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masnote
メモの魔力(美術館にて)
数年前のベストセラーの表題を利用するという姑息なタイトル付け(笑)。しかも自分は読んでいないという。
私は『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』(産業編集センター)でも、メモを取りながら鑑賞することをおすすめしたのですが、その時は「一歩進んだ鑑賞体験をするためにはメモを取るのもいいですよ」という具合に説明をしました。つまり中上級者向けの鑑賞方法と自分でも位置づけていたのです。
でも今は考えが変わり、初心者でも、いや初心者だからこそメモを取りながら鑑賞してほしいと思っています。
まず1つ注意してほしいのですが、メモを取ると言っても作品の横にあるキャプションの解説文をがんばって書き写すことではありません。
このnoteを読んでくれているような人は「そんなことしないよ」と思うかもしれませんが、学校の課題で美術館に来た中高生はだいたいこのメモの取り方ですし、大人でも少なくありません。それはもうせっせと一字一句を書き写しているのです。
やはり美術館は学習をするところという意識が強いのでしょうか。しかしこれは私が伝えたいメモ術とは違います。
そもそもキャプションやパネルに書いてある内容は、展覧会図録にほとんど掲載されています。図録を買うつもりはないから展示室で書き写す、というのは別に良いのですが、これ相当大変ですよ。
前にも疲れない美術鑑賞の方法を書きましたが、このメモの取り方だと必ず途中で力尽きます。何よりも大変なだけで楽しくないですよね。美術館から足が遠のくのも無理の無い話です。
私が考えるに、美術鑑賞の楽しさ、面白さとは、他の誰とも違う自分なりの発見、気づきを得ることです。メモはそのためにこそ使うべきなのです。