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組織を“新陳代謝”させる前に考えて欲しいこと

こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。

「人生を彩る居場所をつくる」を企業理念とし、
起業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。

今日は、パートさんやアルバイトさんが多く働く職場向けに“新陳代謝”をテーマに記事を書いていきます。

多くのアルバイトさんは通常3~4年で入れ替わっていて、それに合わせて採用や育成を行っていることと思います。

ただ、時々ランダムに行われるのが“新陳代謝”
職場のトップ、店長やマネージャーが代わった時に組織変革の一環として、スタッフの入れ替えを半ば強引に行うことを指します。
方法は様々ですが、一番多いのは新人を必要数以上にたくさん採用し、その分既存の(辞めさせたい)スタッフのシフトを大幅に減らす、または一切入れないというパターンです。

会社や組織は利益を出す為に存在する訳ですから、利益が出ない組織なら多少のテコ入れも致し方ない面もあります。
ですが、あまりにも軽々しく行うことに対してはいかがなものかと思うのです。

今日は“新陳代謝”を行う前に考えて欲しいこと、やってほしいことについて書いていきたいと思います。


“新陳代謝”の問題点

そもそも新陳代謝には以下の点で問題があります。

①法的視点

労働者を採用した場合、雇用契約に基づいて労働条件や労働時間を提供することが法的に求められます。
雇用主は、労働契約に従って労働者に仕事を提供しなければなりません。

スタッフの手元に契約書がある場合、
”休業手当”の申請を行える場合があります。

休業手当とは、労働基準法 第28条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
というものです。

このような観点からも、安易に新陳代謝を行うのはリスクがあります。

②「彼らも被害者である」という視点


もう一点、持っておいて頂きたい視点があります。
それは、「彼らも被害者ではないか?」という視点です。

確かに、利益を出さない(=お客様や取引先に迷惑をかける)メンバー・スタッフをそのままにするわけにはいきません。
が、彼らは本当に最初からそのスタンスで仕事をしていたのでしょうか。

飲食店の現場で800人以上の新人を育成していますが、そんな人は今までひとりもいませんでした。
いたとしたら、新人の段階で職場や組織になじめず退職しているはずです。

多くは、当時の上司(店長やマネジャー)に注意・指導されず、今日まで来てしまったスタッフたちです。
この職場はそれでいい・それが普通だと思ってしまっていますので、後から来た上司にあれこれ言われてもほとんど響かないでしょう。

そう思わせてくれる出来事が過去にありました。

とある店舗で組織の立て直しに関わった時のことです。
女子高生で、とにかく私語が多く、自分の持ち場もきちんと守らない、というスタッフがいました。

「手が空いてたらこれをやってね」
「ここの持ち場からは出来るだけ離れないでね」

と何度も言うのですが、「はーい(^^)/」と愛想よく返事をするだけで一向に改善が見られません。

やる気がないのかな?
それとも私が嫌われてるのかな?
色々考えましたが、お客様に対してはとっても愛想よく対応もしているし、休憩中に私に恋の相談もしてくる。
どうやらそういうわけでもなさそうです。

周囲に色々ヒアリングしてみると、その組織は長年人手不足で、新人さんをある程度教えるとあとはずっと放置されていたそうです。
だから彼女も自己流で仕事をこなしていたし、今になって(すでに入社3年目になっていました)あれこれ指導されても、
「え?何でこんなこと言ってるんだろう?」
「この人はちょっと厳しい人なんだなぁ~」

となってしまうのも無理ありません。
(ちなみに私は厳しくないです。マニュアルで決まったこと以外についてはほとんど言及しませんので、言ってしまえば当たり前のことを言っているだけです。)

つまり、最初にきちんと教えられていれば、勤務態度についても指導を受けていれば彼女はこうはならなかったはずです。
これはある意味、大人の・指導者の責任といっても過言ではないと思いませんか?

新陳代謝させる前にまずやるべきこと

とは言え、利益を出さない組織は変えていかなければなりません。
マネジメントする上でお客様や取引先に迷惑をかけてしまうようなスタッフがいたとき、新陳代謝させる前にやっていただきたいことがあります。

それはスタッフたちと面談をすることです。まずは彼ら一人ひとりと向き合ってほしいと思うのです。
面談で確認することは以下です。

今までどのように仕事をしてきたか・ルールをどの程度理解しているか

マニュアル通りに仕事を進めないスタッフなのであれば、
「実はこんな業務マニュアルがあるんだけど、見たことあるかな?」
と聞いてみる、
遅刻・当日欠勤・無断欠勤が多いスタッフに対しても同じように対応するため、スタッフマニュアル(行動指針)のようなものがあると良いでしょう。

私も何度かスタッフと面談をしたことがありますが、おおよそ「知らなかった」「聞いたことがなかった」という答えが返ってきます。
つまり、きちんと教えられていないということです。

当日欠勤などシフトに穴を空けるスタッフに対しても同じです。
実は、これに対する意識は店長・マネジャー・オーナーの中でも温度差が割とあります。
常連さんで成り立っている小さな飲食店に多いのですが、
休むなら、仕方ないね~分かった~。で終わりの店長・オーナーもいます(もちろん全員ではありません)。
LINEの1通で済んでいる場合もあります。

ですが、一人欠けると売り損じが発生しやすい広いお店や、細かく人件費コントロールをしている大型チェーン店などでは一人の欠勤が命取りなので、遅刻・欠勤にはシビアな店長・オーナーが多い印象です。
(もちろんそうじゃない人もいます)

同じ飲食店でもこれだけ意識が違うわけですから、スタッフも同じです。
「前のバイト先も飲食店だった」からといって、マネジャーと同じ意識で勤怠ルールを捉えているとは限りません。
また、前の店長が「いいよいいよ~」で済ませていた可能性もあります。

マニュアルや勤怠ルールをどのように捉えているのか、前の店長には何と言われたいたのか面談で確認することが必要になります。

あるべき姿や期待を伝え、承諾してくれるか確認する

「知らなかった」「初めて聞いた」という返事が返ってくることがほとんどだと思いますので、ここからは本来あるべき姿を伝えます。

「実は、このマニュアルに沿って業務を進めてもらうのが本来のルールなんだけど、できそうかな?」
「シフト変更は〇日前までに所定のシステムに入力してもらうことが必要なんだけど、出来そうかな?」

ここでのポイントは「ルールを守ってね」「この通りやってね」と言い切ることではなく
スタッフ自身に「出来ます」「やります」と答えさせるため、疑問形にすることです。

これは、前回フィードバックの記事でもお伝えした「コミットメントと一貫性の法則」という心理学にのっとったものになります。
自分が一度示した態度や発言に対して、その一貫性を保とうとする気持ちが働く、というものです。

私が時々参加するカウンセリングセミナーや研修でも、冒頭に講師から
「安心安全な場・そして守秘義務を守れる方は挙手願います」と言われることがあります。
自分で「やる」ことを決めさせるのです。

CDショップの事例

知人のコンサルタントがこんな事例を話してくれました。

とあるCDショップで深刻な売上の低迷が続いており、知人はそこの顧問をすることになったそうです。

店長にヒアリングをしていくと、人手不足になることを恐れてスタッフの勤怠不良・マニュアル違反や不正にかなり目をつぶっていて、大学生アルバイトに完全に主導権が渡っているような状況であることが分かりました。

店長とコンサルタントが何度も面談を重ね、ついに店長が
「この状況を絶対に変えたい」という話をしてくれました。
そこで店長は緊急ミーティングを開き、スタッフを全員集めてこのように伝えました。

「ここ数か月、開店以来最低の売上が続いています。これはトップである僕の指導力・マネジメントに問題がありました。本当に申し訳ない。。この状況を僕は何としてでも変えたいと思っています。だから、今まで色んなことをなぁなぁにしてきたと思うけど、これからは心を入れ替えて、皆さんのことを徹底的に指導していきます。今までとは別の店だと思われるかもしれません。それでも構わないという人だけ、ここに残って下さい」

このミーティングの場で半数のスタッフが出て行きましたが、
半数は残ってくれたそうです。
その残ったスタッフたちは店長の厳しい指導と人手不足に耐え、1年ほどかけて店舗カルチャーは回復。売上も徐々に戻っていき、その後はさらに伸びて最高売上を叩き出すまでに成長しました。

問題児はマネジメントの責任

この事例から言えることは、スタッフとまずは向き合うことが大切だということです。

労働市場全体でこれから更に人手不足が加速します。
今までのように「また採用すれば良い」の組織運営では成り立たなくなりますし、そもそもその組織運営のあり方自体がどうなのかと私は思うのです。

繰り返しになりますが、きちんと教えてもらえなかったスタッフは“被害者”です。
指導することによって全員が心変わりするとは思いませんが、変わってくれるスタッフは必ずいます。

今いるスタッフ(=リソース)をいかに引き出すかという意識の変化が求められるのではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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