無条件に受け入れてくれる安心感
誰にも幼い頃にはお気に入りのおもちゃがあったと思いますが、私は新生児くらいの大きさの抱き人形が特にお気に入りでした。
寝かすと瞼が閉じ、起こすと開く。
胸のボタンを押すと、いくつかのセリフがスピーカーから流れてくるようになっていました。
スピーカーはしばらくして壊れてしまい、お人形とのおしゃべりはできなくなりましたが、遊ぶ時も夜寝る時も一緒。
服がボロボロになった時は、母が新生児の服を買ってきて着せてくれました。
顔はプラスチックでできていて、手足はソフビ。胴体は布製で中身は綿が詰められていたので、抱き心地が柔らかく抜群でした。
小学生も高学年になると人形遊びからは卒業しましたが、捨てるには忍びなく、結婚する時までは自宅にありました。その後さすがに母が処分したようでしたが、人形供養をしたかどうかは定かではありません💦
この絵本ではリサが、コールテンくんの服のボタンが取れていて欠陥があっても、一目惚れし「この子じゃなくちゃダメ」と、お小遣い全部を使って迎え入れたように、おもちゃと人間との間にも心の交流があるのかもしれません。
私の抱き人形のスピーカーが壊れて、おしゃべりできなくなっても、くまのコールテンくんのボタンが取れていて欠陥品だったとしても、そこには何の問題もありません。
たとえ欠陥があっても「好き」という気持ちが消えることはありません。
むしろ欠点があった方が愛おしく、大切な存在に思えてきます。
それは自分にも欠点があり弱い部分があって、共感できるからかもしれません。
作者は最後にくまのコールテンくんに、こんなセリフを言わせています。
「ともだちって、きっと きみのようなひとのことだね。」
「ぼく、ずっとまえから、ともだちが ほしいなあって、おもってたんだ。」
この絵本は、無条件に自分を受け入れてくれる安心感と、傷ついている相手を思いやる優しさを疑似体験させてくれる、世界中で愛されるロングセラー絵本です。