヒーを見つける方が難しくなってきた。
缶コーヒーですら、めちゃくちゃうまくなった。
不味いのは、中途半端な覚悟で参入してきてしまったプロだけ。
そうではなく、
「どうやったら美味しいコーヒーをもっと美味しくできるんだ?」
を自宅で表現ができるようになった時代だとBRUTUSを読んで感じた。
「趣味はコーヒー巡りです」
「趣味はコーヒーです」
この違いがわかるだろうか?
昔はここに今ほどの差はなかった。
「コーヒー巡り」とは、「カフェが好きな人」の総称。
「コーヒー」だけだと、プライベートの領域でガチでコーヒーを極めようとする、
仙人みたいな奴らのことだ。
今では、業務用マシンと同等レベル(家で数杯出すだけなら)の
家庭用マシンや器具などが信じられないスピードでアップデートされていき
しまいには業務用と変わらない自由度を持った
高機能な小型焙煎機まで手軽に手に入る時代。
それと同時に情報も非常にアップデートが早く、
かつテッペンの理論と個人が直結する時代に突入している。
よほどの研究などでない限りは、大体の情報が手に入るし
世界大会のプレゼンは中継されるため、感度の高いオタクどもは
日本の販売代理店よりも早く最新理論や器具を海外から
取り入れて実現できてしまう。
だから、知識でも実力でもお店に優っている個人なんて
いくらでもいる時代になった。
いくらでも、家庭でコーヒーを追求できるようになってしまった。
そして、個人事業主がお店でできるコーヒーの自己表現は
すでに個人の趣味に敵わなくなる恐れすらあるのが現代なのだ。
さらに彼らはビジネス性を求めなくとも良いので、
本当に個人領域で究極のコーヒーを人知れず飲んでいたりする。
こういった「ノーネームバリスタ・ノーネームロースター」が
SNSでカフェをジャッジをする時代なのだ。
だからこそ、お店でもっとも貴重な商品はプロダクトである「コーヒー」よりも「人」になったのだと、そう思うのだ。
これからは「日本人バリスタという価値」で海外で独立し、カフェをオープンするようになる。
個人的には、BRUTUSはこのことを暗に預言しているのではないかなと思う。
スペシャルティーコーヒーが盛り上がった時代は、海外(欧米)の経験をカフェという領域にアウトプットするためのツールだったようにも思う。
※欧米という言葉には北欧やその他白人系国家も含んでいると思ってください。
「海外が素晴らしいところで、海外で当たり前のコーヒーカルチャーを、
日本で広げていきたい。」
これが王道のストーリーだった。
アメリカ・ノルウェー・オーストラリア・ニュージーランド・デンマークなど。
スペシャルティーコーヒーに魅了された若者は、海外を経験し、日本でお店をオープンすることがサクセスストーリーだった。
日本ではまだ全く開拓されていない浅煎りで、酸味を楽しむ海外の常識を自分がアンバサダーになって世の中のまだ知らぬ未開の日本人に伝えていく。
刺激的だった海外の体験を日本という未開拓の土壌で表現していたのだ。
でも、今は違う。
スペシャルティーコーヒーだけで考えれば、
日本という国はすでに非常にハイレベルなところまできて、
特にハンドドリップの文化はもはや非効率なくせに究極にまでこだわりきっている。
「日本は海外に比べてまだまだだ。」
そういう人たちは本当に上層部しか見ていないガチのトップ層か
海外を経験していなくて情報を鵜呑みにしているか、
そのストーリーで商売をまだしたいと思っている人だと思う。
もう、コーヒーと海外(欧米系)のカルチャーをつなげて商売をすることは
時代が受け付けなくなってきているのが残念ながら現状だと思う。
でも、それは当たり前の結果だとは思う。
なぜか。それは日本人は全員が等しく顧客満足を考え
クオリティを、サービスを追求してきたからだ。
もはや海外のカフェで日本のスペシャルティーコーヒーの教師たりえる
ところは圧倒的に少なくて
日本のカフェの方から学ぶところが多くなってきていると思えるからだ。
それは、OMAKASEにおけるサービス体験の発明においてもそうだし
Paragonをはじめとする、極端なドリップ文化においても同様だ。
ただ、これらは海外のカフェビジネスでは考えられないほど「非効率的」であり
海外には真似がしづらい、「サービス」という根幹があってこそできる商材である。
それは本来、海外では最も「価値の高い商品」であることを、日本人は気づいていない。
「板前が、目の前でお客様の様子を見て寿司を握り、旬なネタの説明をしながら提供する」
このサービスを日本の雇われ板前がすると、給料が年間300万でも、
アメリカにいけば1000万円でリクルートされるということを聞いたことがある。
※物価などは考慮していません。ごめんなさい。
きっと、バリスタにおいても、同様の現象が起こっていく。
日本のカフェは、海外で模倣されるようになり、
日本人バリスタが海外の企業に海外で高給取りとして雇われていく。
そして本当の日本人が海外でカフェを開き、
「おもてなし文化」の理念を発揮して成功する。
自分が思い描くこれからの理想的なスタイルではないものの、
すでに海外で成功している日本人カフェ経営者もいる。
いつか業界で「日本人バリスタであることの価値」が爆発して、
海外で独立する日本人が増える。そう思う。
なぜか。それはコーヒーの価値を最大限に高めることに繋がり、
コーヒー業界で生き残る術になるからだ。
間違いなく言えるのは、コーヒーマシンの技術進歩は圧倒的で
人の「手」は本当にいらなくなる時代が来る。
そして、
本当に身近で「信じられないほど美味しい」コーヒーが
人手なしに飲めるようになる。
人が淹れるコーヒーは、本当に少なくなるだろう。
いわゆる「雇われバリスタ」は消え、
「道楽でバリスタをしている経営者」が
コーヒーを淹れる世の中になっていくだろう。
それには、ビジネス性を伴わない、本当の道楽でただの趣味と一緒。
それは10年前のペースで考えていれば、現在30歳の自分が定年退職するまであり得なかっただろうが、加速度的にITやコーヒーの再現性の究明が進んでいる以上
次のBRUTUSで掲載されているカフェ特集には「バリスタ」ではなくて
「ロボット」を採用している経営者が取り上げられた、
さながら経営指南本のような体裁を持っているかも知れない。
だからこそ、人なのであり、ストーリーがあり、それらを表現するサービスには
非常に大きなポテンシャルがあり、価値がある。
サービスに、もっと価値を与えて、ビジネスとして体系化するべきなのだ。
そしてそれは、広める場所として日本ではなく、海外であるべきだとも思う。
次の特集も10年後かも知れないが、
その時に日本人バリスタが世界で輝いている時代でありますように。
BRUTUSは、そんな未来を想像しているのかも知れない。
※追伸
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ざっくばらんに、わかりづらい長文になってしまい申し訳ございません。
ただ、BRUTUS、本当におすすめです!
どんなコーヒーの本よりも、この雑誌が一番業界関係者の思考に近い!
少しでもカフェ開業を考えてらっしゃるのであれば、一読していただくことを
強くお勧めします。できれば雑誌で持って保管した方がいいです。
数冊は買っておいて、開業したときにカフェで読めるようにおいて
インスタでアップしておけば
それだけでオタクは集客できるポテンシャルのある特集です。
マジで勿体無いので買っておいて損はないです!