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美術館学芸員がつかうメモ帳の話[けっきょく沼]
突然ですが、メモは大事です。
私は仕事中、人と話をしながら、または1人で考えながら、グリグリとメモをとります。いや、メモというより殴り書きに近くて、コピー用紙の裏紙やその辺にあった紙にとりあえず何でも書き出します。
会議や打ち合わせの時には、さすがにコピー用紙だと体裁が悪いので、殴り書きメモ用のノートを持って行きます。いま気に入って使ってるのは、無印良品の「スリムノート(B6変形サイズ)」です。
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何故せっせとメモをとるのかというと、自分の脳みそをたいして信用していないからです。つまり、思いついたこと、話をしたことを記憶しておける自信がないからでもあり、また記憶することに脳みそのエネルギーをあまり使いたくないからでもあります。いわば省エネです。
殴り書きのメモに記憶の役目を代わってもらい、頭の中はフラットな状態にして、記憶ではなく思考する方にエネルギーを回します。優秀な人は記憶も思考も全部まとめて頭の中でできるのかもしれませんが、残念ながら私はそうではないので、メモに頼ります。
さて、そんな考えなので、仕事以外でもメモ帳はよく使います。
学芸員という仕事柄、プライベートでもちょくちょく美術館の展覧会を見に行くのですが、今日はその時に使うメモ帳の話をしましょう。私、結構あれこれ使ってきました。まぁ、文房具話が好きな方だけおつき合いください。
まず大前提として、展覧会を鑑賞する時もメモは重要です。
きれいな絵をみて「あー眼福、眼福」で満足するのも良いのですが、美術鑑賞の醍醐味は、作品とじっくり向き合うことで、自分の中の価値観だったり常識だったり固定観念だったり、そんなものが破壊されるとまでは言いませんが、少しぐらついたり、ゆらいだりするところにあると私は思います。それは現代アートであれ、古美術であれ。
展覧会を「見る前の自分」と「見た後の自分」は、同じではないのです。
そんな体験を後押ししてくれるのが、鑑賞メモです。