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027 SWOT分析の際、どうやって強みや弱みを判断したらよいのか

けっこうみんなやっているSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威分析)だけど、いざやってみると意外と苦労するんだよね。

どこで苦労するかって、 人によって強みか弱みか、はたまた機会なのか脅威なのか判断がバラバラになることだ。

例えば、次のようなやり取りをよく見かける。

強みか弱みか
社長:当社の強みは品質のわりに価格が安いことだな。
コンサル:それって品質に合った価格設定が出来ていないということでもありませんか?
社長:そうかあ…、だとしたら弱みなのかなあ。

機会か脅威か
社長:当社にとっての機会は商品Aの需要が増えていることかな。
コンサル:でも安価な商品が主流になっており客単価は下がっていますよね。消費者ニーズが変化しているのかもしれません。
社長:そうかあ…、だとしたら脅威なのかなあ。

どうして上記のようなことが起こるのか?

結論を先に言ってしまえば「基準」が不明確だからである。

当たり前だけど、何かを強い弱いと判断するには「これをクリアしたら強み」「ここに達していなければ弱み」といった基準が必要である。

多くのSWOT分析は基準を置かずにやっているから、人やその時の気分によって解釈が異なってしまうんだよね。


SWOT分析の「基準」

じゃあSWOT分析の基準は何にしたら良いのか?ってことだけど、これについてはおそらく市民権を得た学説もルールも存在していない。

つまり、各々がそれぞれの状況に応じて作るするしかないんだよね。

じゃあどうやって作るか。

その際、判断材料になるのが「何のためにSWOT分析をするか?」である。

「目的の明確化」が大事ってことだ。

おそらくこれについては、「経営戦略の策定」か「マーケティング戦略の策定」の2つしかないと思う。

考えられる基準は次のとおりだ。

経営戦略策定のためのSWOT基準
強み・弱み:知的資産(人的資産・構造資産・関係資産)
機会・脅威:すでに起こった未来

マーケティング戦略策定のためのSWOT基準
強み・弱み:競合との比較
機会・脅威:目の前の商機

知的資産とは何か?

上記に「知的資産」という言葉が入っているけど、これについて説明したい。

知的資産と言うと特許とか著作権などの「知的財産権」を思い浮かべる人がほとんどじゃないかな。

でも、知的財産権は知的資産の一部ではあるけど、わざわざ知的資産という言葉を使う場合は知的財産権は主役じゃないんだよね。

知識、ノウハウ、技術といった目に見えない強みのことを知的資産という言葉で表現する。

図にすると以下のとおりだ。

知的資産の図

経営戦略策定において、なぜ知的資産が大切なのか?

ではなぜ知的資産が戦略策定において重要なのだろうか。

それは知的資産を特定しなければ経営戦略が作れないからである。

自社の成長の源泉となる「人」や「仕組み」や「ネットワーク」を認識せずに、会社を成長させるための「効果的な手」は見つからない、ってことだ。

これら人・仕組み・ネットワークのことを「人的資産」「構造資産」「関係資産」と呼び、まとめて「知的資産」と呼ぶんだよね。

それぞれの特徴を説明すれば以下のとおりだ。

人的資産とは?
1.個人的な資質・知識・スキル・技術のこと。
2.従って、その知識やスキルの持ち主が辞めたら消えてしまう。
3.小規模企業の場合、社長の人的資産でもっている場合がほとんど。

構造資産とは?
1.会社の仕組みのこと。
2.基本的に人員が入れ替わっても失われない。
3.例えば、経営理念・ルール・マニュアル・知的財産権など。
4.大企業は構造資産でもっている場合がほとんど。

関係資産とは?
1.ネットワークや加盟団体などのこと。
2.SNSのフォロワー数など関係資産である。
3.例えば、Twitterフォロワー数が10万人もいれば、そこから仕事以来の可能性も高まるし、クラウドファンディングもやりやすくなるし、足りない知識やノウハウも手に入りやすくなる。
4.つまり関係資産によって経営資源(人・モノ・金・情報)が増強される。

SWOT分析では、結果(事象)よりそれを生み出している原因の方が重要

SWOT分析でよくあるのは事象を使ってしまうことだ。

例えば、次の例を考えてもらいたい。

社長「うちの会社の強みは品質のよい商品だ!」

これって果たして強みなんだろうか?

たぶんこの自称強みを生み出す原因があって、そっちが本当の強みだと思う。

例えば次のようなものが考えられる。

  • 人的資産なら「ある職人の技術力」「ある開発部員の発想力」

  • 構造資産なら「しっかりとしたマニュアルが整備されている」

  • 関係資産なら「公設試とのネットワーク」「技術力のある外注先」

SWOT分析では上記のように、事象を生み出す「原因」に着目する必要がある。

じゃないと本質的な分析ができなくなるんだよね。

それを理解してもらうために次の例を見てもらいたい。

表面的なSWOT分析した場合
(強み)品質の良い商品
(機会)テレワーク関連商品の需要増
(戦略)テレワーク市場に対して営業強化する

知的資産でSWOT分析をした場合
(強み)職人の技術力
(機会)テレワーク関連商品の需要増
(戦略)テレワーク市場に向けた新製品開発をする

分かるとおり、知的資産で考えた方が「今後何をすべきか」がより明確になる。

「源泉」が特定されることで「今後の展開」を読むことが可能になるってことだ。

これをせずに、ふんわりと「質の良い商品が強みだ~」とやってしまうと、「質が良いから売れるはず」→「テレワーク市場が拡大しそう」→「こりゃあチャンスだ」と短絡思考に陥ってしまう。

へたしたら「なのに売れないのは営業が悪い」→「営業強化だ!」のようにおかしな方向へ話が行き兼ねない。

だからSWOT分析の際、「この事象を生み出している根本原因は何だろう?」という問いをしっかりと立て、徹底した深堀が必要となる。

これがSWOT分析の肝である。

SWOT分析のポイント
1.SWOT分析の目的を明確にする(経営戦略レベル? マーケティングレベル?)
2.目的に合った基準を設定する(知的資産? 競合との比較?)
3.S・W・O・Tそれぞれの根本原因を徹底的に探る。

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