英語を習慣に取り入れてみる

 母校の英語教員になるため勉学に励んでいた学生時代、英字新聞を読むのを習慣づけたいという淡い野望があった。あまりに淡過ぎたために立ち消えとなってしまったけれど、英語力の向上だけでなく欧米で起こっている出来事にアンテナを張ることにも繋がるので、もし習慣をものにできていたらまた少し世界の見方が変わっていたかもしれない。とはいえ本音を言えば「なんかカッコいいからしてみたかった」以上のモチベーションは無かった。多分。

 英字新聞はハードルが高くて未だ買うに至っていないけれど、NHKラジオ「実践ビジネス英語」を生活の中に取り入れてみている。

画像1

 この「実践ビジネス英語」というラジオ番組ではアメリカで実際に起こっている問題や話題となっているトピックスが取り上げてられている。2月は「Financial Literacy (お金に関するリテラシー)を身に着けることの重要性」と「Homeless in Americaがコロナ禍で急増していること」が、3月は「Cyberbullying (ネットいじめ)」と「The New Normal (新しい日常)」がトピックスだった。非常に現実世界との親和性が高いことが分かる。

 登場人物は全員、ニューヨークにある企業に勤めているビジネスパーソンで、アメリカで今起こっている事、市民がどう言った事情で困った状況に置かれているかなどを話している。会話形式のやり取りのため分かりやすく楽しく学ぶことができる。英語を勉強すると同時に英語で勉強することができていると感じる点も非常に満足度が高い理由だ。

--

 せっかくなので2点ほど紹介してみる。

 SNSを含むサイバー空間において個人情報を公開できる機会は (Facebook など)ままある。住所や電話番号、学校名や会社名などの個人情報は特に取扱注意だ。アメリカでは「sharenting」という「過剰共有 (oversharing)」と「親であること (parenting)」を組み合わせた造語ができている。すなわち「自分の子どもに関連するコンテンツを共有するためにソーシャルメディアを使いすぎること」を指し、そうした親の行動は子供のプライバシーの権利を損ねかねず、ネットいじめの被害者になる危険に晒しかねない、と紹介されている。

 日本でも先日2025年度から「情報」の教科が大学入学共通テストに追加されることがニュースとなった。2022年からは全ての高校生がプログラミングを学ぶよう情報科のカリキュラムが変更となる。

 タブレットやスマートフォンが各家庭ないし個人に一台という状況になっている昨今、情報リテラシーの重要性は年々高まってきている。ネット社会での発言・振る舞いというのはかなり用心して扱う必要があり、特に10代の若者にとって”ネットいじめ”は20代以上の私たち世代よりも、より身近で深刻で危険なものとなっている。

番組内では、ネットいじめは昼夜を問わず起こりうることと、広く公に公開されることについて触れている。つまり、ネットいじめは数え切れないほど多くの人たちにすぐに見られる可能性があり、かつ匿名であるためにより大きな恐怖感を被害者に引き起こしかねない、としている。アメリカのCenters for Disease Control and Prevention (CDC、 疾病管理予防センター)の報告によれば、2015年には高校生の15.5%、中学生の24%がネットいじめを経験したことがあり、また一方でCyberbullying Research Centerの調査によると、過去にネットいじめを経験した人の数は2007年の18%から2019年の36%と10年でほぼ倍増している。

 ここで思い出されるのが女子プロレスラーの木村花さんの事件だ。テレビ番組をきっかけに多くの好奇な目に晒される事となった若者が、ネット上の誹謗中傷を苦に亡くなったことは世界に衝撃を与え、海外メディアも日本における大きな社会問題としてクローズアップした。

 番組内で紹介されたのは "Be a Good Bystander."という言葉で「誰かがネットいじめを受けているのを見たら、無視しないで。どうか関わって。」というメッセージが込められている。ネットいじめの被害者にならないよう気を付けると同時に、もし見かけた際は支援の手を差し伸べてほしい旨について言及されている。

--

 コロナ禍におけるホームレスの問題もまた、度々ニュースで取り上げられている。要するに「ステイホームが(したくても)できない人々」だ。柳美里さん著『JR上野駅公園口』(2020全米図書賞翻訳部門大賞受賞作)でもホームレスの問題はテーマとして描かれていた。アメリカではホームレス大学生が増えていることが問題となっており、その実情などについて番組内で取り上げている。日本でも、コロナ禍で大学を中退せざるを得ない学生たちが社会問題となっており、彼らへの支援は喫緊の課題となっている。

 ところで、みなさんは『THE BIG ISSUE』という雑誌をご存知だろうか。

 路上生活者の社会への復帰を支援する企業が運営する雑誌である。ホームレスの方が自ら手売りし、売り上げの約半分がその人の手元に入る。中高の部活の友人でホームレスの問題に熱心に取り組んでいた奴がいたおかげで、私もこの取り組みについて関心を持つに至り、路上販売者の方を見かける度、極力買うようにしている。

 緊急事態宣言で人が街から消えた昨今において、THE BIG ISSUEの路上販売者の方もまた苦境に立たされている。路上の雑誌販売売り上げは4割落ち込んだ。東京都中央区で販売するAさんはコロナ陽性との診断を受けた。Aさんはネットカフェ利用者で、二人目の陽性者が出ないよう、都が用意するビジネスホテルを活用しやすくするよう申し入れを行ったそうだ。(THE BIG ISSUE vol.403より)

 THE BIG ISSUEは現在、3ヶ月という期間限定の通信購読を読者に推進しており、活動・支援の方法を模索している。Youtubeチャンネルを作ったりもしている。

 NHKラジオなので当然というべきか、こうした特定の企業について触れているわけではないのだけれど、こうした取り組みについてより多くの人に知ってもらうことは大きな意義があると思う。

--

 話が広がってしまったけれど、私が普段関心を寄せているようなことをさらに深掘りし、かつ英語を勉強する機会を提供してくれる存在がNHKラジオだと感じている。アプリで気軽に聴けるのも良い。テキストを買ってじっくりやるのも良い。この習慣もまたnoteと同様に細く長く続けていければなと感じている。


(余談)

 NHKラジオ「実践ビジネス英語」を紹介したけれど、なんと34年間続いてきた番組が残念なことにこの3月で番組終了を迎えてしまった。

 聞き始めてまさか2ヶ月で終わることになるとは。。。メインパーソナリティは代わってしまうけど一応4月からは新たな番組「ラジオビジネス英語」が始まる。

画像2

 こちらを今後は聞き進めていきたい。しかし杉田敏さんの安心感のある声、聞き取りやすくて好きだったのになぁ。惜しまれる。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集