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信頼は小手先のテクニックでは増していかない
商売において、その人(会社)に任せられる仕事のキャパは器によって決まる。その器とは、という話
とある案件の事例として提出する工事写真を探していた。
いくつかの写真をデータから候補として挙げたうちに数年前の発注はなされなかったが、今回の内容に酷似した不良箇所の写真を見つけて、当時調査に行った際の出来事を思い出していた。
あるお問い合わせに際して、一度現地を見てほしいとのことで時間をつくった。中堅ゼネコンからの依頼で、直接取引はなかったが、名前は耳にしていた。
当日現地に出向き、簡単な挨拶を済ませると問題の箇所に案内された。内容自体はさほどむずかしいわけではなく、ただ箇所数が多いだけに工事金額も膨れ上がるだろう、という感想をもった。
そして案内してくれた担当の方、名刺交換の際に気がついたのだが、中堅ゼネコンの方ではない。おそらく委託され様々な業務を任されている立場なのだろう。
話す内容は横文字が多めで「社長(私のこと)はクレバーだから話がスムーズですね」という少しお調子者ともとれるキャラクターにこの先の不安も感じてしまったが、その予感を裏付けるように、帰り際通された仮設事務所で担当の方がの人間性がうかがい知れたのである。
まずはパソコンの画面を見せ、自分がどのくらい大変な仕事をしているかを説明し、その責任の大きさや業務内容に対応できるだけの自分のスペックの高さを誇らしげに話してくれた。
と、そのとき、仮説事務所の扉が開き、一人の作業員が入ってきたところ態度が豹変し、頭ごなしに叱りつけたのである。委縮する作業員を気にも留めず、私に見せつけるかのような振る舞いにドン引きしたのを憶えている。
ひと昔前の建設業界など、この様な上下関係やパワハラに始まるハラスメントは日常茶飯事であったが、そもそもできた人間であれば、注意などは人のいないところで感情的にならずにするのがいいと思うのだが、このパターンでは自己満足の上に、存在意義を知らしめるためのパフォーマンスであることが多い。
物事をうまく進めるというよりは、自分がなぜこの立場で仕事を任されているか、という足場を誇示するのが使命であり、アイデンティティーであるのだ。
結局その仕事自体は流れてしまったが、依頼をされたところで正直断ろうと思っていたくらいである。実質的にその担当者が請け負っていたのは、中堅ゼネコンからあぶれた雑務であり、そうした面倒なことを押し付けられたに過ぎない。
それを後ろ盾のネームバリューとして行使しては、自分より立場の弱い人間をイジメているという、なんとも情けない仕事なのだ。そんな人間性だからそれ以上の仕事を任されるにいたらない、ということで仕事の幅はその人の器以上には広がらないことを体現してしまっている。
表面上の小手先で「できる風」を装ったところで、まわりの人間の信頼は増してはいかないのである。
どうも昔の写真の整理ではいちいち手が止まってしまう。回想も結構だが、ひとネタnoteに投稿したら業務に戻るとしよう。
自身の役割りを客観的に捉えよう。立場や肩書はその人の具体的な仕事を表さない