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リピート率を重視しなければ経営はラクにはならない

集客を考える際、単発で購入いただける顧客を増やすよりも、再現性のあるリピート客の獲得を目指す、という話

ここ数年、集客として広告などの営業活動は一切行っていない。しかしながら年々取引先が増えているのは、数年前に事業展開を考えた際に繰り返し発注いただける層にアプローチをするという施策を実行したゆえの、いわば複利で微増しているという現状なのである。

経営を引き継いで間もなくの頃、とにかく売り上げを増やさなければという一心で、少ない資金から様々広告を打ち、手当たり次第に顧客の獲得を狙っていた時期がある。

問い合わせこそ増えたものの、単発で小額の仕事が多く、忙しい時間を過ごすわりに一向に儲けが増えないことを悩んでいた。

高額な広告費が上回り、赤字になってしまう月も少なくなく、何のために集客しているのかわからないほどで、その時期辺りから、しっかりとターゲットを絞り、単発で終わる客層ではなく、繰り返し発注をいただける層はどこかという問いをまわしながらアプローチを試行錯誤したのである。

この再現性のある顧客層、つまりリピート客へのアプローチにシフトする前はごくまれに単発で高額な案件を受注することもあったのだが、そんな案件も単発では、その月の売上げを一瞬潤わせてくれるだけで、次の月にはまたヒリヒリした綱渡りのような安定しない経営に逆戻りするのである。

その当時から渇望していたのは大きな売上げではなく、そこそこでもいい安定した売上げで少しでも枕を高くして眠るような経営であった。

そのためには再現性のあるカテゴリーに注力し、それをどこに売り込むことによって安定的に発注していただけるかということを考え、実現しなければならなかった。

業種業態にもよるだろうが、再現性を持つ商品(製品やサービス)は考えれば必ずあるかと思う。その中でも利益率の高いものをリピートしてもらうのが理想だが、そもそも対象にしている顧客層が繰り返し購入してくれる可能性が高い層かを見極めることも重要になってくるかと思う。

以前、私のいる業界で飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばす会社があったのだが、流行の後押しもあって一時は毎年倍々ゲームで売上げを伸ばすことに成功し、業界ではちょっとした有名な会社として多くの同業者が影響を受けることになった。

あとに続けと同業他社が同じカテゴリーの商品に群がり、業界の大きなトレンドとしてメーカーや仕入先まで全面的なバックアップをするような有り様に一時は大騒ぎだったのだ。

弊社にもその波は当然来ていたのだが、メーカーや仕入先の話を適当にかわし、逆張り的にその他の市場を開拓することに躍起なっていたのである。

私の天邪鬼な性格もあるのだが、当時、顧客の再現性について深掘りしていたこともあり、その業界が群がっている商品に再現性が乏しいことになんとなく気が付いていたのだ。

第一次の波である程度売りつくしたあとの次の手や、再度その商品を購入する理由がどうしても見つからなかったことと、大勢が群がったことで価格破壊が起こり、差別化を価格を落とすことでしか実現できないレッドオーシャンがすでに起き始めていたことで、その波に乗ることを拒否したのである。

一時は潤沢な資金を投じ、業界全体で大きなイベントを開催しては顧客の認知をうながしたり、囲い込みを実施していたが、どうしても腑に落ちない私は遠くから傍観することで単なる一過性のバブルのようなものなのではないかと感じていた。

数年後、再現性の乏しさから商圏のエリアを拡大することでしか新規顧客を獲得することがむずかしくなり、離脱する会社が増え、飛ぶ鳥を落とす勢いであった会社はエリアを拡大することで時間と労力のコストがかさみ、売り上げと利益が著しく下がってしまったと風の噂で耳にしたのである。

こうしたことからも言えるように、対象顧客が繰り返し購入することを想定しなければ、一向に経営はラクにはならない。

欲しいのは大きな売上げや一過性のバブルではないはずだ。安定的に獲得できる売上げを実現することが本質的に経営をラクにしてくれる。

この年末に差し掛かった今、来年の動向を考える零細企業も多いかと思う。一瞬の苦しさを忘れさせてくれるような売上げに手を出すのではなく、着実に、そして少しずつではあるが会社を好転させてくれる売上げを実現するにはどうすべきか考える時間をとってみてはいかがだろうか。

再現性のない売上げは本質的な安定を遠のかせてしまう



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