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欲しかった球を全力で打ち返す
自社が最大限価値を提供できる市場を定め、粛々とチャンスをうかがう。転がり込んできた絶好の仕事は全力で取り組む、という話
業種業態、会社の規模にもよるが、弊社のような小さい会社において、単発の案件で100万円を超える仕事はひとつの目安となる。
野球で言えばヒット級の当たりとでも表現しようか、今でこそそのような案件を毎月数回コンスタントに受注できているが、私が経営を引き継いだ当時は年に1度から2度あるかないかという頻度であった。
その他の数万から数十万単位の案件をこなしながら事業を営んでいたが、どんなに数を稼いでも月の売上げが足りなかったのである。
数万円の案件であろうが時間と労力はある程度必要になるため、体ばかりが忙しく、その上まったく儲からない。案件の利益は出ているものの月の固定費を賄うには少なすぎる利益にいつも100万越えの案件を渇望していた。
そして数ヵ月に一度、それもかなりまぐれの要素が強い案件が飛び込んできたときの高揚感は今でも忘れられない。
単発の100万越え案件ではその月の資金繰りが少しラクになる程度ではあったが、それでもやはり万年凡打で出塁すらおぼつかない状況であっては、数ヶ月に一度とはいえヒットを飛ばす喜びは感慨もひとしおであった。
何度このヒット級の100万越え案件を毎月打てたら、もっと言うなら毎月何本も打てたらという想いを馳せただろうか。しかしそんな想いはその後の「どうしたら狙ってヒット打つことができるか?」という問いに変わるのである。
毎月定期的にヒットを放ち、ツーベースヒットやそして去年はホームランを数本放った現在から考えると答えは明確である。
自社が最大限の価値を提供できる市場を定め、試合にスタメン出場をすること、つまりその市場で優位に選ばれる立場に立つことが前提であり、その試合でバッターボックスに入り、結果はどうあれ真剣勝負を挑むことが条件である。
市場の選び方も重要で、基準はあくまでも自社が価値を生み勝てる市場、すなわち強豪校でスタメン争いをするのではなく、自社の身の丈にあったスタメン起用確実な市場を選ばなくてはならない。
同じ努力をするにしても強豪校のスター選手とスタメンを争うより、弱小校で圧倒的な成果を出すことの方が、ビジネスにおいては重要になるのだ。
そしてその市場でヒットを打つ感覚を養い、確実に打率を上げていくことが経営の安定につながるのだ。
私が当時心掛けていたことも、100万越えの案件がたとえまぐれで転がり込んできたとしても、その案件で期待以上の成果を出すことに集中した。
そして取り組みながら100万越えの仕事の構造やどこがニーズであり、期待されているポイントか、ということを深掘りして次の100万越えに備え、準備を継続したのである。
成果が出ればそれが呼び水となり、次の100万越えにつながる。その好転までは一定の時間を必要とするが、そんな地道な取り組みでしか本質的な成果は得られないのだと思う。
まずは自社の売上げを分析して理想と思える案件を割り出そう。その案件がどのようにしたら発注できるか、という問いから始めるのが長い道のりの第一歩である。
なぜその仕事を依頼されたのか、その洞察が次へのヒントになる