お金に追われるか、お金を追うか
零細企業においての資金繰りは死活問題。改善の糸口はお金の流れの把握と、利益につながる行動にある、という話
毎月の資金の流れを確認するタイミングがある。経営者のよっては月商ならぬ日商、つまり毎日の売上げから利益の計算をせよ、という方までいる。
私の場合、月に何度か確認をするタイミングがあるが、仕入先や取引業者への支払い、いわゆる買掛金を入金するタイミングがそれにあたる。
数年前までは資金繰りが厳しい状態で、会社の口座はいつも乏しかったために、支払いの期日までにどうするか、という意味で毎日口座を確認しては天を仰いでいた。
綱渡りにもほどがあるくらいにいつもお金がなく、何度となく資金がショートしかけては自分の少ない預金から補填したものだ。
経営者1年目の年はそういった事情もあって資金繰りに関する本を読み漁り、できることは即座に実行するものの、次の日から劇的に改善するわけもなく、本で得た知識を疑った時期もあった。
しかしながら、そうした小さな改善が数年の時間を経て、改善していくのだが、私なりに効果が認められたいくつかの策がある。
あらかじめ書いておくが、決して一発逆転やV字回復といったドラマティックな展開には繋がらない、地味ではあるが確実性の高い、数年の時間軸で改善を促すものであるゆえ、大当たりを期待したい人はここから先は読み進めても時間の無駄になるので注意願いたい。
まず、私がとった行動は主要な仕入先にダメ元で支払いサイトの変更、または伸ばしてもらえるように交渉するということ。
資金繰り改善の鉄則である「支払いは遅く、回収は早く」という鉄則にのっとって実行してみたのだが、快く承諾してくれた仕入先もあれば丁重にお断りされた仕入先もあった。
断られることは想定内であったが、言うだけタダという精神で交渉してみたが数社ある仕入先の一つでも支払いサイトを伸ばすことができれば、それがボディーブローのように効いて、後々の資金繰りはラクになっていくのだ。
私の場合、その後も事あるごとに交渉し、今ではすべての仕入先の支払いを伸ばすことに成功している。
次に行ったのは回収を早くということで、法人に比べてすぐに支払いをしてくれる個人客へのアプローチ。単価こそ少ないが、それでもすぐにお金になる仕事をいただける個人客をある程度開拓することで大幅な改善とはならないが、その月の資金繰りには貢献してくれるのである。
しかしながら、注意が必要なのは業種業態にもよるが簡単に売れるものの割合を増やし過ぎると薄利多売の利益の出にくいループに組み込まれてしまうので、そこはメインの売上げの柱にはならないよう気を付けたい。
そして最後は高単価の市場に切り込む、ということ。自社の資源(人、モノ、金)を考慮して最大限利益がとれる市場を開拓する。従来通りの商品(サービス・製品)でも、市場を変えるだけで高く売れる市場は探してみるといがいとある。
自社の資源だけでは、ということであれば提携する業者や仕入先などの力を借りたっていい。できるだけ資金をかけずに自前のもので知恵を絞り、価値の再定義をしてやることで新しい市場では利益の高い価値となることは往々にしてあるのだ。
ここでいくつもの方策を披露したところで実行できるものはかぎられていると思う。まずは足元からということで資金繰表や帳簿を眺め、お金の流れを再確認することから始めてみてもいいだろう。
そんな記事を書かせていただいたのは、毎月の支払いを終えると、資金繰りが厳しかった時期のことを思い出し、今月も無事に支払えてよかったという安堵と感慨に耽ることが恒例になったからかもしれない。
現状を改善するのなら、地道で確実な方法しか存在しない