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「保護者面談あるある」から見た、家庭内教育の難しさ①~「認知バイアスの衝突」問題

「ジャマおじ」とは?

「ジャマおじ」という言葉をご存じでしょうか?

日本で企業のトップと組織運営について話をすると、決まってある年齢層の社員について話題になるんだ。定年までの残り少ない会社生活を平穏にやり過ごしたいと思っている50代の社員たち。彼らの考えや行動には昔の成功体験が染み付いていて、ドラスティックな時代の変化や新しいビジネスのやり方に抵抗する。僕は彼らを「ジャマおじ」と名付けた。ジャマなおじさん、とね。「窓際」は一部の無能な社員に向けられる表現だけど、「ジャマおじ」はもっと普通の、どこにでもいる50代のビジネスパーソンだ。

上記リンクのパトリック・ニューウェル氏により命名された言葉です。
「日本企業あるある」なのでしょうし、私自身も以前所属した企業で見てきたようにも感じます。

なぜビジネスの話を、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、先の引用で太字にした部分を再度引用します。

彼らの考えや行動には昔の成功体験が染み付いていて、ドラスティックな時代の変化や新しいビジネスのやり方に抵抗する

これ、「ビジネス」を「教育」に置き換えてもそのままハマってしまうのではないでしょうか?

そして、今日は家庭教育のお話です。
※「ジャマおじ」問題、本当は今回の本筋ではないのですが、別で扱いたいので今回は小出しにしました。

なかなかうまくいかない家庭教育

塾講師として、10年以上ご家庭とのやり取りをしてきました。
そこで、上記「ジャマおじ」的なうまくいかなさを感じることがよくありました。

どのご家庭も、当然「良かれ」です。必死に、お子さんに「良かれ」と思って様々なことをされている。試行錯誤もしている。
ただ、それが「親が子ども時代の物差し」や、「親の個人的な体験」などが基準となっていて、目の前の子どもの現実と嚙み合わない

これは私たちが子どもの頃にもあったように思います。世代が違うのですから、「異なる時代の物差し」問題は普遍的に発生しそうです。
ただ、「働き方改革は生き方改革」と言われたり、コロナによって様々な変化が起こっている昨今、この「『ジャマおじ』的物差しギャップ」は増大していると考えられます。

すなわち、家庭での子どもへの教育の在り方は難しさを増しているのではないでしょうか?
実は、この「物差し」問題は、世代間ギャップだけでなく「認知バイアス」という概念を組み込むとさらに多岐に渡ってしまいます。

今日は、この「認知バイアス」という視点から、家庭教育のアップデートを考えてみます。個人的に、これは面白いし非常に参考になる気がしています。

認知「バイアス」とは?

認知バイアスの定義は、

「物事の判断が、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象を認知バイアスといいます」

です。また、下記リンクによると

「現在の人類が持つ一般的な心理傾向は、我々の先祖が石器時代の環境に適応した結果得られたものと考えられている」

とあります。すなわち、我々の先祖が過酷な環境に適応すべく身に付けた認知の適応様式が、環境が激変した現在「認知バイアス」と名付けられ、ともすれば問題視されているという状況です。そして、先祖が身に付けた思考様式なので、私たち全員に受け継がれているということです。

次に、ご家庭で認知バイアスによって引き起こされる「あるある」と、対処法を考えていきたいと思います。

家庭内の認知バイアス問題①「私がこうだったから、子どもも」バイアス(親子間の衝突)

これ、めちゃくちゃ多いですよね。しかもパターンも様々。私が思い出した「保護者面談あるある」は以下です。これらがどんなバイアスに当てはまるのかを考えます。
※便宜的にいくつかバイアスをご紹介して当てはめますが、考えれば考えるほど複雑に様々なバイアスが絡んでいるようにも感じます。そして、各ケース毎にどのようなバイアスかが異なる可能性が高いです。
従って以下は、正確性を期すのではなく認知バイアスについて知っていただき、皆さまにも考えていただくことが目的です。

「私が私立出身ですごく良かったから、子どもも私立に入れたい」
「私は努力肌。コツコツ着実にやらないとダメだったし、子どもも毎日努力しないと…」
「私はピアノやってて良かった。だから子どもにも〇歳からピアノを…」

と、「自分の成功→子どもにも同じ道を」パターン。
「内集団バイアス」=「内集団バイアス」とは、同じ集団に所属する人に対していい評価をしたり、いい印象を受けやすい傾向があることです。この場合だと、「私が行った〇〇中学」「努力肌/天才肌という区分」「習い事の中のピアノ派」という形の内集団に対して高評価を与えていると考えられます。

「サンクコストバイアス」=「何かに手を出したり買ったり関係ができた時に、お金や時間を既に使ってしまい回収不可能なため後には引けなくなり、合理的な判断が難しくなる」ケースもあり得ます。この場合は、これまで努力してきた時間や努力は回収不能です。だからこそ、自身の選択を正当化してしまうとも考えられます。

そして、上記とは一見真逆の「私は私立で失敗した。だから子どもは公立に」などの「自分の失敗→子どもには違う道を」も結構聞きます。
「アンカリングバイアス」「最初に印象に残ったモノ・コトや数字が、その後の判断に影響を及ぼす」と考えられます。自身が先に体験したマイナスのイメージが、その後の判断にずっと影響しているからです。


そして、両者を強化していくのが、「確証バイアス」です。

「自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識的に集めてしまい、反証する情報を無視したり集めようとしなかったりする傾向のことをいいます。最初に思い込みがあると、多様な情報があっても、最初の考えを支持するような情報ばかりが目に付いてしまう

これは、各種の様々なバイアスにとって都合の良い情報を集めて勝手にそのバイアス強化するという意味では最も「タチが悪い」。
また、「最強のバイアス」とも言えます。
これは、どんなバイアスも強化されかねないことを示しています。

これまで見てきたのは、保護者のバイアスの中身です。これが子どもの想いや生きている社会や集団の現実とそぐわない可能性があります。それが子どもを苦しめるケースをよく見てきました。

そして、当然子どもにも彼ら自身のバイアスが同じように存在します。子どもたちも当然確証バイアスで自身に都合の良い情報だけを集めてバイアスを強化したりします。
たとえば対人関係が苦手な子どもが「学歴を得られれば、年収は高くなる」と思い込んで勉強にのめり込むのも立派にバイアスです。人脈を作る力も、経済的成功において重要な要素だということはよく知られています。

ややこしくなってきましたが、親子間のバイアスの衝突もありますよねということです。

家庭内の認知バイアス問題②大人間での衝突

次に、保護者面談であるあるなのが「大人間の認知バイアス同士の衝突」です。
例えば、祖父母との衝突。自分の親だとしても、世代が違ったり個々人の体験によるアンカリングバイアスなどの中身は当然違います。また、それが配偶者側の祖父母ならよりバイアスの中身は変わりやすい(世代や育った環境や所得層、ましてや国際結婚などになると違いは千差万別でしょう)。


「私は子どもを無理に今からゴリゴリ習い事増やしたり中学受験させたりって必要はないと思うんです。ただ祖父母が『今のうちからさせないと』と言うので…」

こういう話、超あるあるでした(「ウチもだなぁ」って方も多いかと)。

むろん、夫婦といっても元々は育ちが全く違うことも多い。ですから「夫婦間のバイアス間の衝突あるいは不一致」問題が日常的には一番多いようにも感じます。

・いつから習い事?そして何をさせる?
・これは過保護?あるいは放置?
・進路について(私立/公立、留学する/しないなど)
・塾いつから?あるいは行かせる/行かせない?
・親が勉強を手伝う/手伝わない?
・子どもが失敗しそうなときに手を貸す/貸さない?

など、様々な判断でのバイアス間の衝突は日常茶飯事で起こり得ます。

そして、それがバイアスである以上、確証バイアスで日々強化されちゃったりします。もともとバイアスは「認知の偏り」ですから、バイアスを超えて同じ見解に至るのはそんなに簡単ではなかったりします。
実際お子さんへの教育方針を巡っての不一致が関係性の問題となるケースも耳にします。

保護者面談では、信頼いただけるほどこういったご相談が増えていったように感じます。

まとめ&次回予告

今回は、「大人の良かれ」が間違ってしまうかもしれないという問題を、認知バイアスという観点から見てみました。
字数の関係で事例をあまり出しませんでしたが、教育・子育てにおいても色んなバイアス問題が日常的に転がっていると考えられます。

そして、全員がバイアスからは逃れられません
ですから、GAJYUMARUとしてはそれを否定せず、存在は肯定した上での対処法を考えていきたいです。


・バイアスは進化の過程で備わったので、全員に備わっていて逃れることは難しい
・特に教育・子育ては親子間、夫婦間、祖父母と夫婦/子ども間など様々なバイアスの衝突が起こりやすい
・確証バイアスまでを踏まえると、一致を見るのはそんなに簡単なことではない

これらを今日の中間結論として、明日は「じゃあ、どうしたらよい?」について考えてみたいと思います。どうぞお楽しみに!
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