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【cluster】ゲームワールドに求められる3要素

 どうも、ガルペノです。

 今回はCluster Creator Kit Advent Calendar 2020への寄稿記事ということで、「clusterのゲームワールドに求められる3要素」について、書いていきます。

 前回の記事はDolphiiiinさんの「clusterのワールドを軽量化しよう」というものでした。ガルペノは低負荷ワールド原理主義ローンウルフなので助かります。ただライトマップベイクに関しては老体のMacBookに鞭打つことになるので滅多にできていません。

 「clusterのゲームワールドに求められる3要素」とは、結論を言えば、気軽に遊べるものであること、写真映えするワールドであること、お互いのアバターが目視できること、この3つです。ご参考までに、clusterゲームワールド杯2020で本戦に出場したワールドのほぼ全てがこれらの要素を満たしています。

 ここではガルペノが当初に期待していたよりも評価が少なく、また応募したコンテストも予選敗退した、「ロボファイト」シリーズのゲームワールドを叩き台にしながら、振り返りと反省を元に、今後の課題を探ります。
 また記事公開日の夜22時から、こちらの記事の内容を噛み砕いて紹介するイベントも開催します。そちらも合わせてご参考にしていただければと思います。

はじめに

 はじめに、この記事で書かれている内容の大半がガルペノの主観によるものであり、アンケートや内部データなどの統計情報に基づいた客観的な分析ではないことに留意してください。
 また、ここで述べる「clusterのゲームワールドに求められる要素」の定義ですが、

1.たくさんの訪問者数・たくさんのいいね数・訪問者の長いワールド滞在時間を獲得し

2.ゲームワールドコンテストやGAMEJAMなど大会での審査で優位に立て

3.TwitterをはじめとするSNSでのシェア数が多く、ワールドについての言及も活発であること

とします。
 なおこの記事で考えを述べる対象は、主にゲーム性を大きく打ち出したゲームワールドについてです。ゲーム性に比重が置かれていない、通常のワールドについても完全に当て嵌まる内容ではありません。

 この記事で叩き台にする「ロボファイト」シリーズのゲーム内容ですが、基本的な設計としては「アバターを使ってロボットを操縦し、相手のロボットを撃破したら勝利」というものです。現在、プレイヤーvsプレイヤーであるマルチプレイと、プレイヤーvsNPCであるソロプレイの2種類があります。

 それでは早速やっていきましょう。

1、気軽に遊べるものであること

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 ゲームワールドに求められる要素の、まず最初は「気軽に遊べるものであること」です。「気楽に遊べる」こととは微妙に異なります。
「ロボファイトデスマッチ」の開始には、最初にワールドに入ってから操作説明の廊下を抜け、二つの陣営に別れてロボットに乗ります(コックピットを模した部屋へのプレイヤーワープ)。そしたら今度は目の前にあるボタンを全てタッチし、最後に出てくる試合開始ボタンを押して、やっとゲームが始まります。それに加えてロボの操縦も覚える必要があります。これが非常にややこしいのです。
 ガルペノが同じ時期に公開したワールドは、的当て神経衰弱迷路とゲームシステムが簡単なものでした。的に向けて発砲する、正解のルートを覚えながらゴールを目指す。どちらもその一文でルール説明ができます。しかし、「ロボファイト」は上記のややこしい手順説明が必要になるのです。

 clusterのゲームワールドに限定して、果たして訪問者がどれだけの時間ワールドに滞在するのか、平均時間は分かりませんが、ガルペノの主観でいうと大体10分程度なのではないかと思います。まずCCK(Cluster Creator Kit)の制約上、ゲームの内容を複雑にすることが難しいため、多くのゲームワールドでは短時間でのクリアを想定しています。
 そして何より、遊びにきた訪問者が「気軽に遊べること」を望んでいるからです。

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 少し引いた視点で見て、世の中のゲームを二つに分けるとします。

 一つはPS5やSwitch、PCゲームなどの「本格ゲーム」(BeatSaverなどのVRゲームもここに含めます)。

 もう一つはclusterやVRChat、Second LifeなどのバーチャルSNSにおける「ゲームワールド」です。

「本格ゲーム」は、シューティングやスポーツなど、初めからゲームとして開発されたものです。「ゲームワールド」は、基本的にはアバターを用いた交流を主軸とし、その副次機能としてゲームができる、そういう捉え方とします。

 それぞれユーザーから求められる熱中度は異なります。
「本格ゲーム」をプレイするユーザーは、「制作のクオリティが高く、ゲーム性を十分に感じられ、プレイ体験に満足すること」を求めます。
 一方で「ゲームワールド」を訪問するユーザーは「気軽に遊べること」を求めるのです。バーチャルSNSのワールドは、ゲーム開発が前提とされておらず、ほとんどが営利企業の制作によるものではありません。したがって、ユーザーもそれを承知してワールドを巡っています。
 そしてゲーム性のない通常のワールドを巡るのと同じ感覚で、ゲームワールドに来訪する意図が強いです。

 早い話、本格的なゲームをしたかったらコンソール機やPCでゲームを遊びます。複雑で凝ったゲームをするためにわざわざclusterに遊びに来る人は滅多にいないということです。

 この証拠として、最近ガルペノが公開したワールドに、「ロングランジャンプ」というものがあります。ジャンプ台からぎりぎりに飛んで記録を伸ばす、という目標のシンプルなワールドです。こちらは本気で作り込んでおらず、新機能のデモンストレーションも兼ねた手抜き制作であったにも関わらず、既に「ロボファイトデスマッチ」の5倍近い訪問者数・いいね数を叩き出しています。これは紛れもなく、ややこしいゲームをみんな敬遠しているだろう、ということです。

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 clusterではゲームワールドよりも、通常のワールドが人気です。多くのフレンドと一緒にログインできる時間帯には、みんな通常のワールドやイベントで交流し、その流れで「じゃあ、あのゲームワールドで一戦交えるか」となる機会はあまりありません。それだけに、ゲームワールドはなるべく敷居の低い、気軽に遊べるものであることが求められます。
 ゲームワールドのライバルは、通常ワールドなのです。

2、写真映えするワールドであること

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 続いてゲームワールドに求められる要素は、写真映えするワールドであることです。これは言わずもがな、ゲームワールドではない通常のワールドでも求められる要素ではないでしょうか。
(VRで入ったことがないのでVRの仕様は分かりませんが……)clusterでは写真を撮ってコメントを付ければ、すぐにTwitterへ共有できます。その際にはハッシュタグ#clusterと共にワールドのURLも自動で付与されます。これがあるおかげで、ちょうどその時間帯にclusterに遊びに行けなかった人でも、フレンドの楽しさやワールドの体験を知ることができます。
 一見、SNSでの共有はなんてことはない当たり前の機能に思えても、見えないところでフレンドとの交流やワールドの宣伝に一役買っているのです。

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 この写真つきのSNS共有では、こぞって「映えスポット」「映えタイミング」が狙われます。
 一言で「エモい」と済ませてしまいがちですが、絵画のように美麗な景色、夢を見ているような幻想的な空間、どこか懐かしさを憶い起こさせる部屋、そういった映えスポットの情報を、写真一枚で伝えることができます。はたまた、いつものカフェやバーで起きた珍事件、偶然のワンショットなど、その場にいなかったユーザーにも、写真一枚で出来事や体験を伝えられます。 
 この「写真映え」があるおかげで、バーチャルワールドは何倍もの価値を持つようになるのです。そしてそれはゲームワールドにおいても同じです。

「ロボファイト」では、プレイヤー=アバターはモニターのある真っ黒な箱の中に閉じ込められ、足元の板を踏んだり棒を振ったりしてロボットを操縦します。ロボットは常に三人称視点で固定され、ヒットポイントがなくなると行動不能になります。
 これではあまりに写真映えしません。一応、撃破後は観戦者としてステージ上空から試合を見ることができますし、試合終了後は自機の近くにワープして記念撮影ができますが、それ以外の時間は暗い箱の中でぺたぺた移動しては棒を振るだけで、あまりゲームワールドを撮影する面白みがありません。また、試合の最中に撮影しようにも一時的に無防備になる必要があり、落ち着いて撮影できません。

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 ワールドが写真映えしたほうが良い理由、とりわけゲームワールドが一枚の写真と共に共有されることの意義として、写真でルールがなんとなく分かったり、どんなゲーム体験だったのかをなんとなく掴めたりできるメリットがあります。
 銃と的が写っていれば射的だな、剣とモンスターが写っていればアクションだな、暗号やパズルが写っていれば謎解きのゲームだなと、写真一枚でゲームを遊ばなかった人にも伝えられるのです。したがって、写真を撮る側も見る側も無意識的に、写っているものから読み取れる要素を重視します。

 ですので、ゲームワールドを写真映えさせるには、写真一枚でゲームの内容や体験、ルールをそれとなく伝えられるポイント、場所やタイミングを設定すると良いと思います。たかが写真一枚、されど写真一枚です。

3、お互いのアバターが目視できること

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 ガルペノが考える、ゲームワールドに求められる3要素の最後は、お互いのアバターが目視できることです。「アバターを目視」とはなんぞや?と思われるかもしれません。
 それは「一緒にゲームワールドを遊んでいるプレイヤー、特にフレンドの姿が常に確認できること。壁で遮られたり遠くに離れすぎたりして見えなくならないこと」です。

「ロボファイト」シリーズの大きな失点の一つと考えているのが、VRSNSにおけるアバター文化にそぐわなかったということです。アバター文化の明確な定義はありませんが、ここでは以下のように定義します。

 ここでのアバター文化とは、現実の人間が仮想世界での操作キャラクター=アバターに現実世界の自分自身と近い想い入れを持ち、また現実での自分自身の物理的また精神的な振る舞いを投影、あるいはそれとは違う擬似や模倣、理想の人格などを演じること。そして仮想空間でこれと同じ価値観を共有する他者と積極的に交流すること。

 ややこしいですが、ざっくり言えば自分の好きなアバターでフレンドとわいわい遊ぶことです。現実世界でのタスクを離れて、仮想世界での仲間に会い親睦を深めること。それは放課後の部室という誰かの比喩がよく合致してします。

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 アバター文化の要件にロボファイトを照らし合わせてみれば、まずお互いの姿が目視できない点で、大きな落ち度が生まれました。アバター文化ではお互いの目視が何より重要で、そのために現実世界で服を選ぶように3Dモデルを着飾ります。しかしお互いの姿が見えないのでは、たとえボイスチャットやテキストチャットで連絡しあっていても、せっかくアバターを着飾った意味がなくなってしまいます。
 またアバターをロボットのパイロットとして演出するのではなく、ロボットを操縦するコントローラーの部品にする、というゲームの仕様も、ユーザーに受け容れられなかった一因と思います。

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 さらに、今回のゲームワールド杯2020で隠し評価基準となったのは、間違いなく「『VTuber』の実況配信映えするものであること」であったと思います。

 これは公式の言及ではなくガルペノの憶測に過ぎませんが、本戦出場ワールドの投票期間中から、本戦出場ワールドの決定後も、応募されたゲームワールドにVTuberの方が入り込んでプレイし、その様子を配信するイベントが繰り返し開催されました。この時点で、3Dアバターを持つVTuberとゲームワールドの相性が非常に良いことに、おそらく運営は気づいたのではないかと思います。「配信映えする」からです。
 ここで重要になってくるのが、先述の「アバター文化」です。VTuberの容姿は、アイドルや役者のそれと同じくらい強大な魅力を持っています。この魅力を最大限に生かすには、やはり「常にアバターの姿が目視できること」が外せないのです。
 配信では複数人のVTuberの方々の視点と、カメラマンの視点がモニターされました。そしてVTuberの方同士の掛け合い、やりとりがあった場合には、お互いの姿が見えていると非常に説得力があり、実在感が生まれ、それぞれが同じ空間を共有していることが感じられます。

 普段のユーザー同士の交流とは別の文脈である、VTuberのゲームワールド実況イベントにおいても「アバター文化の価値観」は強固にあり、ゲームワールド杯2020では隠し評価基準として、「VTuberの実況配信映え」が加味されたのではないか? ……と、ガルペノは勝手に勘繰っています。

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 第一の要素でも述べましたが、多くのユーザーがclusterに集うのは「交流すること」が大きな目的であり、その交流には「お互いのアバターが目視できること」が大きな前提になっています。アバターが見えない交流でも構わないのであれば、Discordの通話やTwitchなどのゲーム配信で済んでしまいます。そうでなく、わざわざclusterやVRChatに集うのは、アバターで交流したいからです。
 また、clusterの目指すサービスとして社長が語られるところの「ハレとケ」(イベントやお祭りなどの非日常と、普段のまったりした日常)、そのどちらでも強い影響力を持っているのが、バーチャルSNSのアバター文化です。イベントでバーチャルのアイドルが配信をする際にも、いつものフレンドと交流する際にも、「常にアバターの姿が目視できること」が非常に大きな要件となっています。

 この要素はワールド作りで意識される機会が殆ど無く、ワールド制作でアバター文化について言及する人は滅多にいません。それだけ無意識的にみんなが共有していることだからです。しかしそれを一歩踏み外してしまうと、アバターを蔑ろにしてしまうと、ユーザーは離れてしまいます。
 ワールドの背景を制作する際、ゲームのコンセプトを練る際、「お互いのアバターが目視できること」は忘れないようにしましょう。

終わりに

 以上、ガルペノが考える「clusterのゲームワールドに求められる3要素」でした。繰り返しになりますが、これはガルペノ個人の主観に基づいた見方と意見です。ここで記した内容には誤りや異なる意見があることを留意してください。
 それを踏まえた上で、またCluster GAMEJAM2020 in WINTERの開催を目前に控えた今、皆さんのゲームワールド作りの一助となれば幸いです。

 それと、今回ガルペノは「審査員にも、ユーザーにも受ける!これがゲームワールド制作の近道だ!」とでも言うように書いてきましたが、この記事はあくまでコンテストで受賞を狙う際や、普段のユーザーのインプレッション・エンゲージメントを増やす際のお話です。
「評価されること」にゴールはありませんので、それを目標にすると大変です。ガルペノはロボファイトが駄目だったときにいじけて「もう凝ったゲームなんて作らん!やってられっか!」と考えましたが、しばらくして「いや、やっぱ作りたいよなあ」と考え直しました。
 それは、「自分が遊びたいから創る」という原点を憶い出したからです。多くの人に遊んでもらうこと、コンテストで受賞することも大きなモチベーションになりますが、残念なことに他人の評価・他人の感性は簡単には変えられません。簡単には変えられないものに振り回されるのはとても辛いので、もっとコントロールしやすいものをモチベーションにしましょう。

 次がいつになるかは分かりませんが、僕はロボファイトがあんまりユーザーに遊んでもらえなくても、続きを作ります。コンテストの受賞を目指すのではなく、またお金をもらって仕事としてやるのでもなければ、自分のやりたいようにやるのが一番の原動力です。
 その辺りは、「clusterユーザーと加速する非公式 Advent Calendar 2020」で てつじんさんが書いておられる記事にもリンクします。こちらも非常に良い記事ですので、ワールド制作でモチベーションに行き詰まったらお読みになるとよろしいかと思います。

 この記事はCluster Creator Kit Advent Calendar 2020の、16日目の寄稿です。明日17日はゲームワールド杯2020にて、応募されたワールド「廃屋からの脱出」でめでたくTSUKUMO賞を受賞された ういさんの記事です。
 よろしくお願いします!

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