学校の学校⑻ 「楽しいことだけして生きていける」には注意しよう。
こんばんは。
なんでも、シンプルに言いすぎてはいけないと思います。「楽しいことだけやって生きていける」とかいうと、それはシンプル過ぎると思います。坂口恭平先生は、それに近いことを言うかもしれませんけれど、そんなにシンプルに言わないですね。先生がシンプルに言うことは、すごく具体的でわかりやすい行動か、あるいはシンプルだけど深い言葉です。最近の著作だってそうです。『自分の薬を作る』、シンプルだけど、深くて多義的。『苦しいときは電話して』、具体的でわかりやすい。『お金の学校』、シンプルだけど、深くて多義的。そのうえ、坂口先生は、「楽しいことだけして生きていける」というのを、自分で散々やって、試して、方法を教えて言っています。先生として言っている、ある種の責任もある。でも、それができない人が言っちゃあいけないと思うんですよね、「楽しいことだけして生きていける」。
シンプルなことばをシンプルなままに理解すると、世界の見え方は極端になります。「楽しいことだけをして生きていける」と、いろんなぐちゃぐちゃで複雑なものを無視して思っちゃったり、思い込んだりしたら、なんと言いますか、現実とのギャップって言うんですかね、それに苦しむというか、耐えきれないんじゃないかと思います。
あと。
何が「楽しい」のか、自分にとってどんなことが「楽しい」のかって、そんなに簡単にわからないのではないかと言うことです。これ、「やっているうちに楽しくなるよ」という上司とか教師がよく言いそうな悪魔のささやきではなくて、自分自身、「楽しいか楽しくないか」っていうのは、じ~~~~~~~~~~~~~~~~っくり自分の身体に問いかけて、聴いてみないとわかんない、そういうことじゃないかと思います。
あれ、これ楽しいのかな? 楽しかったのかな? 体、楽になっているかな、心、楽になっているかな?
例えば、Youtubeをずーっと見ること。楽しい感じがします、他のことをしなくていい、誰にも何にも云われない。Wi-Fi完備。低速にもならない。ずーっと見てていいよ。最初は楽しいですね、ずーっと見ています。見ていると、次はこの動画を見なよってYoutubeがお薦めしてくれます。それを見ます、その繰り返し。なんだかわからない広告も、5秒ぐらいのものを何回も見ました。は~、目が疲れた。でも寝よう。あれ、寝られない。眠っている感じがするのに、頭がずっと起きている感じがする。2時間たった、2時間が長かったという気はしないから、寝ていたんだと思うけど、あれ、なんかずっと起きてたような気がする。・・・朝起きて、朝日が気持ちよくない。寝たのに眠い。
これ、楽しいですかね? 体が楽になっていますか? 心が楽になっていますか?
Youtubeみたいなことだけじゃありません。「人と話すのはいやだなあ」って思ったりします。人と話したことによってぐったり疲れる。でも「人の話を聞いて、なんか心が明るくなった」「人に話を聞いてもらって、心が軽くなった」 これって、人と話すのが楽しいんですかね、楽しくないんですかね?
「楽しいことだけして生きていける」という話でした。そう聞いた時、あなたは「楽しいこと」としてどんなことを思い浮かべたでしょうか? Youtube? 漫画を読む? 猫をなでる? お酒を飲む? バイクに乗る? LINE電話? エッチなことをすること? 見ること? テレビを見る? 音楽を聴く? 買い物する? アイドルの握手会に行く? それって、本当に楽しい? 体が楽になる? 心が、楽になる? じぶんの身体に問いかけて、じ~っと、聞き耳立ててください。なんていうか、自分の身体がなんていうか、聴いてください。
「楽しいこと」を知るのにも、見つけるのにも、あるいは「自分にとって楽しいことを創り出す」のにも、結構時間が必要だし、時間が必要というかそもそも変わっていくと思います。坂口恭平先生が、言うこと為すこと説得力があるのは、やっぱり「0円ハウス」っていうスタートがあるからだと思いますし、「0円ハウス」っていうスタートがあるから、「生きていけるよ!」っていうメッセージに説得力がある。もはや「0円ハウス」を知らない人たちにだって、メッセージが伝わる。「0円ハウス」を楽しむことができる坂口先生ですから、いろんなことを楽しむ、楽しみを創り出す、自然に創り出すことができる、やりながら、これはやばいかもしんない、楽しいかもしんない、流れてるかもしんないって創り出していくわけですよね。畑もパステルも少し前はやっていなかったそうです。
だからね、何が言いたいかというと、「楽しいことだけして生きていける」っていうのは、まあほとんど欺瞞だと言うことです。うそです。だましです。何が楽しいかと言うことがわかる人だけが、それを聞き取る、体から聞き取ることができる人だけが、そしてそれを実行できちゃう人だけが楽しいことだけをして生きていけるんです。
ネガティブな言い方をしてしまいました。ポジティブに言えば、楽しいことは創り出せると言うことです。「楽しいことだけをして生きていける」と言われて、今思い浮かべた楽しいことだけをして一生生きていけると思うのは、それはたぶん間違いです。それは楽しくない、流れていない。楽しいことは創り出すことができるんです。「あ、Youtube見てるだけでいいの?」 違います。その先がある。Youtubeと関係があってもなくてもいいですけど、創り出すということがある。
そしておそらく、これは坂口先生の受け売りなわけですけど、「楽しいことだけして生きていける」というのはなんか受動的な響きがあって、すごくインプットが多そうな印象があります。しかし、インプットだけだと、ここが坂口先生の受け売りですが、こんな言い方じゃなかったかもしれないですが、自滅します。インプットだけだと自滅です。体や心がアウトプットしたがる、で、おそらく私は、このアウトプットということが楽しみだと思う、あるいはインプットとアウトプットが自然に流れる、畑にいるってたぶんそんな感じだと思うんですが、そういうことが楽しいことです。たぶん、もしかしたら、あなたは「楽しいことだけして生きていける」って言われて、「インプットし続ける自分」をイメージしませんでした? おそらくそれは難しいですよ。というか自滅します。
私のもう一人の先生で、恭平先生との共通点もあるとおもうのが、菊地成孔先生です(本当に大学の講義で習っていて、私の大学の成績表には菊地成孔ってちゃんと書いてある!)。菊地先生がラジオで言っていたことですが、読書が一定量を超えると自滅するって言うんですね。だから、そんな人にはダンスを伴った音楽がいいといって、SUN RAのSleeping Beautyをウツ傾向のリスナーに送ったんですけど、私は本当にそうだなと思いました。ここでいう読書は当然インプット、ダンスがアウトプットです。これ、菊地先生の「薬」ですよね、このあたりかなり恭平的というか、順序で行ったら恭平先生が成孔的なわけですけど、まあいいとして、そういうことです。
ですから、「楽しいことだけして生きていける」というイメージに、インプットとアウトプットが両方ありますか? 別に毎日両方しなくていいとは思いますけど、そういうイメージがないと、やっぱり自滅すると思います。
私は学校の学校の先生です。なんで今日こんな話をしているかというと、不登校の子へのメッセージとして「楽しいことだけして生きていけるよ」っていう、ちょっと違ったかもしれませんが、すいません、メッセージをしていることが、たまにあるようです。だからこんな話をしています。
今日は、学校が教えないことを教える、という意味での学校の学校です。学校はこんなこと、インプットとアウトプットのバランスとか、本当に楽しいかどうかを体に聞くとか、楽しみを創り出すということは教えません。
なんででしょうか? 残念ながら、先生たちがそんなことをしていないからです。自分の身体の声は、聴かないか、聴けないかどちらか、そうなってしまいます。インプットとアウトプットをバランスよくする時間もありません、仕事上必要なインプットとアウトプットはかなりしている人もいますが、焦りの中で行っています。いや、もう忙しすぎるんですよね。本当にそう思います。で、忙しくなると、性格が悪い人が性格が悪いこと、意地悪なことを隠せなくなります。ぎすぎすします。そんなところにいます。
「学校が楽しくない」、「なら行かなくていいよ」とは私は思いません。「学校に行くのがつらい」「お腹痛くなる」、これはもう「行かなくていいよ」です。でもね、これ難しんですが、「楽しくない」「なら行かなくていいよ」って言われて、楽しみを自分ですでに見つけている人や、あるいはこれからもう創り出す準備ができている人が、果たして今の日本にどれくらいいるでしょう? だからね、私は、「学校に行かなくていいよ」って言う前に、「学校を、(それぞれの)楽しみを創り出せる場にしよう」って思います、で、そうして「学校に行こうよ」少なくとも「別の学校に行ってみようよ」って言えるようにしたい。学校の全否定は簡単です。しかし、学校も変わるし、人も変わります。ですから、「楽しくないなら行かなくていいよ」とは思いません。「楽しくするためにできることはないでしょうか?」 私も、あなたも。先生も、生徒も。あるいは親も、地域も。
『ニーチェはこう考えた』っていう本を読んでいます。すげー面白いです。ワーグナーとショーペンハウアーに陶酔していたニーチェ、急に幻滅して、自分の自由な主体以外何もろくなものはないって言います。34歳ぐらいだそうです。今の私ぐらいの年齢です。ニーチェの絶望に興味があります。
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