幼児性の美しさと醜さ【『屋根裏のラジャー』ネタバレあり感想】
スタジオポノック最新作『屋根裏のラジャー』を観てきた。
知り合いのアニメーターさんが参加しているというミーハーな理由から鑑賞。とても良かった。
というわけで、映像のことや内容などあらゆるネタバレありの感想です。深い考察とかはマジでないです。
ヘッダー画像は公式サイトのキービジュアルより拝借しました。
まず絵が全部うめ〜〜〜〜〜!!!アニメーションのこと何もわからない素人だけど、水準がすげえ高いことはわかる。いつどこを見ても絵が上手くて安心感すらあった。特に力の入ったアクションがない、何でもないシーン(って言うのも相応しくない気がするが)であっても、画力の底が抜ける所がないというか。少なくとも素人目にはそう見えた。
目を奪われる派手な戦闘シーンってわけじゃなくても、何気ない所作が上手いアニメって嬉しくなるよな~。いわゆる「ぬるぬる動く」のともまた違う。歩きや走り、座り、その前後の感じ。そんなに特別じゃない動きが自然に見えると「アッ……うま……ほゎ」になる。で、屋根裏のラジャーは最初から最後までそうだった。
ほんで内容も良い……。その世界観ゆえに予告の時点では「子供向け」な印象もなくはなかったが、ちゃんと怖いシーンが怖くてシリアスで。その上であくまで正統派ファンタジーとして物語が作られていたので、最終的には気持ちよく劇場を出ることができた。マジで、大人にこそ観てほしい映画だった……色んな意味で。
【※以下、内容についてやや詳しく触れます】
ミスター・バンティングがさ~~~~~~~~~~~~~~~~。
マジで最悪で最高だった~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
いや、最高っつって別に好きなわけじゃない。全く好きじゃない。本当に嫌。こんな大人になりたくないで賞2023、ここに来て滑り込み1位。ただ、キャラクターとしてよくできてるな~~~という意味でちょっと食らってしまった。
大人になってからも、他者のイマジナリを取り込むことで己の想像力を長らえさせようとする最悪男。想像力ってそういうことじゃねえだろ!!!!!!!!!!!っていう、もうそれに尽きる。しかもイマジナリの取り込み方が「頭から食う」なのもダイレクトすぎて醜悪さが際立つ。本人曰くフレッシュな……要は「幼い想像力」に執着して、それを食い物にする大人。汚すぎる。
想像力にも色々あるだろう。なんなら別に大人だって持てるはずのものだろう。終盤、リジーが大人としての自我を保ちながらも「冷蔵庫」を思い出し、呼び起こすことができたように。その点あの男はほんとダメだ。ほんとダメだけど、いずれなる自分の姿を見せられている気持ちにもなる。自分だってああなる可能性はある。
「いつまでも幼児性に囚われている大人」「自立できない成人」は、フィクションにおいては……あくまでフィクションにおいては割と興味の対象にしている所なので、まあ刺さってしまったね。ああいう人物を、ちゃんと気持ち悪く(失礼)キャラデザできるのが偉いなと思う。同情の余地もないくらい「悪しきもの」として描写してくれて、そして最後には成仏させてくれて助かった。中身がああいう感じでナリがいいと、普通にそれも魅力的になっちゃうからな……例は出さんでおくけど……
そして黒髪の女の子ね……。
バンティングみたいな大人()が連れてるのがよりによってこういう子っていうのが本当に最悪でさ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!
元々は普通に、アマンダにとってのラジャーのような「よき友達」だったんだろうけど、バンティングがそっち側に囚われてしまったばっかりに……。この子も何十年もの間、成長も消滅も許されず留まり続けてしまったんだろうな。呪いじゃんそんなの……。
この子は名前ないんかなと思ったけど、もはや名前すら持たない亡霊みたいになっちゃってたら悲しすぎる……(が、正直萌える────)
この子が出てくるシーンは全部怖かった。というか、初登場のシーンが本当に怖すぎる。心臓ギュッッてなった。それ、ホラー映画とかの見せ方なんよ。でも今思うと、怖い……って思っちゃうのもこの子にとっては辛いことだよな……と……。怖くて悲しい存在な所が好きだよ……。成仏できてよかったね……。
個人的には主に悪役(という括りでいいのか?)のキャラクターデザインの方が刺さったな。でもそれとは別でジンザンが好き。
てかみんな好きだろジンザンは!!!!!!!!オッドアイの老いた猫がめちゃくちゃ渋い低音ボイスで喋るんだぞ!!!!!!!!!!!
ていうかさ……バンティングの想像の世界の中でエミリがやられちゃって、イマジナリの街に戻った時に全員の記憶からエミリが消えてしまったけど、その時ジンザンは「またバンティングに誰かやられたのか」みたいなことを言ってるんだよね。「また」って言っていた記憶がある。ジンザンは頻繁に現実世界との橋渡しをしてる分、バンティングのことも知っていて、今回みたいなことも初めてではないのかなって……イマジナリが想像の世界で死んでしまって、そのイマジナリがいたという記憶ごとなくなってしまうというのを何度も経験してるのかなって思うと……切なくなっちゃったな……。ジンザン、好きだ……
とにかく今思い出せる限りで言いたいのはそんな感じ。とにかく黒髪の少女がね……怖くて悲しくて……そしてバンティングが最悪すぎて……最高だった……。コイツ敵側の話しかしてなくない!?ごめん……。
アマンダとラジャー側にも重厚なドラマがあって良かったんです。本当に。その辺もちゃんと噛み締めたいよ~!そして知り合いのアニメーターさんの名前をもっかいスタッフロールで見て勝手に後方観客面したいよ~!
ということで必ずまた行きます。みんなも『屋根裏のラジャー』、ぜひ観に行ってくれよな!!!!!!!!!!