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ネタバレ映画記録 #1ミッドナイトスワン

…を、やろうかなと思います。
映画、正直ちゃんと見始めたのは昨年からです。それまでは年間映画館に行く回数は芝居観に行くよりも少ないくらいでした。きっかけは、好きになった俳優さんがそれはそれは映画好きだったから、というちょろい理由。ちょろいけど今となってはものすごく感謝しています。

で、第一回は「ミッドナイトスワン」について。昨日発表された2020年日本アカデミー賞に9部門ノミネートされました。

優秀作品賞
優秀監督賞  内田英治 監督
優秀脚本賞  内田英治 監督
優秀主演男優賞 草彅剛さん
新人俳優賞  服部樹咲さん  
優秀撮影賞
優秀照明賞
優秀美術賞
優秀録音賞

この作品、9月から12月にかけて6回見ました。もともとは推しであるところの田中俊介さんが主人公凪沙(草彅さん)の同僚であり友人である瑞貴という役で出ていたから、なのですが、それだけではない、作品の力を浴びたくて通ってた気がします。

「ネタバレ」なのでいろいろ書いていきます。

まず、ストーリーですが、トランスジェンダーの凪沙は新宿のショーパブで踊り子として働いています。冒頭踊るのが「四羽の白鳥」。…ワタクシむかしバレエを習ってましたが、唯一一般的な振り付けで踊れる曲(だった)なので微妙にテンション上がりました。お酒の席で出会うのが白石晃士監督の「恋のクレイジーロード」や「恋するけだもの」で、田中俊介さんと共演なさっている細川佳央さんだったのはちょっと「おおっ」と思いました。
そんな凪沙に実家広島のお母さん(根岸季衣さん)から電話があって、イトコにあたる早織(水川あさみさん)が中学生になる娘一果ちゃん(服部樹咲さん)を虐待、育児放棄するというので東京で預かれないかということになります。凪沙は電話では普通に男ですし、一果ちゃんも「男性」の写真を手に上京してくるので、ふたりの出会いはなかなかの違和感です。見ている側も「これいろいろ大丈夫なのか?」と心配になるくらい(実際にはお母さんのあずかり知らない要素で大丈夫なのだけど、だからこそ、普通の男性に年頃の娘預けていいのかという疑問も残る…)。
一果ちゃんは「不良」て感じではないですが、無言の圧が強くて一筋縄ではいかないまっすぐな感じが素晴らしいです。新人賞をいくつもノミネート&受賞しているのも頷けます。
そして、一果ちゃんはここで「バレエ」に出会います。小説版では広島時代にすでに出会っていると明示されていますが、映画ではそこらへんはさほど詳しくありません。が、熱心で心広い先生(真飛聖さん)のおかげもあって、あっというまに上達していきます。「踊ること」が荒んだ彼女の救いとなることがそれは気持ちよく描かれています。なにか「譲れない大事なもの」をつかんだ人は強いな、と、ラストまで全編心打たれるのです。

と、端折ってしまいましたが、最初にこの作品を見た日にはとにかく「踊りのパワー」に圧倒されました。こんな、新人俳優がここまで本当に感動させるような踊りを披露出来る、ってすごいな、と。そして対峙する凪沙さんの母性。「母」と呼んでいいのか、性別を超越した「守る側」の強さというか。こっちは「超越した」と思って見ているのに、凪沙自身が「母」という女性性にこだわって、そこから破滅へ転がり落ちてしまうことの残念さも身に沁みました。

あとは、一果の友人のりんちゃん(上野鈴華さん)も強烈な存在感を残します。裕福な家庭に育ちながら母親(佐藤江梨子さん)の支配にからめとられて身動き取れない、好きなバレエさえ続けることが出来なくなってしまうその行く先。何度見ても息をのむシーンです。

そして推し田中さん演じる瑞貴ちゃん。彼女は小説版でもうひとつ見せ場があったのですが、本作ではそこまで描かれていませんでした。それが最大の不満かもしれません。すみません。免許証に書かれた名前を「そんな人知りません!わたしは瑞貴です」と言い切るせつなさにはぐっときました。

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「母」という概念は結構昔から自分にとって主要なテーマだったりもするのですが…ここに出てくる母は「一果の母」であるところの早織、凪沙の母、りんの母、そして凪沙、と考えるとどれもわたしにとっては納得いかない存在で、「母」って何だろうとまた考えてしまう要素で。
↑の写真にもありますが、「母になりたい」と思うことは=女性である必要はあるのかなあとか。子供が親に求める「母性」は実は性別は関係ないのかもしれんなとか。もちろん実際に「産む」段階は別としてその後の話ですが。これだけジェンダーフリーな世の中になってきたなら、いちばんに解体されるのが「父」「母」という役割かもしれませんね。そもそも子供にとって、母が女性であること、って最も反発する、必要ない要因な気もするし。

そう考えると凪沙は「母」ではなく、やっぱり「女」になりたかったんだろうなあ。「母」には、もう、なれていたのに。

だとしたら、あの、舞台でつぶやいた「お母さん…」の台詞はどうとらえればいいのか悩むところです。あのとき一果は誰を求めていたんだろうか。

答えってあるんだろうか。

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そんな感じで「ネタバレ」映画記録の第一回めでしたが…これって映画見た人にはうんうんとわかってもらえると思いますが見てない人には何も伝わらないんじゃないかという恐怖もありますね。
そう考えると映画評する人ってすごいな。尊敬。

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追記。
今日1月28日は田中俊介さんのお誕生日でした!おめでとうございます!

と書いてたら29日になってるけど。

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