コミュニティのジレンマ プレイヤーと運営の関係性は生成AIで変わるか?
こんにちは!スゴロックスです。
9月に入りました。ゲーム業界的には、先日CEDEC2024があり、ここから9月末に実施される東京ゲームショウまで、イベントが続く時期ですね。
先日のCEDEC2024に、非常に興味深いセッションがありました。
その名も「プレイヤー主導のゲームコミュニティ:RTAの現場から学ぶ」です。
こちらのセッションは「RTA in Japan」の中村さんと雨宮さんが登壇され、プレイヤー主体のコミュニティ運営にあたって意識されていることをお話されていたようです。
※RTAとは「リアルタイムアタック(Real Time Attack)」の略称。「どれだけ短い時間でゲームをクリアできるか?」に焦点を当てたゲームの遊び方の一種です。
残念ながら筆者はこのセッションを聴講できなかったのですが、この講演をされた「RTA in Japan」とはどんな団体なのか調べてさせてもらいました。
なんとこの団体、いわゆる「RTA」の大会を年二回ほど開催されている非営利団体で、2023年8月開催の大会では配信の最大同時視聴者が10万人を超える規模であり、同大会中の「投げ銭」も含めて、約620万円を国境なき医師団に寄付されたそうです。
もちろん「RTA in Japan」以外にも、ゲームメーカーが関与していない、いわゆる非公式のゲームコミュニティは数多く存在します。
「ゲーム」というエンターテインメントは、ハードウェア・ソフトウェアとしてはゲームメーカーが作っているものではありますが、こういったユーザーコミュニティの力があって初めて盛り上がる側面もあります。
今日はそんなお話をしていきつつ、ゲームメーカーとユーザーコミュニティの関係性が、生成AIの登場によって変わるかもしれない、という「スゴロックスの考えるゲーム観」の話をしていきたいと思います。
ゲーム業界は非常に多様性のある業界で、各社様々な考え方・アプローチで素晴らしいプロダクトを生み出そうと企業努力していらっしゃいます。
あくまで一つの考え方として、ご一読いただけましたら幸いです。
ゲームというエンタメはプレイヤーが主役。
大前提、ゲームメーカーは、ユーザーコミュニティには感謝しています。
「ゲーム」というエンターテインメントは、ゲームメーカーだけでは成り立たず、ゲームをプレイしているユーザーがいて初めて成立します。
特に、対戦ゲームの領域だと、プレイヤー同士で「あいつには負けねぇ…」とライバル認定しあったり、「今日は5勝するまでやるぞ!」といったように、プレイヤー同士で、あるいはプレイヤー自身で、ゲームを遊ぶ際の「ルール」を決めていたりします。
ゲームメーカーは遊ぶフィールドを提供してはいますが、実際にそこで遊ぶのはユーザーの皆さんですし、そのフィールドで遊ぶユーザー同士の遊び方があります。
冒頭に話が出た「RTA」も、本来運営が意図していない遊び方ですよね。
例えるなら、メーカーは「公園を作って、遊具をおいている」公園管理者にすぎないのです。ゲームプレイヤーがその公園の中で、どの遊具を使おうが、誰と一緒に遊ぼうが、自由です。
繰り返しますが、メーカーはあくまで「フィールド」を提供しているだけにすぎず、ゲームの主役は、そのゲームで遊ぶプレイヤーであると思っています。
開発陣も人間。すべてのユーザーの声は把握できない。
そんな「ゲーム」という領域の中でも、ひときわ目立って活躍されているプレイヤーもいます。
SNS上で遊び方を発信したり、友人を誘ってプレイ人口を増やしてくれたり、有志が集ってゲームコミュニティを立ちあげたり…
プレイ人口が増え、ゲームを通じてユーザー同士の繋がりも増え、色々な遊び方をSNSで発信してタイトルを盛り上げてくれる。本当にありがたい存在です。
そういった有志のプレイヤーやユーザーコミュニティの存在を、開発陣も実は一部把握しています。
前述のとおり、彼らはゲームメーカーから見ても本当にありがたい存在です。お礼も伝えたいし、ゲームについての色々な意見を聞きたい。
とはいえ、ここでひとつ問題が発生します。
開発チームも人間です。人間の行うことには限界があります。
人間の集まりである運営チームには、「非公式も含めたすべてのユーザーコミュニティと、そこで活躍するプレイヤーを均等に理解する能力」はないし、「全員の意見を平等に理解する能力」も「全員に均等にお礼を言う能力」もないんです。
すべてのコミュニティとプレイヤーを把握することができない以上、どこかのコミュニティに「運営としてのお礼」を行ったら、特別扱いをすることになってしまう。
もしかしたら、見えていないだけで、そのプレイヤー以上に素晴らしい取り組みをしているプレイヤーもいるかもしれない。
知りたいのに、知り尽くすことができない。
そんなジレンマを抱えつつ、開発側はゲームを運営しています。
では一方で、ユーザーはどう思っているのか?
いちゲーマーでもある僕の感覚としては、「ユーザーの意見を聞かない運営」か、「ユーザーの意見を聞く運営」のどちらが良いかと聞かれれば、もちろん「ユーザーの意見を聞く運営」の方がいいに決まっています。
そして、自分たちの非公式コミュニティが、運営、つまり公式に認められたり感謝されたりするのは、されないよりも、された方が圧倒的にうれしいに決まっています。
もちろん、ゲームが面白いということが大前提ですが、「ユーザーと運営とがしっかり向き合ってる感」があるタイトルに対しては、愛着を感じますし、長く続けたくなるタイトルだと思います。
このように、メーカーとユーザーは双方がコミュニケーションを取りたいと思ってはいるものの、「人間である以上、そのすべてを把握できない」という、非常に解決が難しい壁があります。
つまりはコミュニケーションコストです。
なので、運営が非公式コミュニティに積極的に関わりに行くのはかなりの勇気と、時間が必要です。そんなことができるゲームメーカーは、決して多くはないと思います。
ですが、時代は前に進み、技術は進歩しました。このジレンマを、生成AIが変える可能性があります。
AIは無限にユーザーの声を聞ける存在
生成AIが何なのか、という話については、皆さんなんとなくイメージはできていると思います。ChatGPTやGeminiのような、チャット形式のAIをとりあえずはイメージしていただきたいです。
なんといっても生成AIの凄いところは、無限に人間とやりとりができるところです。
つまりこれは、無限にユーザーの声を聞けるようになる…可能性があります。
例えば、コミュニティの中にチャットAIを組み込んで、ゲームのことについて色々相談できるコーナーを設けるとします。
そこで、ユーザーが感じるゲームの改善策、自分たちのコミュニティで実施したいイベント、運営に対して思っているところなどを、すべてAIに伝えるんです。
これは運営サイドから見れば、ユーザーとコミュニケーションを取ることで、コミュニティにいるメンバーのひとりひとりを把握できると同時に、ユーザーの意見をより的確に運営が回収できる、というメリットもあります。
ユーザーの意見があればそれに柔軟に対応することが、メーカー本来の責任だと思いますし、無限に人の話を聞ける生成AIの力があれば、ユーザーの声はより運営に届きやすくなる可能性が高いと思います。
ユーザー側にもメリットはあります。例えばそのAIにゲーム開発側の想いや、ゲームサイドで既に決定していることを学ばせておけば、ゲームに関する質問にその場で答えてくれる、みたいなことは十分に可能だと思います。
もう一歩踏み込んだユーザー側のメリットを提案するとするなら、そのAIに伝えたことは、全部まとめて次の運営会議で「ユーザーの声代表」としてそのAIが運営に伝えてくれる、といった形にすると面白そうです。
もしかしたら、会社に雇用されている訳ではない、ただのAIなんだから、純粋にユーザーの意見の代弁者として動く存在になることが、大事なのかもしれません。
ゲーム運営と、ゲームプレイヤーの間の溝は、つまりコミュニケーションコストです。
この溝は、きっと生成AIが埋めてくれる。そこに僕たちは可能性を感じるし、そんな形の「ユーザーの意見を取りこぼさないコミュニティ」を実現していきたいと考えています。
AITuber×ゲームの可能性
この話からさらにもう一歩進んだ存在がAITuber、つまるところ「中身が生成AIのVTuber」です。
前述してきたような、ChatGPTやGeminiのようなテキスト生成系AIって、どこか無機質で「親しみやすさ」みたいなものは感じにくいですよね。
アバターという「姿」、合成音声という「声」が存在するAITuberには、ユーザーにとってのとっつきやすさや、親しみやすさが、単なるテキストAIよりは多分にあると思います。
弊社スゴロックスとしても、AITuberがゲームコミュニティ、あるいはゲーム自体に果たす役割はかなり大きいと思っております。
具体的には、株式会社Pictoriaと業務提携を行い、実際に弊社代表の西山がプロデューサーを務める『Battle of Three Kingdoms - Sangokushi Taisen -』では、ゲーム内に実際に登場するキャラクターである「大喬」を、AITuberとしてコミュニティ運営に活用するというリリースも行いました。
大喬ちゃんは『絶対的なユーザーの味方』の存在、ユーザーがゲームに対する意見を言えて、それを開発側に、ユーザーの立場の代表として意見してくれる存在にしていきたいと思っております。
とはいえ、ここまで語ってきましたが、大前提としてゲームが面白くないと、コミュニティも形成されません。
なので、何よりもまずは面白いゲーム、夢中になれるゲームをつくることに力を注いでいきますし、プレイヤーの皆さんの期待に答えられるように、がんばっていきたいと思います!
プレイヤーと運営の距離を埋めることが大事
最後に、今回のテーマ「AITuberとコミュニティ」について思ったこと。
繰り返しとなってしまいますが、ここまで語ってきた内容はあくまで「スゴロックスの考えるゲーム観」です。
ゲーム業界は非常に多様な業界で、各社が色々な考え方でチャレンジを続けています。
そんな多様で、明確な正解がないエンターテインメントの世界だからこそ、駆け出しの僕たちはチャレンジングなことを仕掛けていきたいと思っています。
先日のCEDEC2024でも、AIに関するセッションは20件以上もあり、多くのゲーム会社が、AIをエンターテインメントの世界に、様々な形で生かそうとされています。
僕たちは、ゲームコミュニティ×AITuberで、ゲームメーカーとゲームユーザーの関係性をバージョンアップさせ、より多くのユーザーの声を集めることができる。そんな未来に向けて、これからも取り組んで参ります!
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