花木裕介(挫折を味わったミドル世代の係長)

一般社団法人がんチャレンジャー代表理事/産業カウンセラー/著述家  2017年(38歳…

花木裕介(挫折を味わったミドル世代の係長)

一般社団法人がんチャレンジャー代表理事/産業カウンセラー/著述家  2017年(38歳)、ヘルスケア企業で管理職を目指すさなか、咽頭がん告知を受け、治療を開始。翌9月より復職。社内でのキャリアアップが遠のく中、新たな生きがいを見い出すべく、2019年社団法人を設立。

最近の記事

【挫折学】最終講義

振り返ると、私は学生時代から、友だちや周囲との間に、無意識に勝ち負け感情を持っていました。 「この点は俺のほうが優れている」 「この部分は勝てないけど、でも俺はそこで勝負してないから気にしなくていい」 要は、自分のプライドを守るため、さまざまな解釈をして、「負け」を認めようとしなかったわけですね。そして、負けそうになると、その相手そのものからも距離を置いてしまう。そんな程度の人間だったわけです。 でも、事実として、昔から続けていたサッカーでも、一時はそこそこの偏差値を

    • 【挫折学】講義㉕「挫折経験と上手に付き合っていくために7 ~筆者の経験から言えること~」

      挫折がその後の人生に影を落とす可能性があることは、ここまで触れた通りですが、とはいえ、その影をずっと引きずりながら生きていくのは正直きついものがありますよね。できることなら、そんな自分を抱えつつも、日々自分らしく生きたいとみんなが思っているのではないでしょうか。 では、挫折を抱えながらも自分らしく生きていくにはどうしたらいいのでしょうか。 もちろん明確な正解はありませんし、生き方は人それぞれだと思います。 ですから、ここから書いていくことはあくまでもヒントです。何か皆様の

      • 【挫折学】講義㉔「挫折経験と上手に付き合っていくために6 ~何かに『なる』ことは難しくても、何かを『する』のは、いつからでも始められる~」

        あともう一つ、私たちの挫折には、「○○になりたいけど、なれなかった」というものが少なくないように思います。 つまり、何者かを目指してそれになれなかったということですが、それはたとえば、プロスポーツ選手であったり、難関試験を突破しなければならない弁護士や司法書士、税理士だったり、はたまた私のように社内での管理職だったりするかもしれません。 しかし、こうした目標は、必ずしも望めば叶うものではありませんし、自分の努力だけではどうしようもない部分があります。ライバルもいれば、人か

        • 【挫折学】講義㉓「挫折経験と上手に付き合っていくために5 ~時に傷ついてもいい~」

          あと私が、挫折と上手に付き合う方法として考えているのは、「時に傷ついてもいい」ということを頭に入れていることです。 挫折経験があると、「そのことを思い出したくない」であるとか、「そのことで刺激を受けたくない」といった防衛反応のようなものが、自分の中で起こることがあるかもしれません。 例えば、夢だった全国大会出場が叶わなかった方であれば、その夢舞台で活躍している方を見ることは刺激になってしまいますし、自分が落ち込む要因にもなってしまうので、なるべくそういうものから遠ざかるで

          【挫折学】講義㉒「挫折経験と上手に付き合っていくために4 ~挫折から何を学べるか~」

          それ以外で言うと、挫折から何が学べるかというような観点で見てみるのもいいかもしれません。ポジティブにということではないのですが、「その経験は自分に何を言おうとしているのか」であるとか、「どういうことを伝えようとしているのか」というふうに考えてみるだけでも、悔しさ以外の感情が生まれてくるかもしれません。 私自身、がん罹患をきっかけに挫折を経験したときも、ここから何が学べるのかと考えたことで、「これはもしかしたら自分にしか伝えられないことを伝えるようにと神様が言ってくれているの

          【挫折学】講義㉒「挫折経験と上手に付き合っていくために4 ~挫折から何を学べるか~」

          【挫折学】講義㉑「挫折経験と上手に付き合っていくために3 ~挫折経験を誰かに聞いてもらう~」

          その他に、私自身心がけているのは、このブログを書いていること自体もそうなのですが、自分の挫折経験を隠さないで、極力伝えられる人にはオープンに伝えたり、また悩みを聞いてもらえる人には話したり、ということをしています。 実際、私は勤務先の福利厚生で使える、「メンタルカウンセリング」の制度を使って、定期的にカウンセラーに話を聞いてもらっています。 自分だけで抱えれば抱えるほど、それだけ自分の中でそのことが大きくなってしまうものです。一方で人に伝えることで幾分それが軽くなるという

          【挫折学】講義㉑「挫折経験と上手に付き合っていくために3 ~挫折経験を誰かに聞いてもらう~」

          【挫折学】講義⑳「挫折経験と上手に付き合っていくために2 ~自分を認める・ゆっくりと付き合っていく~」

          次に、「自分を認める」という意識も大切だと思います。 「結果は出なかったけれども、そのプロセスの中であんなつらいことがあったけど乗り越えたじゃないか」であったり、「こんなことがあったけれども、自分は逃げずに戦ってきたじゃないか」など、そういったプロセスを認めてあげてほしいのです。 これまで自分を律してきた方であればあるほど、自分を認めることは簡単ではないかもしれません。「まだこの程度の自分にOKを出しちゃいけないんじゃないか」と思ってしまうかもしれません。 しかし、結局

          【挫折学】講義⑳「挫折経験と上手に付き合っていくために2 ~自分を認める・ゆっくりと付き合っていく~」

          【挫折学】講義⑲「挫折経験と上手に付き合っていくために1 ~他人と比べない~」

          ここからは、私が実際に取り組んでいる挫折との上手な付き合い方について、少しご紹介したいと思います。 これはもちろん個人差もあるので、誰もが同じように効果があるものではないかもしれませんが、あくまでもヒントとしてご参考いただければと思います。 まず、過去の挫折経験がどうしても付きまとってくる場合、一つは「他人と比べない」ということです。「当時は自分と同じぐらいのレベルだった彼が今はこんなに先に行っている」とか、「自分のほうが上だと思っていたけれども、今あいつは手の届かない存

          【挫折学】講義⑲「挫折経験と上手に付き合っていくために1 ~他人と比べない~」

          【挫折学】講義⑱「ある元高校球児の話」

          ここで一つ、私の知人の話をさせてください。子どもの友人のパパ、いわゆるパパ友です。 彼は学生時代、かつて甲子園出場まであと一歩に迫ったような強豪高校で野球をしていましたが、努力の甲斐無く、レギュラーに定着することはできませんでした。中学まではそれなりに自分の力に自信を持っていたものの、レギュラーたちの実力はそれを遥かに上回っていました。 しかし、野球で上に上がることを諦めきれなかった彼は、その後、大学でも野球を続けました。 大学卒業を控え、プロからも企業チームからも声が

          【挫折学】講義⑱「ある元高校球児の話」

          【挫折学】講義⑰「『やりきった』と思ったら、自分に合格点を出す」

          多くの人は、挫折経験を「乗り越えなければいけない」というふうに思っているかもしれません。しかし、私は、挫折経験は「必ずしも乗り越えなくてもいい」と考えています。 「その挫折を乗り越えなければ」と思えば思うほど、よりつらい状況に追い込まれてしまうこともあるのではないでしょうか。その経験を糧にするためには次に絶対結果を出さなければいけないということで自分をどんどん追い込んでしまう、そういうケースもあるような気がします。 しかし、そういった経験を、無理に結果で乗り越えようとして

          【挫折学】講義⑰「『やりきった』と思ったら、自分に合格点を出す」

          【挫折学】コラム⑥「がん罹患経験者としての視点から ~職場で全力を出せない『サバイバートラック』の罠~」

          以前も書いた通り、私はがん罹患後、業務をセーブせざるを得ず、職場ではまったく全力を出し切ることができませんでした。それによって、キャリアアップの機会なども遠ざかってしまいました。勤務先の配慮とはいえ、職場にいる以上、ベストを尽くし、自分自身も成長していきたいと思っていた私にとって、それはもう苦しい日々でした。   現在、一般社団法人がんチャレンジャーでは、このような事象を「サバイバートラック」と命名し、普及に取り組んでいます。 これは、「マミートラック」という言葉をもじった

          【挫折学】コラム⑥「がん罹患経験者としての視点から ~職場で全力を出せない『サバイバートラック』の罠~」

          【挫折学】講義⑯「未練が残っているのなら、もう一度頑張ってみる」

          一つ例を挙げてみましょう。よくある、その人のものの捉え方を探る例として、コップに水が半分残っている話があります。コップの水が「半分しかない」と考えるか、「まだ半分もある」と考えるかというあれです。 少なくない方が、「半分しかない」と足りないもののほうにフォーカスする中、「まだ半分もある」と今あるものにフォーカスする捉え方が推奨されるわけですね。 でもどうでしょう。誰しも、できることならポジティブな捉え方をしたいのではないでしょうか。そして、それをしたくてもできないから、も

          【挫折学】講義⑯「未練が残っているのなら、もう一度頑張ってみる」

          【挫折学】講義⑮「大切なのは納得感」

          ここまでいろいろと書いてきましたが、私が大切だと思うのは、その目標や夢、希望に対して、「自分が納得するまでやりきったかどうか」ということです。 例えば、何か目指していたものがあったとして、それに対して、うまくいかなかったときのために言い訳を残しておきたいという思いは、人間無意識のうちに抱いてしまいがちです。 これは前の講義でも書きました。しかし、そこに対して100%、または100%に近い形でやりきったと、力を出し切ったと思えば、たとえ望む結果が出なかったとしても、将来その

          【挫折学】講義⑮「大切なのは納得感」

          【挫折学】講義⑭「『挫折』の捉え方は十人十色」

          ここまで書いているように、挫折には大きく3パターンあります。 ①コロナなどの環境やケガなどによりふいに機会を奪われるような、自分ではコントロールできなかった挫折 ②大会などで敗れたり、レギュラーに選ばれなかったような、最後まで努力はしたが、自分ではコントロールできなかった挫折 ③自分から途中で諦めてしまうような、自分でコントロールできた挫折 大きく分けると、①②のような外的要因からの挫折と、③のような内的要因からの挫折ということになるでしょうか。 外的要因であれば相手や

          【挫折学】講義⑭「『挫折』の捉え方は十人十色」

          【挫折学】コラム⑤「がん罹患経験者としての視点から ~『やるだけやった』という満足感が得られにくい~」

          「コントロールできないもの」に振り回されがちなのはがん罹患経験者においても同様です。特に、病気罹患そのものも自分でコントロールできるものではないため、一見、「これは仕方がない」と割り切れるように思えます。 しかし、健常者の方と異なるのは、「やるだけやった」という満足感が得られにくいというところです。病気罹患がふいに訪れるため、自分でコントロールできていた範囲まで、病気によって侵されてしまうという違いがあります。 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、そもそも

          【挫折学】コラム⑤「がん罹患経験者としての視点から ~『やるだけやった』という満足感が得られにくい~」

          【挫折学】講義⑬「『コントロールできない』部分は、いつまで経っても、『コントロールできない』」

          特に、組織におけるポジショニングや、スポーツであればレギュラー争いといったところは、最終的にはリーダーや監督といった方々が決めていくものなので、自分が望んだからといって必ずしも手に入るものではありません。 どうしても社会的な繋がりや全体バランスなどが関係してくるため、単純な実力だけでは判断されないこともありますし、自分の努力だけではどうにもならないこともあります。 そこを「コントロールできないもの」と割り切ることができればいいものの、当事者としてはそこまで割り切れないこと

          【挫折学】講義⑬「『コントロールできない』部分は、いつまで経っても、『コントロールできない』」