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アルツハイマー病の早期発見をゲームが!【Sea Hero Quest】
要約
「Sea Hero Quest」はアルツハイマー病の早期発見をサポートする革新的なゲーム。
一般人が楽しめるゲームをするだけで、研究に参加できるというゲームの特性を大いに活かしたプロジェクトであった。
プレイヤーがゲーム内で行う行動が、医療研究に有益なデータとして活用されており、研究の成果として、アルツハイマー病の遺伝的リスクの高い人を特定するのに成功した。
Sea Hero Quest とは?
「Sea Hero Quest」(シー・ヒーロー・クエスト)は、2016年にデンマークのゲーム開発会社Glitchersと、英国のAlzheimer's Research UKが協力して、アルツハイマーの研究のデータ収集のために開発されたゲーム。
2016年にリリースされたこのゲームは、遊びながら医療研究に貢献できるスマホゲームアプリとして無料公開され、世界中から430万人が利用し、のべ117年以上の合計プレイ時間にも及んだという。
この合計プレイ時間は、従来の認知症研究であれば176世紀もかかって収集されたであろうデータを科学者に提供している。
どのようなゲームなのか?
「船の船長として記憶を探し、謎を解き明かす冒険に挑む」というのが Sea Hero Quest のコンセプト。
こちらのYouTubeの動画がイメージを掴むのには一番良い。
Sea Hero Quest Virtual Reality | Walkthrough
まずはマップが表示され、スタート地点とゴールの位置が示される。
その後マップを見ずにどのような経路をとってゴールまで辿り着けるかという船の軌跡がデータとして測定されている。
また、ゴールについた際に銃のようなものが渡され、スタート地点に向けて打つモードも存在する。
これによってプレイヤーの記憶力・空間認知能力が測定できるという仕組みだ。
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どのような効果があるのか?
ゲームプレイの結果からプレイヤーの記憶力と空間認知力をデータとして算出しているこのゲームは、主に認知症研究に利用されている。
空間把握能力の男女差とアルツハイマーの遺伝的リスク
この研究では、18歳から99歳までの390万人を対象に、Sea Hero Questを用いて空間把握能力に関するテストを行った。
その結果、以下のことが明らかになった。
年齢が20代前半からほぼ直線的に空間把握能力が低下することが明らかになった
すべての国で男性優位が見られたが、これはかなりばらつきがある。
都会で育った人は、都会以外で育った人よりも平均的に空間把握能力が低下する。
空間把握能力がアルツハイマー病の遺伝的リスクの高い人(=APOE遺伝子の保有)を特定するのに役立つことを見出した。
特に、最後のAPOE遺伝子の保有者の特定に役立つということは非常に大きな結果である。
ゲームをすると重要な遺伝子の検査ができるかもしれない、といった未来は今後のゲーム×医療の方針に大きな希望を与えてくれるだろう。
現在の普及状況は?
2016年のリリース時にはアプリは無料公開され、全世界で430万人に利用されたが、現在では研究に参加する人のみが利用可能となっている。
そのため、一般人がなかなかアプリを利用することは難しいのが現状だ。
また、アプリ自体が研究機関・ゲーム会社・大学によって作成されており、ビジネスモデルのようなものは存在せず、研究のために運営・利用されている。
まとめ
「Sea Hero Quest」はゲーム×医療の研究で最も成功した事例であり、
どこでもいつでも誰でもできる
というゲームの特性を存分に発揮し、データを大量に収集した。
一般人ですら楽しめるゲームをするだけで、研究に参加できるというこの事例を真似し、新たな研究を行う例は今後かなり増加してくるのではないだろうか。