記録しておきたい記憶vol.05_04
右腕も完治し、仕上げはいよいよ最終段階。
僕を交えた連携の練習もしたし、みんなの気持ちも一つになって、あとは大会当日を待つばかり、という一週間前、また悲劇は起きたんです。
今度は膝が・・・
右腕が完治し、あと一週間で大会という日に左膝を虫に刺されました。
体内の毒素が強い、っていうんですかね。
右腕のときのように今度は左膝が腫れてきたんですよ。
しかも膝が曲がらないぐらいに。
こんな大事な時期に・・・。
今度はすぐ病院に行って治療。またその間は筋トレです。
昔から皮膚が弱くて、蚊に刺されると必ず水ぶくれになり、幼い頃は頭皮を掻きすぎて枕が血で真っ赤になってたらしく、このやるせない怒りを親にぶつけたことがありました。
兄弟3人いて僕だけがこんな体質なんです。
すると母親も父親(たまたま帰国していた)も共に「俺(私)のせいだ」とお互いに自分を責める始末。子供ながらに「言ってはいけない一言だったなぁ」と反省しました。
試合当日
今回はすぐ病院行ったのもあって試合当日には何とか膝は動くようになってました。腫れてはいましたけどね。
ハンドボールはジャンプしてシュートを打つことが多いのですが、右腕が利き腕だった場合、ジャンプする軸足は左足。
つまり僕は利き腕の肘と軸足の膝を怪我したという、なんとも運の悪い怪我をしたんですよね。
試合会場に到着し、ユニフォームに着替え、軽くアップをします。
控え室でユニフォームに着替えてる間、仲間からある話を聞きました。
それは今回怪我で出られなくなったキャプテンの話。
キャプテンの想い
キャプテンには「キャプテンマーク」というバンドが渡されていて、それを持つことはある種ステイタスでもあるわけです。
その「キャプテンマーク」をキャプテンが返した、という話でした。
大会前にキャプテンは先生のもとへいき、
「大事な大会前に自分の不注意からメンバー全員に迷惑をかけてしまい、僕は試合にも練習にも参加できなくなってしまった。キャプテンとしては失格です。だからこれは僕が持つことは出来ません。」と。
これ聞いて、みんな燃えました。
「アイツのためにもやるぞ」と。
みんなキャプテン責める気持ちなんて全くなかったんですよ。
なのに、一人で責任感じやがって(泣)
アップを済ませ、先生のもとに集まり、今日の作戦会議です。
「ええか、ムツ(僕の呼び名)は相手がロングシュートを打ってきたら前に飛び出してとにかくジャンプしろ。とにかくそれだけ。あとは他のやつらに任せろ」
指示はそれだけ。
さすが、先生。今更あーだこーだ指示出しても僕が動けないのをよく分かってらっしゃる。
それだけなら僕でも出来るし分かりやすい。要はロングシュートのコースを潰してしまえばいいわけだ。僕がブロックしてこぼれ玉を拾ってカウンター、これが基本戦略でした。
円陣を組み、キャプテンが声をかけます。
「みんな、ごめん。俺が怪我したせいで迷惑かけちゃって。外から精一杯声だしして指示出すよ。みんなならぜってー勝てるから、いくぞーっ!!」
「オーッ!!」
さっき控え室で聞いた話のあとですからね、更に火が点きました。