壊れてゆくリア王 イアンマッケラン
賢者から呆けた老人へ
ナショナルシアターライブのリア王を見てきた。
リア王は、あの、イアンマッケラン。
2019年の公開ラインナップだったが、今回、劇場を絞って再上映したもの。
いやぁ、見てよかった。
今回のリア王は、年老いた王が、過酷な状況においこまれ、老い故の感情の暴走や痴呆から、人格崩壊してゆくさまがリアルに描かれていた。
NTライブの動画(↓)を見ると、リア王のセリフを語るイアンマッケランは冒頭は賢者ガンダルフのようだが、最後は老いて呆けたリア王へと変わっていくのが良くわかる。さすが、すごい役者。
人物がたっている、3姉妹、エドマンド
リア王の脇を彩る役者たちもすばらしい。
3姉妹、とくに次女リーガンがよかった。
長女ゴネリルは冷たく・高圧的でイメージどおり。
次女リーガンは頭も体もネジが1つ緩んでいるような造形で、猟奇的で残虐であればあるほど欲情する人物として演じられ、彼女と対比することで長女ゴネリルの”冷たい女”ぶりが際立ったように思う。
エドマンドは魅力的で厚みのある人物として映った。
野心家、計算高い、恨みをもつ、復讐のために動く男。
エドマンドの人物像はこんなところかと思うが、今回のエドマンドは、私生児として貶められることへの恨みや復讐はあるが、その感情に身をゆだねるではなく、頭の回る野心家としての色合いが強く、好感が持てた。
死に際して長女・次女の死を知り「エドマンドは愛されていた」というところは子供のようにも見え、最後の善行へとつながるように見えた。
厚みの差、深みの差
今年、シェイクスピアを観るのは4回目。
東京芸術劇場での段田リア王、さいたま芸術劇場での柄澤ハムレット、
パルコ劇場での吉田羊ハムレットQ1、そして今回。
この違いをどう考えればいいかと思ったが、
つまるところ、やはり、餅は餅屋、本国にはかなわない、ということだと思った。
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