捏造するのは 難しい!
皆さん…いきなりですが ここで問題です
『しつけ』という言葉があるのですが …
皆さんは 漢字で正しく書けるでしょうか?
正しい漢字は …
「躾」 です!
字を見れば『なるほど』と思いますよね
「身」+「美」 で 「躾」という訳です
僕は 子供のころ 母の「躾」で忘れられない
出来事がありましたので 今日はその話を
聞いてください
※ ※ ※
母は父と結婚し 田舎で暮らし始めたのですが
都会で生まれ育った母には 田舎ぐらしが 性に
合わず… 日頃から不満を溜め込んでいたのかも
知れません
父は温厚で誠実な人柄でしたが 母は少しだけ
怒りっぽいところがあったのです
そんな母から受けた『躾』というのは …
ゴミは捨てずに持ち帰ること!
…でした
な~んだ そんなこと? と思われるかも
知れませんが …
でも当時の僕にしてみれば 大事でした
だから僕は 小学校に登校した後 自宅に帰るまで
自分のゴミは どこにも捨てずに 全て自宅に
持ち帰りました
僕が学校から戻ると母は『さぁゴミを出して!』
と 言ってきます
それで僕は ズボンと上着のポケットの中が
分かる様に 裏地まで引っ張り出して その日
1日分のゴミをテーブルの上に置きます
母は ゴミが並んだことを確認すると
『はい 手を洗って おやつよ~』
と言うのでした
ところが 僕が小学校3年生のある日
事件が起きたのです!
小学校は 自宅から徒歩20分の所に
ありましたが 田舎の道路ですから 舗装など
されてないジャリ道で その両側には雑草が
生い茂っていました
その日も 学校から戻ると あのゴミ確認が
始まりました
実は … 僕は とてもドキドキ していました
理由ですか? いたって簡単ですよ
その日は 家を出てから 帰宅するまで
ゴミらしいゴミが 何も無かったからです
誓って言いますが その日は
何もゴミが出ない日だったのです
そして 最悪な瞬間がやってきました
母はこう言い切ったのです!!
『1日 学校にいて ゴミが一つも
出ないことなど ある筈がない!
学校に引き返して 自分の ゴミを
すぐに拾ってらっしゃい!』
きっと日中 また何か気に障ることが
あったに違いありませんが … でも母は
こうなると もう止まりません
僕は仕方なく 自分が捨ててもいない
ゴミを 拾いに行くことにしたのです
そうだ … こうなったら もう 証拠を
捏造するしかない!
黒いサタンが 私の背後に忍び寄り
背中に貼りついて 耳元で囁きました
《 何でもいいから 落ちてるゴミを
拾って それでお茶を濁すんだよ! 》
残された道は それのみです!
僕は ジャリ道を トボトボと歩いて
学校に着きました
田舎の学校ですから 校庭の周囲に
フェンスなどは無いので 自由に
出入りが出来ましたが…
しかし 校庭にはゴミらしき物は
何も落ちていません!
教室にはカギが掛けられていたので
中に入ることさえ 出来ません
困りました …
どうしたら良いのでしょうか?
もしこのまま 手ぶらで帰ろうものなら
タダじゃ済まないでしょう
何かで叱られる時 わが家で一番恐ろしい
懲罰は…真っ暗な押入れに 灯り無しで
2時間も閉じ込められる『押入れの刑』です!
想像しただけでも 身の毛がよだつ あの刑
だけは「まっぴら ごめん」です
何としても回避しなければ…
途方に暮れて 帰り道を歩いていると
道路わきの草むらの中に 何か 丸い
『茶色っぽい紙クズ』を見つけました!
やった!!
それを拾って 直ぐにズボンのポケットに
突っ込みました
一つだけしか無いけど … まぁいいか!
…
僕は 走って自宅に帰り着くと …
拾った紙クズを ズボンのポケットから
取り出して 母に差し出しながら
『捨てたゴミを見つけたから
拾って来た!』
と … ウソをついたのです
すると母は その紙クズを両手で広げると
しばらく眺めていましたが
何も言いません …
訳が分からず 母が広げた紙クズを
恐る恐る覗き込んでみると それは
『SHINSEI(しんせい)』という名前の
茶色い煙草 の柔らかな外箱でした
僕とは 全く関係ないゴミなのは
明らかです!
だめだ … バレた!
これで「押入れの刑」は確定だ!
… と思ったとたんに
母は こう言ったのです
『自分のゴミをよく拾って来たわね!
明日からは 捨てちゃダメよ … 』
そう小さな声で言うと 母は
ポロポロ涙をこぼしながら
泣き始めました …
僕は 気丈でいつも元気な母が
泣いてる姿なんか見たのは
この時が 初めてだったので…
なんだか 悲しくなって
母と一緒に泣きました
それ以来 僕は 路上に ゴミを
ポイ捨てすることが 絶対に出来なく
なってしまいました!
だから ゴミを捨てない分だけ
僕の「身」は「美」しいです!
でも ゴミ以外については …
それなりです!