見出し画像

夏になると無性にNICO Touches the Wallsを聴きたくなる、という話。

はじめに

こんにちは、がくよむライターのねもです。今回は記事ではなく、音楽エッセイを書いてみました。

突然ですがみなさん、「夏になると無性に聴きたくなるバンド」って、ありませんか?

僕にはあります。

僕は夏になると無性にNICO Touches the Walls(通称:NICO)の曲を聴きたくなります。なんだか蒸し暑くなってきたな、と思ったら、NICOのアルバムを聴き始めています。スカっとしたい夏の夜は、だいたい自然とギターを手に取ってNICOの曲を歌っています。

NICO Touches the Wallsの音楽のない夏なんて、僕には考えられません。それぐらい、僕にとっては大切なバンドなんです。

そんなNICOですが、2019年の秋に突如活動終了を宣言し、それ以来表舞台には一切登場しなくなってしまいました。あまりにもあっけない幕引きでした。正直、いまだにちょっと信じられないぐらいです。

でもね、NICOは本当に良いバンドだったんですよ。あっけなく活動終了してしまったバンドだけれど、いや、だからこそ、忘れたくないバンドなんです。世間から忘れ去られてほしくないバンドなんです。

この記事では、そんな忘れ去られてほしくないバンド、NICO Touches the Wallsの話をします。


NICO Touches the Wallsとは


2004年に千葉県の高校の軽音部OBメンバーを中心として結成されたロックバンド、NICO Touches the Walls。特徴的なバンド名の由来は「壁に触れるという行為は壁の向こうにある世界、日常から新しい世界を創造するというイメージにつながる」というボーカル・ギターの光村龍哉(みっちゃん)のアイデアだそうです。

彼らの音楽の魅力は、みっちゃんの棘のある一度聴いたら耳から離れないボーカルと、それを支える骨太ロックサウンド。カントリーやオールドロックにルーツを持ちながらも絶妙にポップなメロディラインを兼ね備えた彼らの楽曲は、往年のロックファンからもJ-Popやアニメソングの愛好家たちからも高く評価されてきました。

僕は中学生の頃からいわゆる邦ロック(日本人の若者のロックバンド)を聴き漁ってきたのですが、数多くの邦ロック曲の中でもNICOはずば抜けて”気持ちのいい曲”が多かった印象があります。

みっちゃんの声とあのまっすぐでぶっといバンドの音のシナジーは圧倒的で、ソングライティングのセンスも素晴らしい。NICOの曲を聴くことは、聴いているだけで純粋な元気が自然と身体の中から湧き上がってくるような、そういう音楽体験だったなぁと思います。

2004年に楽曲『ホログラム』がアニメ『鋼の錬金術師』の主題歌にタイアップされて以来、『NARUTO』や『ハイキュー!』、『アルスラーン戦記』といったアニメの主題歌を多く担当してきました。そのため”アニソンバンド”としてNICOを認識している方も多くいらっしゃるかもしれませんね。


NICOはアニメの登場人物が持つ爆発的なエネルギーや感情の叫びを音楽に変換するのがめちゃくちゃ上手いバンドでした。特に『ハイキュー!』のEDに起用された『天地ガエシ』は何度挫折しても一発逆転を目指して再挑戦する青春の日々を歌い上げた一曲で、”堕ちた強豪・飛べないカラス”と揶揄されてきたバレー部員たちが再起をかけて全国大会を目指す『ハイキュー!』の内容と強烈にシンクロし、聴く者すべての魂を揺さぶる力を持っていると思います。


後にも先にも、こんなに凄いバンドはもう出てこないんじゃないかなぁ…

なぜ夏になるとNICOを聴きたくなるのか

どうしてなんでしょうね。なぜか、夏になるとNICOの曲を聴きたくなるんです。

やっぱりこの曲の影響が大きいような気がします。


2012年の楽曲、『夏の大三角形』。

個人的にはこの曲を超えるサマーチューンって今後はもう出てこないんじゃないかと思うぐらいに、圧倒的な”夏”感。やたらめったらにテンションを上げる下品なサマーチューンはゴロゴロと転がっていますが、この曲のように夏への期待と不安と、なぜか感じる一抹の寂しさと言葉にし難いアンニュイな気持ちと…そういったものを完璧に調和させた曲は『夏の大三角形』以外に聴いたことがありません

僕がはじめてこの曲を聴いたのは清涼飲料水のCMだったかな。この曲と出会う前からNARUTOでNICOの曲とは出会っていたはずですが、NICOの存在を強く意識したのはこの曲が初めてだったように記憶しています。

初めて聴いたときに、『夏の大三角形』は僕が夏という季節に対して抱いていた複雑な感情を完璧に表現してくれているような気がしたんです。その時の衝撃が今も僕の頭の中に残っていて、夏が来る度にそれが呼び覚まされるのだろうと思います。

NICOの曲は、『夏の大三角形』以外にも夏という季節との親和性が高い曲が多いような気がします。例えばこの曲、


『バイシクル』という曲です。QUEEN然り、ジュディマリ然り、いわゆる「自転車ソング」に名曲が多いということは音楽ファンにとっては当然のことかもしれませんが、『バイシクル』もご多分に漏れず。NICOの『バイシクル』は夏の炎天下を自転車で飛ばしながら歌いたくなっちゃうんですよね。

真夏の溶けそうな灼熱の部屋の中で聴く『THE BUNGY』も良い。

真夏のスコールが降っている時に聴く『ニワカ雨ニモ負ケズ』なんてもうピッタリ。

高2の7月の修学旅行のバスでずっと聴いていたのが、この『ローハイド』。バスの窓外に映る夏の北海道の広大な大地を眺めながら聴くNICOの曲は最高でしたね。

そう、夏に聴くNICOの曲はとにかく最高なんですよ。

NICOの活動終了から2年経って思うこと

NICOが活動終了を宣言したのは、僕が大学1年の時でした。講義中にTwitterを開いたら「NICOが突然活動をやめるらしい」というニュースが飛び交っていました。新アルバムをリリースしたばかりで、何の前触れもなく……。ネットに活動終了宣言を流すだけでラストライブも記者会見も無し。あまりにもあっけない幕引きでした。

その半年後ぐらいから世の中はコロナ禍に入ってしまって、音楽の流行りとかそういうものが一回リセットされてしまいました。みんなそれぞれ大変な状況になって、よほどのファンでもない限り、あっけなく活動を終了したNICOのことを忘れてしまうのではないか?と僕は危惧しています。特にアニメタイアップの印象が強いバンドだから、なおさら。

でも、このエッセイで何度も言及しているようにNICOの音楽は唯一無二のもので、これから先何十年も聴き続けていく価値のあるものだと僕は思うんです。僕はNICOのことを忘れたくないし、NICOの音楽は忘れ去られてはいけないと思います。

もしよかったら、みなさんもこの夏は、NICOを聴いてみてください。そしてもしよかったら、来年も、再来年も、夏にNICOを聴きましょう。彼らが鳴らした、「壁の向こう側」の音楽を、夏が来るたびに”再生”しましょう


今年の夏も、僕はNICO Touches the Wallsを聴きます。



この記事が参加している募集

よろしければサポートお願いします🙇‍♂️いただいたお金は記事化など、みなさんの目に見えるかたちで大切に使わせていただきます!