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2023共通テスト【生物】 謎の魚Tとは?

 2023年の大学入試共通テストが終了。注目の生物の問題は色々な意味で渦中だが、少々違った視点で触れてみる。

注目したのはアユではなく魚T

 昨年仕掛けられたアユのルアーフィッシングの影響か。そんな訳ないのか。わりと直球のアユの縄張りに関する問題に久しぶりに出会った。教科書にもよく出てくるかなり知られたテーマだが、入試ではなかなかお目にかからない印象だった。

 しかし、注目したのはアユではない。問題文中に登場する「湖底の藻類を食べるアフリカの魚で、水深と個体群密度によって縄張りの大きさが変化する」という魚Tである。Google検索しても簡単には見つからない。
 そんな訳で、Instagramにこんな投稿を。

 共通テストにアユの問題が出た。
 講評も書き終わったし、記念にアユカラーのルアーと撮影。ところで、問題に登場したアフリカの縄張りを作る藻類食の魚Tって、多分タンガニーカ湖あたりのシクリッド類だけど、どんな魚か気になる。
Instagram :  gaku_1977

コメント着弾

 程なくして(多分生物部OBのK君から)コメントが着弾。
「シクリッドは多分、2014の生態学会で発表されいたものですね。おぼろげに記憶があります。」

この魚は雑食性シクリッドのナイルティラピア
※ティラピア といえば頭文字”T”だが本文とは関係なし

 学会の筋があったかと、生態学会の要旨検索ベースを調査すると…「藻食性シクリッド」関連の発表が複数ヒット。
「きたぁ!!」
 ところが、流れでCiNiiを使って論文タイトルに検索かけるも、僅かに逸れて当たらない。見つかる論文は藻類を養殖するシクリッドや藻類の食いわけ、鱗食性シクリッドの左右性や攻撃性ばかりだった。

淡水魚の論文が面白い

 にしても、気づけばそれらの論文が面白くて魚類Tの正体探しは意識の外へ。典型的な「ミイラ取りがミイラになる」パターンに突入。挙句には魚類学会のデータベースまで手を伸ばして夜更かし。これはいかんですな。

 純粋に日本の淡水魚系に関する面白そうな論文も発見したので、そのうち何かの形で紹介したい。

謎の解決は先延ばし

 未だに「湖底の藻類を食べるアフリカの魚で、水深と個体群密度によって縄張りの大きさが変化する魚T」の正体は謎のままになっている。
 ちなみに問題文中では(多分)高校生くらいのヒカルとユウがこの魚の論文を見つけてきた設定となっている。
 おい、ヒカルとユウ。
 君達はどこから論文を見つけてきたよ?

追記:2023年共通テスト【生物】に思うこと

 色々な意見はありますが、受験生の未来を潰すような出題は止めて欲しい。
 問題内容に出題する側の理想や描く未来には共感できる。しかし、ほとんどの受験生が18歳〜19歳である共通テストだ。その辺の事情をもう少し考えて欲しい。大学入試問題に何年も精通している者や生物学に精通している者が楽しみながらのんびりと解くものではない。受験生は限られた時間の中で「選抜される立場」として問題に向き合う。
 受験生にとって一年に一回きりの共通テストである。繰り返すが、受験生は試験によって選抜される側の立場にある。だからどのような試験問題でも、全てを飲み込まざるを得ない。
 だからこそ、出題者側にも自分達の出題が若者達の未来を左右する事を理解して欲しい。これが、毎日若者達と関わり、生物学の意義と面白さを伝えるために創意工夫している現場の意見である。

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