自分自身の声を取り戻すために――『82年生まれ、キム・ジヨン』『私たちにはことばが必要だ』書評
話題沸騰の書『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)・『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス)の書評を、週刊読書人2月22日号に執筆しました。
https://dokushojin.com/article.html?i=5061
緻密なエピソードが魅力のフェミニズム小説、かたや熱い文体で繰り出される啓蒙の書。どちらも韓国発の話題の書です。
ウェブで全文読めますので、ぜひご覧ください。
▶︎【全文公開】自分自身の〝声〟を取り戻すために 「おとなしく、するな!」 思いを言語化する訓練、 「相手にしなくてもいい」という切り札
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男性たちの不躾な発言に対し、ジヨンは口をつぐみ、やり過ごす場面が繰り返し描かれる。空気を読まずに抗議すれば、余計に攻撃されるかもしれない。また、「黙らされる」構造は、攻撃の形をとるとは限らない。家事を巡るダブルスタンダードが代表的なものだ。「家で遊んでいて」と馬鹿にされたかと思えば、「家族の生命を守る仕事」と持ち上げられる。「母親は感心だ、偉大だ」と称賛される度、ジヨンは苦しむ。〈そんなことを言われると、大変だってことさえ言っちゃいけないような気がするから〉。またしても彼女は「黙らされている」。そんな彼女の姿は、日本の女性たちが置かれている状況とぴったり重なってくる。
くじけそうになるジヨンに母は活を入れる。「ジヨンはおとなしく、するな! 元気出せ! 騒げ! 出歩け! わかった?」。その言葉に励まされ、癒されている自分がいた。強気な不良少女、付きまとう男から守ってくれる女性など、本書の女性たちの声は強く頼もしく、自分の人生には登場しなかった心強い応援団を得たような気持ちになったのだ。(一部抜粋)
▶︎全文はこちらで公開中
【ひとりごと】
この2冊を読んでから(特に『私たちには言葉が必要だ』の影響で)、誰かに謝ったり、許してほしいとお願いすることに、てきめんに敏感になった。
相手の機嫌に流されて、簡単に「私も悪かった」と折れる前に、
「本当に悪いのは自分の方なのか? 相手もこちらへ歩み寄れるのでは?」「なのに、何も変える様子が無いのは、そもそも相手に対話する気がないのでは?」と立ち止まる勇気が湧きました。
読んでいる最中は、胸が痛んだり、感情を揺さぶられたりもしましたが、心の底から出会えてよかったと思える2冊です。
ーー書籍情報ーーー
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