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はじめに④

こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。

もはやカテゴリが「自叙伝」になりそうな勢いですが、気にせず更新していきます。笑
さて、今回は私が労働組合の役員になってからのストーリーです。
初めてお越しいただいた方は第一回からご覧ください。

夢の舞台「ハラスメントセミナー」

役員の仕事として「セミナーの企画」が出来ることを聞き逃さなかった私は、会議が始まるなりすぐにハラスメントセミナーを提案した。
当時、全国から集められた契約社員の役員委員会は絵に描いたような女の世界で、調和も忖度も顔色を伺うことなく意見しまくった私は相当煙たがられたし、ちょっとした嫌がらせも受けたけど(それは書いたら相当長くなるから割愛w)、
委員長や地元の支部長(正社員役員)の支え、最後は人事課長の後押しもあって、提案から3年目にしてようやくハラスメントセミナーを開催することができた。

人事課長がパワーポイントを作ってくれて、まず私たちにセミナーをしてくれた。
それを私たちが自分たちの担当地域に持ち帰って、契約社員向けにセミナーをする、という流れだった。
言いたいことが山のようにあった私は、人事課長に
「このパワーポイント、ちょっと手を加えてもいいですか?」
と聞いたら二つ返事でOKしてくれた。

今、自分が講師になって思うのは
人が作った資料を勝手に手を加えるなんて失礼!と思っちゃったりしますが
それを快くOKして下さった人事課長の心の広さには感謝しかないです。
(後にこの課長によってカウンセリングの世界へ導かれることに)

毎日人間の域を超える現場仕事をこなしてから、ネットカフェに移動して何時間もセミナーの準備にあて、迎えた当日。

ノートパソコンも操作リモコンも持ってなかったけど、機材は地元の支部長たちが全部用意してくれて、私が話すのを皆さん丁寧にサポートしてくださった。
人前で話した経験なんてないので、もちろん我流だったけど。

ハラスメントは絶対に許されないものであること、
加害者だけでなく、見て見ぬふりをする周りも良くないこと、
少しでもおかしいな、と思ったら迷わず相談してほしいこと。

全て「自分の言葉」で伝えることができた。
契約社員は正社員と違って研修を受ける機会が組合活動以外ないので、このセミナーはとても反響があった。

「実は私の店でこんなことがあって...」
「これってパワハラかもしれない...」
その後、私の元にチラホラと相談が入るようになった。
嬉しかった。
これからもこういう活動を広げていきたいな。そんな時に委員長からまた声がかかった。

「土肥さん、弁論大会出てみない?」

運命の6分00秒

その弁論大会は組合の上部団体が主催しているもので、何十年と続く伝統的な大会なのだとか。
上部団体は産業別労働組合では日本最大の組織で、出場者も飲食だけでなく製造や小売業界など様々。全国から164名がエントリーした。
持ち時間は1人6分。
迷うことなく出場を決意。テーマはもちろんハラスメント。

弁論大会なら、自社を超えて多くの人に自分の話を聞いてもらえる。
とにかく私の話を聞いてほしい。いや、聞け。
その一心で原稿作りに取り掛かった。

高校最下位卒業・元アイドルの私はもちろん論文なんて作ったことない。
金もなければ時間もない。
私は寝る間を惜しんでネットで調べまわった。
有名なスピーチ大会の原稿を見つけてはその型を盗んだり、
Youtubeで色んなプレゼンテーションを見た。
毎朝通勤の車の中と、毎日仕事終わりに30分~1時間、カラオケボックスに入って練習した。

私にあったのは気持ちだけ。私の話を聞け。

まずは県大会。まさかの全国最多の14名の中から見事優勝!
各県の優勝者が集められる地方ブロック大会、強者揃いで最後までヒヤヒヤしたけど、何とか優勝!!

そして全国大会を間近に控えたある日。
私は悩んでいた。

今までの原稿はどちらかというと当たり障りのない内容で構成されていた。
「ハラスメントってこういうものですよ、良くないですよ」
みたいなことを延々と喋ってたと思う。
テーマがテーマなだけに、実体験を話すことは会社のイメージも損ねてしまうかもしれないという懸念があった。

でも。でも。
泣いても笑ってもこの全国大会が最後。本当に自分の伝えたいことを話したい。
委員長に思い切って相談すると返事はあっさり。
「自分の思いのたけを話せばいいいよ」

委員長の一言で、原稿の半分以上を書き換えた。
自分がずっと温めてきた数年分の思い。
後は当日に向けて今まで以上に練習に時間をかけた。
全員私の話を聞け。

全国大会は今までの大会で一番大きな会場で、弁士の応援や関係者などで100人くらいはいたと思う。
大会を勝ち抜いた7人の弁士たち。
順調に話していても途中で頭が真っ白になったのか、30秒以上無言になってしまう人や持ち時間をオーバーして強制終了になってしまう人もいた。

私ももちろん緊張していた。
でも、それよりも早く話を聞いてほしい気持ちが勝って、私は演台に立った。

健全な職場環境~ハラスメントを考える(当時の原稿です)

みなさん、仕事は楽しいですか?
私は株式会社〇〇に入社して、今年で10年になります。仕事は主に、店舗での接客や調理、食材の発注管理等を行っています。
毎日は目まぐるしく過ぎていきますが、私はとっても幸せです。
それは、お客様だけでなく共に働く仲間、店長からの「ありがとう」の言葉、
大変だけど一緒に頑張ろう、という働き甲斐のある雰囲気、
言うなれば健全な職場環境の中にいるからだと思います。
お客様を幸せにすることが仕事である私たちサービス業は、まず自分達が幸せであること、そして、共に働く仲間を思いやる気持ちが大切であると考えています。
自らの幸せなくして相手を幸せにすることはできないのです。

しかし、この10年がいつもそうだったというわけではありません、
今から5年前のことです。職場には罵倒とも言える叱責の声と大きな物音が響いていました。
笑顔は消え、去っていく仲間もいました。体調を崩してしまう先輩もいました。
このような不幸の原因になる問題、パワーハラスメント、私は、この現場に直面したのです。

私は別の店で働く同僚に相談しました。
「うーん、まぁそれは指導の範囲でしょ。社員教育ってそれなりにお金かかってるしさ、上司が熱くなるのも無理ないんじゃない?」
同僚からは思ってもみなかった言葉が返ってきました。

パワーハラスメントについて議論すると必ず問題になることとして、
「熱血指導とパワーハラスメントの違いはどこにあるのか」という疑問があります。
これは、これまでの指導や教育には「相手のためを思ってすることであり、ある程度は受忍すべきだ」という考えが根強くあるからです。

しかし本当にそれは相手の為でしょうか?
皆さん想像してみてください。もし自分の仲間が、同じような「指導」を受けていたら…
大切な家族が、暗い顔をして帰宅してきたら…
これを本当に「熱血指導」と言ってよいのでしょうか?
何も出来ぬまま時間だけが過ぎ、その間にも仲間は少しずつ、去っていきます。
その背中を見ながら私は一つ、大きな誓いを立てました。
「 いつか私は沢山の人達が集まる会場で、パワーハラスメントを知ってもらう場を作る!そして撲滅を訴える!」
職位も低く知識もない私には達成できる根拠はどこにもありませんでしたが、それでも数年間はパワーハラスメントに関する本を読み漁ることにしました。

そんなある日、私に組合役員の話がやってきます。
仕事内容は組合員の相談役やセミナーの企画運営といったものでした。
もしかしたら思いを実現出来るかもしれない、二つ返事で引き受けました。
セミナー企画の会議ではハラスメント研修を執行部に提案し、組合員集会でそれを実行しました。
自分の言葉でハラスメントの基本的知識をまずは伝え、そしてその研修の最後に、参加してくれた組合員に、強く訴えました。

「違っててもいい、どんな小さなことでもいい、これってパワーハラスメントじゃないかな?と思ったら、すぐに私のところに相談に来てほしい。どうかパワーハラスメントを見逃さないで下さい。」

この研修を終えてわかったことは、やはり同じ組合員の中でも「熱血指導」と「パワーハラスメント」の線引きが大きく違っていたことでした。
「あれってもしかしてパワーハラスメントかもしれない・・・」
「私のしていることはパワーハラスメントなのかもしれない・・・」
研修からしばらく経ったころ、私の元に相談が寄せられてくるようになりました。

今までは他人事だと思われていた問題が、一気に組合員一人ひとりの目の前の問題になり、またそれを受け入れ、自らの職場を振り返ってもらうことができたのです。
きっとそれこそがパワーハラスメント撲滅の第一歩ではないでしょうか?

そして私は今、この舞台に立っています。
5年前に実現させたかった思いをやっと、弁論大会という舞台で叶えることができました。
短い言葉ではありますが、今ここにいる皆さんに、私が今までずっと温めてきた思い、私からのお願いを聞いてください。

「どうかパワーハラスメントを見逃さないで下さい。目の前にいる仲間を大切にしてください。健全な職場環境とは、私たち一人一人が相手を思いやることで築き上げるものだから。」

私にとって今日はスタート地点に過ぎません。これからもパワーハラスメントの持つ恐ろしさを伝え、少しでも多くの職場の健全化に努めていきたいと思います。
ご清聴、ありがとうございました。

スピーチ時間、6分ジャスト。
全国優勝を勝ち取ることができた。


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