幼児期のアナログゲーム①発達面からみた意義

6月27日スペースより書き起こし

 


はじめに

みなさん、こんにちは。アナログゲーム療育アドバイザーの松本太一です。今日は幼児期のアナログゲームについてお話ししたいと思います。

まず、なぜこのスペースを始めたのかという背景についてお話しします。実は今日、PCでも同時に録音しているんです。それを議事録作成ソフトに流して、すぐにレポートを作ってもらおうと考えています。そのレポートをノートというブログサイトにまとめて、みなさんに見ていただこうと思っています。音声でも文章でも楽しんでいただけるようにしたいですね。

さて、本題に入る前に少し宣伝をさせてください。6月30日と7月28日に、東京吉祥寺にあるすごろく屋さんの主催で、吉祥寺の武蔵野商工会館でアナログゲーム療育講座を開催します。私の固定ツイートに詳細が載っていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。今日の話とも大いに関係しますよ。
https://sugorokuya.jp/event/dccw/

幼児期のアナログゲームの特徴

では、本題の幼児期のアナログゲームについて話していきましょう。幼児というと、基本的に2歳から6歳くらいの子どもたちのことを指します。最近、この年代の子どもたちと接する機会が増えてきたんですが、非常に面白いんです。今までは小学生以上の子どもたちと関わることが多かったんですが、幼児はまた全然違う世界があるんですね。

アナログゲーム療育の目標

何が面白いかというと、まず前提として、私が提唱しているアナログゲーム療育というのは、ルールの守り合いの成功体験を提供することを主な目標にしているんです。これが例えば、ADHDや発達障害、ASDなどの発達障害を持っているお子さんの中には、なかなかルールを守り合うのが難しくて、お友達と仲良くできないというケースがあります。そういう子どもたちが、ゲームを通じて仲良く楽しくルールを守れるようになると、本人の成長にもなるし、心のケアにもなるんです。

幼児期のルール理解

幼児の場合、基本的にルールを守れないことが多いのです。でも、2歳未満の子どもと違うのは、ルールの存在そのものには気づいているんです。例えば、ルールというのは言葉や数といった記号で表現されているものですよね。だから、それ自体は目に見えないし触ることもできないものなんです。そういう目に見えない、触れない、記号で表現されたルールを理解できるようになってくるのは、基本的には2歳以上なんです。

2歳前後の遊びの違い

2歳以前の子どもたちは、まだルールのあるゲームができなくて、おもちゃのようなものを使います。色、音、動きみたいな、直接的に感覚に訴えるようなものが中心です。2歳以上になってくると、少しずつルールという目に見えないものを理解して、順番を守ったり、勝敗をきちんとつけたりすることが理解できるようになります。理解できるから面白みも感じられるんです。

同時に、常にルールを破っちゃうというところもあって、どうしても自分がやりたいようにやっちゃうという時期でもあります。これは、ピアジェという発達心理学者が言っている幼児期の特徴なんです。ルールがあることはわかっているのに、それを守れないんです。自分自身の欲求とか、目の前に見えているものを優先しちゃうんですね。これを「自己中心性」と言います。

幼児の発達観察の意義

そういう幼児を見ていると、ルールが守れない子が、だんだん守れるようになっていく過程が非常にシンプルな形でわかりやすいんです。アナログゲームの教育的意義を考えた時に、これは非常に重要なポイントになります。

もし、いろんな年代の子どもたちと関わる機会があるなら、幼児から始めてみるといいと思います。非常にわかりやすいんですよ。小学生以上の子どもたちと比べると、幼児の方がシンプルです。小学生以上になると、もっと複雑になってきますからね。

2歳児のゲーム体験

幼児の子どもたちは、ルールに初めて気づいていく2歳くらいの段階から観察できます。面白いのは、例えば2歳の子どもが4人集まって、2歳向けのゲームをしようとしても、絶対にうまくいかないんです。2歳の子どもたちは基本的に走り回ったり、積み木で遊んだりしています。他の子どもとの会話も、まだまだ一方的な自己主張が中心で、双方向的なコミュニケーションはできません。

だから、2歳向けのゲームであっても、2歳の子どもたちだけでプレイすることは難しいんです。そこに大人が入ることによって、初めてゲームとして成立します。これは8歳以上のゲームと比べると大きな違いです。8歳向けのゲームなら、8歳の子どもたちだけでも説明書を読んで遊べるように作られています。でも、2歳や3歳向けのゲームは、2歳や3歳の子どもたちだけで遊べるわけではありません。

2歳や3歳向けのゲームは、その年齢の子どもたちの集団に大人が入ることによって初めてゲームとして成立するんです。そこで大人がどんな役割を果たすかというところが、いろいろな考えどころになります。子どもの発達に関わる人間としては、そこにたくさんの学びがあるんです。

発達の個人差

さて、私がアナログゲームを通じて子どもたちの発達を支援する立場から見ると、非常に学びが多いんです。特に、2歳、3歳、4歳と年齢で区切って見ていくと、どの年代で何ができるようになるかがよくわかります。同時に、個人差も結構あることがわかってきます。

例えば、2歳児の中でも、発達段階が手前の段階にある子がいます。そういう子は、どうしても他の子と同じペースでなかなか進めません。先生たちもそこはわかっていて、「〇〇ちゃんは少し遅れがあるかもしれません」といった感じです。発達障害の診断を受けていて、保育所等訪問支援などのサポートを受けている子もいます。

ところが、私が気づいたのは、逆に発達が進んでいる子もいるんです。先生たちは気づいていないことが多いんですが、私は子どもの年齢というのはあまり参考にせず、子どもの行動や反応を見ながら発達段階を判断しています。そうすると、2歳の中に一人だけ3.5歳くらいの発達をしている子がいたり、逆に、まだゲームが難しいはずの1.5歳くらいの子がもう3歳くらいの発達をしていたりするんです。

こういう高い方に発達している子がいても、普通に保育園の日常を見ていては気づきにくいんです。でも、例えば公園に行った時に、私のような見慣れない大人がいると、子どもたちはいろいろな反応を示すんです。ある時、2歳0ヶ月の子が「見て見て、大きいどんぐりがあるよ」って私に見せてきたんです。これには驚きました。

なぜかというと、「大きい」という概念を使っているんです。2歳の子どもは通常、「これがどんぐりだよ」というくらいの認識しかないんです。でも、この子は「大きい」という概念を使っている。概念というのは、普通の名詞と違って、他との比較がないと成立しない言葉なんです。例えば、「このiPhoneは大きいですか?」と聞かれても、何と比べて大きいのかがわからないと答えられませんよね。「大きい」とか「小さい」というのは、他との比較において決まってくるものなんです。

発達の個人差への対応

そういう概念を使えるようになるのは、だいたい3歳からなんです。それを2歳の子がやっているのを見て、私はびっくりしました。そういう子が何人かいて、その子は今、3歳児クラスに入れても全然普通にゲームができちゃうんです。

私はその出来事を持って、「先生、この子は今1歳児クラスだから4月時点で1歳児だったんですが、この子は多分普通にゲームできますよ。この子だけ1つ上のクラスでゲームに参加させてみてはどうですか?」と提案しました。実際にやってみたら、全然普通にできるんです。先生たちもびっくりしていました。

そういう子は、ゲームの時間を本当に楽しみにしているんです。私が来ると「今日アナログゲームあるの?」って聞いてくるんですよ。やっぱり、その子に合った難易度のことをやらせるのが大切だなと思います。

最近接発達領域の重要性

子どもたちは非常なスピードで発達しているんですが、その中でも一人一人に合わせて、ちょうどいい難易度の課題を与えることが大切です。これは「最近接発達領域」という概念に関係しています。

「最近接発達領域」というのは、一人でできるレベルと、一人ではできないレベルの間にある領域のことです。つまり、一人ではできないけれど、周りの人の手助けがあればできる領域のことを指します。この領域に合わせて課題を設定して、他の人との関わりの中でそこに取り組むと、子どもは最大限に発達するんです。そして、それが子どもにとって一番楽しいことなんです。

最近接発達領域とゲーム

単にゲームができたという達成感だけでなく、最初はできなかったけど、大人や年上の子が教えてくれて、「あ、こうやるんだ!」と気づいて、それでできるようになる。そういう体験が子どもにとっては本当に大きな喜びなんです。

そういう最近接発達領域に合わせたゲームをやってもらうと、子どもたちは本当に伸び伸びと、目をキラキラさせて楽しんでいます。そういう場面を自分たちが設定できたということに、大人たちも自信を持つことができるんです


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