安い牛丼は安モノではない
今日昼メシで某Y野家という牛丼チェーンに行ったんですわ。まあみんなはたぶん知らないお店だと思うんだけど。
そしたらね、「親子丼」というずいぶん攻めた新メニューが登場してて、うまそうだったんで頼んでみたの。
そしたらこれがかなりヒットだったわけよ。単品400円くらいでコスパも良い。
最近高くなったなーと感じて正直なところムカついてたんだけど、Y野家さん見直した。なかなかやるじゃん、と。
なんでこんな話をしたのかというと、僕が大学生の頃の一幕を思い出したからだ。
当時僕はすし屋(現在も紆余曲折を経て同じ店で働いている)でバイトしてて、その店は近所では評判のいい店だったの。もちろん今も評判いいんだけど。
リーズナブルなんだけど、やっぱりお寿司を出す店だから、基本的に客層がいい。
で、その当時常連さんだったお客さんと僕の就職についての話になった。
僕はその時、某Sき家というあまり知られていない牛丼チェーンの内定をもらってたわけだ。
で、細かいことは覚えていないが、お客さんはさぞお高いお店をたくさんご存知だったのだろう、こんな感じの発言をした。
「牛丼とかみたいな安モノが美味いと言ってるようじゃあダメだよ」
その時の僕は、特に疑いもなく確かにそうなのかな、と思った。
牛丼なんか安いし、質の低い素材でコストを抑えているんだろうから、しょうがないよね、と。
実際僕はその、某Sき家という会社に就職した。
そこはもう退職してしまったが、いろいろな経験をさせてもらった。
ためになったこと、ならなかったこと。
誇りに思えたこと、殺意を覚えたこと。
いずれにせよ人間としての深みを与えてくれたことは間違いない。
まあ飲食なんで手放しに”ホワイトです”ということはできない。
ブラック要素ももちろんあった。
が、一つ確実なことがある。
それは、安さの裏には多くの人間の多大な努力があるということだ。
大学生のあのとき聞いた、「安モノが美味いと言ってるようじゃあ・・・」という言葉。
これには中で働いたことがある人間なら全面的に反論する資格があると思っている。
牛丼は安モノか?
否。
粗悪な材料だから安いのか?
否!
牛丼はウマいぜ。
そしてあの安さは決して手抜きなどではない。
逆だ。
手を抜いてないから安いのだ。
極限までムダを省き研究し尽くされたオペレーション、戦略的かつ合理的な店舗デザイン、レイアウト、これらが組み合わさってコストを抑えている。
つまり、あの安さはとても高級なのだ。手の込んだ安さなのだ。
僕は今日、かつて僕がいた業界の象徴的存在であるY野家で親子丼を食した。
「安モノが美味いと言うようじゃあ・・・」と偉そうなおっさんは言ったけど、安い親子丼はウマかったよ。
少なくとも、あの1杯のウラにどれだけの努力と情熱があったかを想像できる僕は、おっさんよりも美味しく感じられるに違いない。
お店大変だけどがんばってね。ごちそうさま
(大盛りにすると高いからそのへんどうにかして)