本格ゲームワールドの作り方
こんにちは、Galupenoです。
いつもはclusterで遊べる対戦ゲームワールドなどを作るほか、アバターやアクセサリー・乗り物など3Dアセットの制作や、イベントなども開催しています。
この記事ではバーチャルSNS(ほかメタバースプラットフォームなど)における本格的なゲームワールドの作り方を自分なりに解説していきます。
僕はいつもclusterで活動していますが、今回は特にclusterに限定した解説などではなく、だいたいどんなプラットフォームでも通じるように書いていきます。
本格ゲームワールドの定義ですが、だいたい制作に1ヶ月以上かかるものと考えてください。
本格的なゲームワールドを作る手順は僕の場合、下記の6項目からなります。
①コンセプト決め
②シンプル実装
③システム構築
④アセット配置
⑤本公開・プレイイベント開催
⑥改善を続ける
順番に解説していきます。
①コンセプト決め
最初にどんなゲームワールドを作りたいかコンセプトを決めます。
アクション、シューティング、探索、ホラー、ストーリー、RPGなどのジャンル。
中世、現代、未来、ファンタジーなどの世界観。
対NPC、対プレイヤー、スコア制、やりこみ要素などのゲームシステム。
しかしながら「どんなゲームワールドにしようかなあ」とコンセプトを練るのは間違いです。
なぜならゲーム制作は手段であってそれ自体が目的ではないからです。
ぼんやりと「何かしらゲームワールドを作りたい」と思うより、
「自分もあんなゲームワールドが作りたい!」
「こんな体験、まだうちのプラットフォームでできないなら自分が作る!」
と具体的な目標があると、長期間の制作も苦ではなくなります。
そのためには日々アイデアを妄想したり、いろんなものにアンテナを張って自分が作りたいもの、実現したいことを探しましょう。
②シンプル実装
「作りたいゲームワールドの方向性が決まった、仕様書も詳細に書いた、高品質なアセットもたくさん買った、自作のアセットも作った、さあゲーム制作に取り掛かろう!」
と先んじて準備するのは危険です。
なぜなら準備万端でゲームワールドを作ろうとしたら、実現しようとしていたことがプラットフォームの制約によって実現できなかったり、ゲーム内容が想像よりも面白くないことが判明したりと、方針転換を余儀なくされることがままあるからです。
そこで、まずは非常にシンプルなゲームシステムから実装していき、想定するプラットフォームで実現できるか、仮実装で遊んでみて作者が面白いと思えるかどうか(超大事)の確認をする必要があります。
実際のゲーム会社が手掛けるゲーム制作でも、初めはシンプルなグラフィックで実装していくとされています。
制作の初期段階からアセットをあれこれ購入したりレベルデザインをこだわる前に、まずはテクスチャを貼ってないまっしろの箱を並べたり、効果音もBGMもない無音空間で、最低限のゲームシステムを作ってテストで遊んでみましょう。
③システム構築
ある程度は遊ぶことができ、そして何より自分が楽しめるゲームワールド(最重要)が作れそうだと判明したら、実際にゲームシステムを構築していきましょう。
ここからは番号の順番どおりに進めず、③~⑥を何度も行き来することがあります。
根幹部分の構築
まずはゲームの根幹となるシステムから構築していきます。
的当てなら射撃アイテムと標的アイテムと飛んでいく弾アイテムを、かくれんぼ系ホラーなら徘徊する敵キャラを、能力強化系のRPGなら能力ごとのパラメーターなどを。
あなたのゲームで一番のキモとなる部分から実装しましょう。
初めのうちはシステムがちゃんと動いてくれずイライラさせられたり、自分の実現したいことをゲームワールドとして再現するにはどんなプログラムが必要なのか見当もつかず途方に暮れるかもしれません。
しかしこれは自分で制作経験を積むこと、あるいは詳しい人に助けてもらうことなどで解決します。
ある程度のシステムが動くようになった段階で一度テストワールドとしてアップロードし、プラットフォーム上でしっかり動くか確認する必要があります。
特にアバターとのスケール感や、複数デバイスでの動作の違い、マルチプレイの同期がきちんととれているかはよく確認しましょう。
プレイアビリティの設定
ゲームの根幹システムがうまく動くようになれば、次はプレイヤーにとって分かりやすく遊びやすい体験づくりのための実装を追加していきましょう。
例えば的当てなら発射した音、ヒットした音、外してしまった時の音、残り段数とリロード中の表示UIなど。飛翔する弾の軌跡を描画するのもいいですね。
敵キャラが徘徊するホラーなら、距離減衰する効果音で敵キャラの接近を知らせたり、敵に触れてゲームオーバーになってもいきなりワープするのではなく画面が暗転してからワープするなど。
レベル上げRPGならレベルアップ演出はもちろん、次のレベルアップまでに必要な経験値を確認できるようにしておくと、まだまだ遊びたいと思ってもらえるはずです。
デバッグ用システムも作っておく
ゲーム内容が複雑化してくると、自分が実装したものがしっかり動くか確認すること:デバッグが大変になってきます。
例えば「スタート地点→エントランスで説明→ゲーム開始→ゲーム終了・結果発表→ゲーム再プレイのオプション」
という一連の流れを作る際、エントランス辺りの確認は簡単ですが、ゲームが終了するシステム・結果を表示するシステムや、再プレイする動作の確認のため繰り返しゲームをプレイするのは効率が悪いです。
簡単な解決法として、入室地点の基準となるオブジェクトをデバッグしたい地点まで動かしておくことが挙げられます。
それだけだとゲームの進行度合いは0なので、強制的にゲームが進行したことにしたり、プレイヤーのレベルやパラメーターが上がった状態にするスイッチも近くに置いておくとよいでしょう。
ただしデバッグ用スイッチ類の置き忘れに注意です。
Unityを使ったゲームワールド制作の場合は、オブジェクトのTagを「EditorOnly」にしておくと、ビルド後は存在しないオブジェクトとして設定できるので、置き忘れ防止におすすめです。
④アセット配置
ゲーム開始からゲーム終了までの一連のシステムが組みあがってきたら、後回しにしてきたアセット配置をしていきましょう。
既製品を買ったりする場合は手間暇がかかりませんが、3DモデルやBGMなどを自作する場合はシステム実装の早い段階から並行して制作したほうがよいでしょう。
また、苦手なプログラミングに向き合うのが疲れてきたらアセットを探したり、後回しにせず実際に置いてみてモチベーションを上げるのも大事です。 特に仮アセットではゲームとして成り立たない場合などもあるので、②のシンプルな実装が確認できていれば、③と④は行ったり来たりでも構わないです。
ここでもプレイヤーがどういった思惑で動き回りどういった気持ちでゲームを遊ぶかを考えてアセットを配置したいものです。
例えばライティングが暗めのワールドではプレイヤーに赴いてほしい地点に照明を置き、特に意味のない場所は暗くしておくなど、視線の誘導や導線を意識したレベルデザインが可能です。
UIも、パッと出してパッと消すのではなく、フェードで表示させたり画面外から移動してきたりと、見ていて気持ちがいい・遊んでいて心地よさを感じる演出があります。
自分がよく遊ぶ商業ゲームではどのようにアセットが置かれているか、どのような演出がなされているかを普段から観察し、意欲的に取り入れていきましょう。
⑤本公開・プレイイベント開催
ゲームワールドがいよいよ完成したら、テストワールドとしてではない念願の本公開をしましょう。
同時にSNSでの告知やPV公開などがあると理想です。
公開後は積極的にワールドに滞在し、やってきた初心者のユーザーを案内したり、バグや実装ミスが無いか、プレイヤーが作者の想定通りに遊んでくれているかを見てみましょう。
また、時間を決めてみんなでプレイするイベントを企画するのもありです。
⑥改善を続ける
ひとたび公開してしまえばそれでゲームワールドの制作が完了かというと、そうではありません。
思わぬバグの発生や、そんなプレイは想定してなかった!という遊び方で作者に挑戦してくるプレイヤーも出てくるものです。
こういったアクシデントに一つ一つ対処していき、やっと安定して遊べるようになれば安心ですね。
そこからは羽を伸ばしてお休みしてもいいし、次の制作を始めてもいいかもしれません。
でもせっかく作ったならば、ゲームワールドを今の状態より良く改善してもいいのではないでしょうか。
これまで何度も書いたように、プレイヤーがより遊びやすく、楽しいと思ってもらえる要素の追加・置き換え・省略をしていきます。
UIのレイアウト、難易度の調整、ワールド全体の色味統一、ゲーム進行のテンポ感、ゲーム中のコミュニケーションツールなどなど。
プレイアビリティの模索はどこまでも掘り下げることができます。
これらは何度もゲームをデバッグしていると気付きにくい点も多いので、フレンドにテストプレイをしてもらうなどで積極的に「初めて遊んだ人の感想」を取り入れていきましょう。
それに加えて、ゲームに限らずいろいろなもののデザインや動きを観察して、なぜそのように作られているのか考える習慣があると、自分が作るものの完成度を高めることができます。
それは難しいことではありません。
作る側になると日常を見る目が変わるからです。
まとめ
ゲームワールドの制作は大変です。
はっきり言うと、作りたいゲームが決まっていないならゲームは作らないほうがいいし、そもそもそれでは作れません。
マンガを読むことと描くことが全く違うように、ゲームを遊ぶこととゲームワールドを作ることはとても違います。
華やかで楽しい体験は、地道で根気のいる作業の継続で出来上がっています。
それでも僕がゲームワールドを作るのは、制作自体が楽しいからです。
僕にとってのゲーム制作は、遊びを創る遊びだと思っています。
どうすれば自分の頭の中の世界を現実に表現できるか、それだけです。
それを可能にするのは強力な想像力だと考えています。
「あんな世界で遊びたい」
「こんなゲームを作りたい」
「できたゲームのここをもっと改善したい」
「こんな要素を足したらめちゃくちゃ面白くなるに決まってる」
そういった想像の熱量が高ければ高いほど、長い間ゲームワールドの制作を続ける気持ちが絶えません。
今、自分がいつもいるプラットフォームで実現したい遊びがあるなら、想像力をフルに働かせてゲームワールドを作っていきましょう。
まだ作りたいものが見つかっていない人は、自分が好きなものやいつも遊んでいるものを自分の手で生み出せる楽しさを知ってほしいです。
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